希望の降る街

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　そしてある事件を通して、優秀なエリートの法学者が人間的に成長し、名実ともに最高裁判事になっていく過程が描かれている。コロンビア・ピクチャーズ制作のモノクロ映画で、ロチェスターという東部の旧弊な田舎町を舞台にしています。いかにもの大時代的な音楽が少々古めかしさを感じさせますが、広壮な建物が燃え上がる冒頭シーンはなかなかサスペンスフル。

　カバー写真に写っているほぼ３人による物語で、終盤になってアメリカの法の理想を説く大学教授マイケル・ライトキャップ役のロナルド・コールマンが、結局主役ではないのかと感じます。殺人と放火の嫌疑をかけられ、証拠もないまま死刑の判決を受けそうになり、脱走して知人のノラ・シェリー（ジーン・アーサー）の別荘に逃げ込むことになるレオポルド・ディルグ役のケーリー・グラントは、むしろ、厳格な法律論で凝り固まったライトキャップ教授に人間らしさを知らしめる、狂言回しのような役割ではないかと。

　ディルグが身をひそめるノラの別荘を、夏休みの間、ライトキャップ教授が執筆のためにたまたま借りていたことから、３人は出会います。教授はディルグが逃亡犯とは知らないまま彼と親しくなり、ノラはふたりの間に立って様々な苦労をしつつ、仲を取り持ち、それぞれの事情に配慮しながら献身的に尽くします。当然の成り行きで、ふたりは次第にノラに惹かれていく…、ここまでが前半。

　後半になると、教授にディルグの正体が発覚してしまい、紆余曲折ありながらも教授は、この冤罪事件に係わっていく。やがて思わぬ展開でディルグの無実が明らかになり、また、この事件から多くを学んだライトキャップ教授は晴れて最高裁判事に、そしてロマンスにも決着がつき、大団円を迎えます。ディルグの無実は明らかなのに、扇動された町の住人たちが彼の死刑を求めて裁判所になだれ込んで来るシーンでは、教授は次のように暴徒を説得します。
　
　「暴力は過ちで、法の原則にこだわることも同じように過ちだ。法を引用すれば正義がなされると思っているが、法は環境に応じて適切に実施されるべきだ。それを守るための日々の闘いなしでは法は存在しない。皆の闘いなのだ！」この文言は、前半のアカデミックで教条的な姿勢から教授が人間らしく変化したこと、法学者として成長したことを物語っている。同時に、法に対するアメリカの理想を語ってもいるだろう。コメディの体裁を取りながら、案外社会派的な映画なのではないかという気がする。ロマンス要素は無くてもよかったのではないだろうか。

てっきり50年代の作品なのかと思っていたら、1942年の作品。
80年以上も前の作品とは到底思えないほど、作風も近代的で、衣装もお洒落です。
最初から最後までとても引きこまれました。

放火と殺人の罪で死刑判決が下されそうなり
留置所から脱走したレオポルド・ディルグ（ケーリー・グラント）は
知り合いの女性ノラ・シェリー(ジーン・アーサー）の別荘へ逃げ込みます。
最初は追い返そうとするミス・シェリーですが
ティルグの冤罪を信じて匿うことにします。
そこへ別荘を借家に貸し出した時期最高裁判事候補であるライトキャップ教授が
予定より一日早く到着してしまったものだから、
ドタバタコントさながらの、すったもんだが展開されて
この辺りから、俄然楽しくなりました。
でも、ただのドタバタコメディではありません。
確固たる証拠もなしに、罪人にしようとする無知な民衆への怒りと
法への公正さを求める、というような意図を感じさせる脚本でした。
それはライトキャップ教授の言葉で語られることになります。
そして、三角関係を匂わすロマンス要素も組み込まれていて、とても楽しめました。
ラストはちょっと駆け足で事が進み、あれよあれよと解決に向かいましたが、
テンポがあって気持ち良く観ることが出来ました。

隠れた名作。
日本劇場未公開作品ですが、アカデミー賞に多くの部門でノミネートされた映画。
Ｒ･コールマン『心の旅路』、ケーリー・グラント、ジーン・アーサー『オペラ・ハット』『スミス都へ行く』という顔合わせだけでも楽しいのに、ジーン･アーサーをめぐる二人の男性の恋模様とサスペンス、ミステリーが絡み合って上質な作品に仕上がっています。
特にＲ･コールマンが素敵でした。

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最初の５分は流石！引き込まれるサスペンス仕立て。次からは喜劇の始まり。終わり明るくはしんみりと。