半落ち

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書いてしまったので（今更かよ？と思われるでしょうが）
対照作品として、「半落ち」も・・・。

　１３階段が、すばらしい出来の原作をぶちこわしてしまった
（言い過ぎかしら？あの映画が好きな人、ごめんなさい）のに
比べて、この映画は横山秀夫の原作の味を殺さずに（もちろん
時間の制限等あって、原作に忠実とは言えませんが）良い
作品に仕上がっています。

　妻がアルツハイマーになってしまったら自分ならどうする
だろう？当然殺してしまって良いわけはないのだが、そんな
状態で生かされている苦しみもわかります。
　そして、自分の息子を白血病で失っている梶が、骨髄バンク
にドナー登録したことによって、一人の命を救い、年齢制限の
５０歳のうちにもう一人救うことができたらと考え、自死を
思いとどまります。その心の根底には通常の殺人者（殺人者
って言うことが通常じゃ無いか）のそれとは違う物があること
を感じたいです。
　人は誰しも一人では生きていけないし、愛する人、守りたい人
がいるということに僥倖を感じ、自己の存在価値を認められる
のかもしれません。
　

　ところでこの作品が直木賞候補に挙がった際に、選考委員の
林真理子から「ミステリーーとして重大な欠陥があり、成立
しない」と講評するという事件（？）がありました。
　受刑者は骨髄ドナーとして、骨髄を提供できないというのが
その論拠なのですが、それがそんなに重大なことなの
でしょうか？自らの骨髄を提供することによって、もう一人
の命を助けることができるのならと考えた梶の心情は、決して
無駄なことではないと思われますし、選考委員の北方謙三が
選考委員会前に日本骨髄バンクに確認したところ
「受刑者は骨髄提供できない」という回答をもらったが、
「ノンフィクションでは無いので特に問題ない」と結論付けた
ことから、林真理子が大騒ぎしていたようです。
　実際には、刑事訴訟法で受刑者が刑務所の外に出るために
刑の執行の一時停止を求める事由として認められるかどうか
なのですが、判例として、殺人で無期懲役の判決を受けた
受刑者が、
「少しでも償いとしたい」と骨髄バンクのドナー登録のために
刑の執行停止を求めたことに対し、認められなかった例が
あるだけです。梶の場合、ドナー登録はしてあるので、
適合者が有った場合に、刑の執行を停止して、刑務所外で
骨髄提供ができるかどうかなので、前例が有りません。
　日本骨髄バンクでは、「そういったケースで、適合者である
ことが判明し、それが一人しかいなければ、（適合率は数万人
に一人）法務省に申請することは考えられる」という見解を
示しています。可能性はゼロではないのです。
　そして、梶は５１歳になったら自殺するつもりで居るのです
から、藤林判事は「誰にも裁くことはできない」と実刑判決を
下すのです。これは、人の生き死には誰にも決定できる物では
ないという（殺してくれと頼まれても）メッセージとして
梶本人の生死にも係ってくることでしょう。
　ミステリーとして成立しないというのは、言いがかりと
いうものです。
　そもそも、どうして直木賞の選考委員に林真理子ごときが
入っているかもわかりませんし、その後の彼女の傲岸不遜な
意見も腹立たしい限りでした。
「だから、最近の直木賞作品はつまらないんだよ！」と憤慨
した当時を思い出してしまいました。

　蛇足で興奮してしまいましたが、なかなか味わい深い作品で、
映画も小説もお薦めしたいと思います。
　

原作よりも映画の方がじんわり来ました。
この映画に関しては、原作読んでから観るということが、私にとっては正解だったような気がします。
（だいたいの場合、原作を読んでからその作品の映画を観ると、がっかりするもんです。）
原作の方はミステリー小説として、かなり評価されたものでした。
確かに、1つの事件を軸にしながら、章ごとに警官、検事、弁護士、記者…と主人公が変わる書き方は斬新だと思ったし（しかも章を追うごとに時間も経過している）、
最後までノンストップで読んでしまいました。
でも、梶聡一郎の“空白の2日間”に関する黙秘の理由が分かったときも、「へ？　それだけの理由なの？」と思ってしまった（失礼なことかもしれませんが、私の正直な感想です）。
もう少し衝撃的なオチがあるのかと思ったのに、いまいちその理由がそこまで黙秘を貫き通すことであるのだろうか…と疑問に思ってしまったのです。
白血病と骨髄移植が、私にとって身近に感じられなかったからだと思います。
で、映画を観ても、原作を読んだ時の私同様、その黙秘の“理由”がいまいち飲み込めないというレビュアーの方もいらっしゃるようで、「そうですよね…」と思ってしまいました。

ただ、その原作でのがっかり感があっただけに、この映画も期待せずに観たのが功を奏したような気がします。
聡一郎のキャラには、ぴったりの寺尾アキラ。原作で「澄んだ瞳をした容疑者」と描かれているのですが、まさに寺尾さんの瞳は透き通っているようで、
このキャラを演じるのは彼しかいないだろう…と公開当時から思ってました。まさにハマり役！
あと、私は今まで苦手だった柴田恭平がかなりイイ味出してました。
樹木希林に関しては何も言うことありません。
とにかく、最後の方ではじんわり感動しちゃいました。泣けました。
“生きる”ということの難しさ、“生きる”とは何か…、そんなことをちらりと考えたりもしました。
良い映画とは言えないかもしれないですけれど、原作を知った上で観ると感慨深かったです。
原作では少々落胆させられましたが、映画で名誉挽回された感じ。意外でした。

ハンカチでは、足りません。タオルの用意をして、見てください。
完璧に泣かせの映画です。思い切り泣きたい方、ぜひご覧下さい。
白血病で息子を亡くし、アルツハイマー症の妻を、自らの手に掛ける警察官。日本人の心を揺さぶる泣きの要素が、超満載の作品。
その主人公の梶が自首するまでの、空白の２日間の謎を巡り、それぞれの人々の姿、思惑を描く、ミステリーでもあります。繰り返し何度も、あなたは誰のために生き、誰を守りたいのか？と、問いかけます。人それぞれでしょう。自分自身であり、また家族であり。
梶を演じる、寺尾聡が、すばらしい静の演技を見せます。後半、これでもかの、だめ押しの展開。素直に涙を流せる人は、感動の嵐。
正直、映画館に行かなくてよかった・・・気にせず泣けるから。　　最近、泣いてないな〜と、いうあなた、いかがですか？

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邦画の何が気に入らないって、どれもこれも口の中でもそもそ台詞をつぶやくだけでさっぱり聞き取れないところだ。プレイヤーのボリュームを最大にしてやっと聞き取れる程度（字幕も当然ない）、たまたま帰宅した家人が隣の部屋で喋りだしただけでもう何を言ってるかさっぱりだ。だが音楽だけはやけに大きくかかるのでエンディングの曲がかかった瞬間鼓膜破れるかと思った。

原作は、歯医者の待合室にあったものを少しずつだが一応最後まで読んだ。原作はいろいろな登場人物の視点、立場からつづり、結構面白いと思った。しかし結構忠実に映画化したのに、なぜかこの映画は面白くないのだった。多分、原作を読んだときにも感じたキャラへの共感できなさが、映像で再現することによってより鮮明になったからだと思うが。

役者の演技はさすがと思った。しかし登場人物は結局のところ、誰も彼も手前勝手な理屈で行動している。そこが鼻白んでしまう。それを感動とか全体の福祉とかもっともらしいもので包み込んでいるので胡散臭さまでつきまとってしまう。

吉岡秀隆演じる藤林判事の妻、あの若さで「あなた」と呼んだり、夫にですます調で話したりするところがうそ臭い。昭和初期ならともかく。
そして藤林判事、自分の父親が暴れているのを妻ひとりに抑えさせている。いくら苦渋に満ちた表情をしてみせたり、裁判で感情的になってもちっとも共感できない。まずは自分の手で親父を抑えてみろよ、話はそれからだ。（もちろん映画に出ない部分ではいくらでもやっているのだ。しかし画面に出ないからこそ、その苦渋がうそ臭いのだ。苦渋の表情をさせたら若手で右に出るものはいない吉岡の演技だからこそ、さらに嫌味っぽいのだ。）

↑これはひとつの例にすぎないが、全体的にこのようにうそ臭いくせに、役者は結構名優陣が揃い、熱演を見せているので、かえって違和感が増幅する。
「あなたは泣かなかったんですか？」と問われれば泣いた。樹木希林の法廷のシーンで。しかし、それは樹木の俳優としての技量にうまうまと釣られて泣いたのであって、樹木演じるキャラにも共感はできなかった。だから、泣きはしたが感動はしなかった。
そういう作品。

思い映画です。
妻を思うからこその犯行。
隠された秘密。
一つ一つが考えされられるテーマでした。

犯罪自体を見れば許される事ではないが、それと絡み合う真実、思いにはなんとも言えない思いが有り、罪を罰するだけでいいのだるか？と思えました。

皆さんも、一度ご覧になってみたらどうでしょうか？