ランボー　最後の戦場

ランボーシリーズといえば戦争アクションエンターテイメント作品と誰もが想像するだろう。この僕もその一人なのだが、いやはや本当に甘かった。今までのシリーズのようにランボーという一人のヒーローの活躍にスカッとした気分になれるだろうと単純に期待していた自分自身に腹が立つ。その甘い気持ちが玉砕されたのはオープニング映像だった。あの映像は明らかに本物だ。映画用に作られた映像ではないと思う。本物の戦争や民族紛争による虐殺や死体の映像だと思う。何故なら僕は子供の頃、友達が事故死するのを目の前で見て以来、「生と死」というものに一時的に執着していた時期があり、図書館にあった太平洋戦争やベトナム戦争での従軍カメラマンが撮影した写真集を何度となく見ていたことがあり、この時見ていた写真に写った死体を思い起こさせるぐらいのものだったからだ。まだ本編に入る前だと言うのにも関わらず「あ、今までのランボーじゃない！」と確信させるだけのインパクトのあるオープニングだった。今までのシリーズのようなエンターテイメント映画を期待しているなら見る前に考えを改めるべきだ。また心臓の弱い方、残酷なシーンが嫌い、もしくは苦手な方は見ない方が賢明かもしれない。それほど今作は今までのシリーズ作品と一線を画するほどハードコアな作品に仕上がっている。シルベスター・スタローンのインタビューか雑誌の記事で彼が「これは見るのに苦痛を伴う映画です」といったらしい。それを僕は全く理解していなかったということだ。韓流映画「ブラザーフット」の戦闘シーンや映画「プライベート・ライアン」の上陸シーンをしのぐような殺戮シーンや戦闘シーンが最初から最後まで見られるのだ。スタローン自身が言うように「苦痛を伴う」映画になっている。見たい人は覚悟が必要だ。今までのシリーズ作品と同じように考えて見ると痛い目に遭うのは間違いない。

今までのシリーズ作品との違い、この変貌は一体何を意味するのだろうか？今までにもこのランボーシリーズはその時代、時代の軍事問題を提起するもしくは触発するようなテーマを題材にしてきた経緯がある。

１９８２年・アメリカ　　　　→　ベトナム帰還兵に対する偏見や差別
１９８５年・ベトナム　　　　→　ベトナム戦争でのＭＩＡ（戦闘中行方不明）兵の存在
１９８８年・アフガニスタン　→　ソビエト連邦のアフガニスタン侵攻

上記のようにあたかも好戦映画ともとられかねない内容だが、それぞれの作品にはその時代、時代のテーマが存在している。そして今作では「今現在も行われている暴力・虐殺の実情」がテーマなのかもしれない。世界の知らないところで今でも行われている民族紛争という名の虐殺。この作品の舞台となっているミャンマー（旧ビルマ）でも実際に紛争が行われている。日本人ジャーナリストが射殺された事件を記憶している人も多いだろう。何故あんなに危険な場所へいくらジャーナリストとは言え、行くのか僕は不思議でならない。ミャンマーでなくてもイラクやアフガニスタンで身柄を拘束された日本人や不幸にも殺されてしまった日本人は後を絶たない。しかし、彼らの意志はきっとスタローンのそれと共通するものがあるのだろう。「真実を伝えたい」きっとその一念なのだと思う。

今作ではＮＧＯの人間がミャンマーのカレン族に本や医療品を届けに行くがミャンマー政府軍に身柄を拘束されてしまう。この様に危険を覚悟の上で現地に乗り込み、危険を顧みず苦しんでいる人たちを救おうと頑張っているＮＧＯの人たちもいる。当然その中には犠牲になる人もいる。また彼らを助けに行く傭兵集団これもまた実在する。そして何より、作品の中で描かれている虐待・暴力・虐殺の有り様は本当にリアルで恐ろしくなるし、目を背けたくなるシーンが非常に多く描かれる。しかし、それは実際よりまだまだ甘いと言わざるを得ないのだろうが、映画でここまで再現、表現したというのは価値があるのではないだろうか？いや、あって欲しいものだ。

戦争や紛争での虐殺、虐待は絶対にある。あっても僕らの耳に入ってこないだけだ。イラク戦争時のアメリカ軍兵士が捕虜となったイラク兵に行った虐待（素っ裸にして卑猥な写真を撮るなどしていた行為）などはまだ軽い方だろう。今作で描かれる「虐殺＝皆殺し」。村人を全員殺してしまうシーンは本当に存在するのだ。作品に出てくる捕虜の命を賭けたゲームなどは信じたくはないがあってもおかしくはない。スタローンはそれらをリアルに再現したのだ。銃撃によって手足がちぎれる、体に風穴があく、首が飛ぶ、銃撃によって体がバラバラになる、ナイフで刺されて内蔵が崩れ落ち、蹴り倒されると上半身と下半身が同時に転がらないなど、恐ろしいほどリアルで２作目や３作目のイメージを持って見てしまった僕はものすごいショックを受けた。

現実はこれよりヒドイのかもしれない、こんなにヒドクないのかもしれない。何しろ伝わる情報が少ない。もちろん「伝えさせない」からには、施政者側に理由があるからなんだろうが。この映画の冒頭で使われている弾圧のフィルムも、観たことのある映像だ、ということは「それしか無い」のだ。数少ない、実際に撮ることが出来た映像なのだ。
実際の取材によって撮られたフィルム『ビルマ、パゴダの影で』（04スイス）の画面でも、カレン族などへの弾圧の空気は強く感じられる。

殺戮表現については、「映画だから」「ランボーだから」こんなに酷いんだ、と思いたいところだが、嫌な方の誤解が当たっているのかな。恐ろしいまでの残虐シーンが、怒りを沸騰させるための効果を上げる一方で、観る者の感覚を麻痺もさせる。物の様に奪われていくカレン族の命。これが絵空事なら、単純にさらっと観ていてもいいのかもしれないが。

　穿った見方をすると、アジア人が無数に殺されるのは前座で、援助に入った欧米人の命を一段上に置いているように描いてるようにも見える。それは（映画なんだから）しょうがないことだろうけど、相変わらずだなぁ、とも思うのだ。命が物扱いされる映像を観て、感覚がマヒしていくのも、もちろんいいことじゃない。伝えたかったことは分かるが、もう少し見せ方はなんとかならなかったか。

なんとも言えない虚しさ、後味の悪さ。現実に「悪者をブチ殺し」たって、たいして意味が無い事を、当のアメリカ人が自覚してきているからか。でも戦争のたんびに、その思いを語らせる役が回ってくるランボー…そりゃ呆然と佇みもするわな。
　あと、あまり過剰にリアルっぽく描くとこうなっちゃう、のもよく分かった。だからホラーやスプラッタは、どこか「作り物だよ」って所を残してみせるのが、「礼儀」なのかもしれない。


「あーひでぇー話だったー」なんて能天気に観終わるのもいいが、ビルマ軍事政権の兵器購入には、日本のＯＤＡが還流して使われているという現実もある。我々の税金が、ロシア・中国製の兵器購入に充てられたとすれば、我々も殺戮に加担している側なわけだ。　国名を、軍政に言われるまんまあっさりとミャンマーと呼ぶようになった、日本マスコミの肝力の無さと併せて、あんまり傍観者を気取ってばっかりなのも、あかんと思うのだが。

あ、なんか野暮だったかな、しんづれい。

※このユーザーレビューは作品の内容に関する記述が含まれています。

レビューを表示する

映画館で観ました。
変わり果てたランボーに対し、上司はあまり変わらない顔相。

外国のド田舎でひっそり暮らす貧乏人を探し出す？って有り得な〜い だけど有り得る〜
支援団？殺されるかも知れぬのに戦場へ行く？（まあヨシ）
敵が巡回する川を航行するかぁ？（緊張感あり）

見所は北斗爆殺拳！矢が刺さり人間爆発！！
不死鳥のランボーが生き返り醜い敵をガン飛ばす瞬間は鳥肌！！！
やっぱヒーローはそう来なくっちゃ〜

ところで、ビルマからミャンマーに変わり内戦も無いかと思ったが・・
例のオバさんサッチー？スッチー？スー・チー？を守るための内戦！？
その戦いにランボーが巻き込まれたの？（って冗談ですよ）

ミャンマー人って良く寺にこもり修行するらしく
（日本人は牛肉、韓国人は豚肉）ミャンマー人は鶏肉がお好き。

予想裏切るリアルで凄惨なグロ描写は、下手なスプラッター映画より余程神経にこたえますねぇ^^;

個人的にランボー１は生身の肉体を極限にまで使ったアクションシーンに驚嘆した大好きな作品。
ラストランボーとのことでてっきり原点に戻った肉弾戦が主なバトルだと勘違いしてたんで、余計に驚きましたが。
物語は実にシンプルな内容なんですが、肝心の陸軍？が私兵組織なのか何なのか最後まで分からず、一体何がテーマなのか本編からすくい取ることが出来ませんでした。

グロ満載のためエンタメとも言えず、アクション映画にしてはアクションシーンが少ないし、ランボーらしい生身の肉体を使ったド派手なアクションを観たかったのが本音なんですが、期待とは違う方向の作品でした。

と言っても、最後まで楽しく観賞出来たのも事実。
年齢的に無理かもしれませんが、これで終わりと言わずに是非、原点回帰を目指して続編を制作してくれるよう期待して待ってます。

※このユーザーレビューは作品の内容に関する記述が含まれています。

レビューを表示する

単純なストーリーに老いを隠すためなのかランボーの派手なアクションは影を潜めて
いるが、鋭い眼力と接近戦での迫力は健在。あのランボーが帰ってきた第４作目だ。
第三作、怒りのアフガンから20年という月日が流れてるのだが、そういった意味では
年齢を感じさせないのは流石だ。

しかし、本作の見所（といってもいいのかわからないけど）は数多くの殺戮シーン。
ミャンマー軍事政権のカレン族へ襲撃シーンからはじまるが、女子供に対しても容赦
ない襲撃は完全にスプラッターを凌駕している。銃撃シーンでは人間の体がいたる
ところで破裂し、張り裂け、地雷を踏んでは千切れている始末。ミャンマー軍事政権
の武器はよくわからないがここら辺りはややオーバーに描いていると思われる。しか
し不思議と嫌悪感や目を背けたくなる衝動にかられるわけでもなく淡々と見てしまう
のは何か映像にからくりがあるのだろうかとさえ思えてしまう。確かに妙なアップは
少ないので傷口をみるような生々しさがないのかもしれない。それにしとも強烈なシ
ーんである。事実に近い話であるのでなんともいい難いシーンではあるのだがそう
感じないような作りである。

その後、お約束のように傭兵達と米国人達を救出したものの船着場周辺で戦闘とな
るが、ここではランボーたちの攻撃が凄まじい。先の、カレン族襲撃シーンどころでは
ない。頭に命中すれば粉々、体に当たれば引きちぎれる。映像技術って本当に凄い
ところまできてるんだなと実感。この戦闘シーンでの描写は実はオーバーでもなんで
もなく、武器の破壊力からいってもかなりリアリティを追求している。ランボーが戦闘
中ずっとぶっぱなしていたのはブローニングM2重機関銃。これはとんでも威力の代
物で、50口径という銃弾を毎分500発射できるもだからあの距離で人間に対して撃
てばああなるのは必然。（ちなみに陸上自衛隊にもライセンス生産したものですが
装備されています）さらに、スクールボーイというニックネームをもつ庸兵スナイパー
がもっていた銃がバレットライフルと呼ばれるスナイパーライフル。映画でもたまに見
かけることがあります。MI:3で橋の上のトムクルーズを狙った銃がこれだったような
気がします（違ってたらすいません。。。。）このライフルがまた強烈でこちらも50口径
の銃。ミャンマー軍を撃って頭部に命中した際に、鈍い音と共に頭がフッ飛んだがこ
れも決して大げさではないのだ。映像技術を駆使したリアリティの追及は凄まじい。

各国で軒並みR-18指定を当然のように受けた作品だが、とにかくスプラッターどころ
ではないシーンのオンパレード。これでランボーの細かいところには突っ込むことを
忘れさせられたのも事実。彼が自分の血を受け入れるというようななかなかいいシ
ーンもあるのだがすぐに忘れてしまうぐらい。さらに過去のランボーをフラッシュバッ
クではさんでおいてから戦闘シーンい入るという念のいれようだ。私的には20年たっ
てつくった作品の割にはしっかりランボーであったと思う。

次は田舎で暮らしているものの銀行強盗なんかが逃げてきてそいつらと戦うみたい
な展開で作ってもいいんじゃないですかね。戦場にこだわらないでも。かつてのアク
ションスターたちのシリーズが終わっていくのは寂しいものです。私はランボー５が
あるのであれば内容云々よりもまず拍手で迎えたいです。