奪命金

タイトルとは裏腹に、オシャレな映画。香港映画にしてはアクが弱い。そのアクのなさが、よい結果に出ています。
オシャレ感の代表がバックに流れる軽やかな音楽。
往年のイタリアのコメディ映画で活躍したアルマンド・トロヴァヨーリやピエロ・ピッチオーニの楽曲のように
スキャットを使ったモンド感のあるお洒落なラウンジ・ミュージック。曲が流れると、うきうき楽しい気分になってきます。
ストーリィは、刑事、ヤクザ、女性銀行員のお金をめぐっての一日の様子で、いろいろなことが起こりますが、
日常を少し逸脱した面白さがあって、とても楽しめました。
三人にはそれぞれ直接の接点はなく、三人に関係する複数の人物を通じて、接点を持っている。そういう話の構成が巧みです。
そして、特筆すべきが、このお洒落で粋な映画を象徴するような軽やかなラストシーン。
主役たちが、長過ぎた一日をうそぶくように歩く交差点のなんとも言えない雰囲気が最高。個人的には傑作。

　ノワールの世界はしばらくさよならと言っていたジョニー・トーの新作は、金融犯罪ドラマ。
　三つのドラマが同時進行して、絡み合い……というもの。
　『ドリーム・ホーム』や『盗聴犯』シリーズなど、香港のバブル経済＆リーマンショックを背景にしたエンタテインメントがけっこう公開されています。
　ラウ・チンワンが出ていることもあって、『盗聴犯』シリーズと印象が重なるところがないではありませんが、ジョニー・トーはあくまでクール。
　デニス・ホー演じる銀行員が半ば不本意ながら女性に「一攫千金」なるリスクの高い投資信託を売りつけるシーン。
　契約内容や免責条項などを伝え、やり取りを録音し、ビデオを見せ、上司チェックを受け……みたいな業務の過程をじっくり描きます。
　それで面白いのかというと、彼女や客のいろんな感情が的確に描写されているので、飽きないんです。
　あるいはラウ・チンワン演じるヤクザが、落ちぶれたボスの誕生会を開いたり、捕まった兄貴分の保釈のために金策に走ったりするところも、何が起こるというわけでもないですが、目が離せない。
　刑事役のリッチー・レンのマイホーム話も含めて、いちおうお金にまつわる人間模様になっていますが、会話とかちょっとした人の動き、人物像の個性で見せてしまう。
　もはや、いわゆる男のロマン的ジョニー・トー節を出さなくともかまわない、悠然とした演出。
　デニス・ホーのエピソードからラウ・チンワンのエピソードへのつなぎで、時間がぐいっと戻ったことを意識させるわけですが、その手つきのあっけなさというか滑らかさ。
　ラストも別にまあ楓通ですし、一見小粒に見えますが、うーん、うまいとうなりました。７５点。

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　ギリシャの金融危機を背景に刑事とヤクザ、銀行員の3人の全く関係のない人たちの運命のパズルが狂っていくという。

　刑事は妻のマンション購入に決心がつかず答えを先送りにしてつつ殺人現場を走り回る毎日。銀行員の女性は契約ノルマに追われて思わず何も知らない中年女性にリスクの高い商品を進めてしまい、そこへ悪徳業者の男が預金を引き出しにやってくる。
　ヤクザの男は義理人情に生きていて兄貴分の保釈金を集めて奔走していて、兄貴分の社長に金を融通してもらう。

　そんな中、ギリシャ危機が起きて金の流れが変わってしまいそれぞれの歯車が狂い始める。全く関係のなかった人たちがしだいに絡み合っていく。
　見ているうちは時系列が入れ替わっているのに気付かなくて、中盤にさっき死んだはずの男が普通に出てきたりしてそれで時間が戻っていることに気づかされるのは面白かったです。

　けれど主要人物の3人がラストシーンに絡んでくるまでの発動が長い感じがしてイマイチ盛り上がらなかったです。しかも3人の主要人物以外にも関係のない人物がチラホラ出てきて、どこを見ていいのか戸惑いながら見てました。
　ヤクザのエピソードが1番面白くて、刑事のエピソードなんて少ししか出てこなくて奥さんとの関係もあっさりと解決してしまって、3人のバランスが悪いのが乗り切れない理由だと思いました。
　
　けれども時間軸が行ったり来たりしてAさんがBさんに影響を与えBさんがCさんに影響を与えてという面白い映画でした。

金の臭いは
無きものが見え
そして踊れば
世の終わり？

さまざまな理由から銭勘定に翻弄される人々の姿を描いたブラックコメディで、
想像と違った展開に最初は戸惑ってしまったのだけど、
主役であるチンワンが登場したあたりから状況は好転し、
複雑な構成の見せ方のうまさと、皮肉なドラマには十分に観る価値があった。
何より主役のチンワンがめちゃくちゃかわいいんです！