私の男

桜庭一樹による直木賞受賞作を、「海炭市叙景」の熊切和嘉監督が映画化。
10歳で孤児となった少女・花（二階堂ふみ）は、遠縁の男・淳悟（浅野忠信）に引き取られます。ともに孤独な2人は北海道紋別の平穏な田舎町で暮らしていたが、ある日、流氷の上で起こった殺人事件が報じられます。そのニュースを聞いた2人は、逃げるように町を後にします。

二階堂ふみが１８歳になるのを待って、冬の北海道、紋別市でロケされたようです。
R15指定となっていますが、内容はもっと過激なような気がしました。
冒頭、軋みながら漂う流氷の合間から、一人の少女が這い上がり、寒さに体を震わせながら時折思い出したように笑みを浮かべます。花を演じる二階堂ふみの表情を観ただけで、これは、すごい映画なんだろうなと思わせます。
紅いほっぺの中学生から、危険な魅力を振りまく２５歳のOLまでの１０年間を、素朴さと妖艶さを無防備な体から醸し出す少女の中の女を見事に演じた二階堂ふみに圧倒されました。

後半、花と淳悟の逃避行先の東京へ移ると、ドラマ的な緊張が失速してしまったように感じました。
肩を寄せ合って生きる淳悟と花の誰にも邪魔できない深い絆を、時には退廃的に、時には艶やかに表現し独特のグロテスクな余韻を残します。
見終わって息苦しさを感じる映画でした。

桜庭一樹の直木賞受賞作の映画化。
原作は既読だったのに、肝心のところをすっかり忘れてしまっていました。

奥尻島地震の津波で家族を全員失った少女、花は遠縁の男、淳悟（浅野忠信）に引き取られる。
成長した花（二階堂ふみ）と淳悟は、傍目には仲のいい親子のようだったが、実はただならぬ関係になっていた。

熊切監督の前作「海炭市叙景」の函館のさびれた風景も印象的でしたが、この映画の舞台、紋別もまたさらに印象的。
風が吹きすさぶ音、流氷が押し寄せるギシッ、ギシッという音。雪に閉ざされた町の閉塞感。
淳悟と花の禁忌の関係は、この舞台あってこそと感じました。

二階堂ふみが中学生から２０代後半までを演じていますが、特に凄いのが中学生ごろ。
限りなく無垢な少女に見える瞬間があると思いきや、次の瞬間には男を弄ぶ魔性の女のような顔になっている。
淳悟の恋人とのシーンでは、心底自分の周りにはいてほしくない少女だなあと思いました。

圧巻は、ふたりのただならぬ関係に気づいた大塩（藤竜也）と流氷に流されてゆくシーン。
撮影大変だったでしょうね。藤竜也ってもうけっこうなお年のはずですが、大丈夫だったかしら？と心配になりました。

紋別でのパートが素晴らしいだけに、後半舞台が東京に移ってからが少し失速気味。
でも、どんどん美しくなっていく花と対照的に、堕ちてゆく淳悟の姿は哀れでした。
家族が欲しかったけれど、こんな結びつき方しか知らなかった男。
レストランで淳悟に向き合った花がつぶやいた言葉は一体なんだったのでしょう。

印象的なシーンがふたつありました。
まず、一つ目は、淳牾が給料の先払いを願い出て、女子事務員に言われて、
母音を押します。女は顔をしかめて[不潔で匂うわよ。嫌われるよ]
みたいな事を言います。
淳悟は殆ど気付いていないようで、その後、盛んに自分の指の匂いを
気にします。
娘の花が淳悟の指を舐めたりかじったり、盛んに執着します。

嗅覚の喪失は1番、外傷性ショックが多く、心因性は殆ど、少ないそうですが
殺人事件が原因と思えてなりません。
東京に出て来てから2人の住居は、ゴミ屋敷の様相を強くしています。
猟奇事件の犯人に嗅覚障害が多く、見られます。

ふたつ目のシーン。
高良健吾に送られて来た花(二階堂ふみ)を部屋に上げた淳悟は、
甲斐甲斐しく着替えを手伝い、花の瞳からワンデーのコンタクトレンズを
手馴れた様子で外し、投げ捨てます。
ここまで心と身体を預け合うふたり・・・ってもの凄く、特殊に見えました。

特殊な物語りを映像化した禁断の映画でしょう。
風の唸る音。流氷のギシギシ鳴る音。
生活音〜台所の水音、トーストをかじる音。マーガリンをぬる音。
音がひとつひとつ、米粒のように立っていて、聴いていて心地良いのです。
逆に不穏なシーンで流れるジム・オルークのBGMは、一見、ヒーリング音楽風なのに
ヒドく不快でたまりません。

力強い求心力のある映画でした。賛否は分かれるでしょう。
不快に思われる方も多いでしょう。
ただレンタル開始日に、少なくとも今のこの瞬間、5000人位の人々が、
この映画を視聴しているとしたら、事件ではないでしょうか？
大作でもアニメでも娯楽作でも無い、この映画が。
ラストこそが、この物語りの出発点。
そう思えて仕方ありませんでした。

二人がなぜ一線を越えてまで互いを必要とし、一つになることを切望したか？という最も重要なプロセスの描写が欠落している。それまで延々とまどろっこしい演出をしておきながら、そこをすっ飛ばしちゃ駄目だろ。結局、そこが描かれないことによって二人の関係に何ら説得力が得られず、後はもうだらだらと作り事のようなエピソードが続く。いっそ「ロリコン変態男の飼育日誌」的な描き方のほうがよほどリアルで腑に落ちたはず。
原作とは逆の「時系列」の構成をとっているが、はっきり言って失敗しているし、全体に舌足らずであることを考えれば「原作依存(原作を読めばわかる的な)」であることも間違いない。単体としての映画作品に昇華出来るだけの力量が脚本家にも監督にも無かったということだろう。流氷等の情景描写の演出は良かったが、それだけでは困る。ドラマなんだから。

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父親失格。

助けて見守ってくれてた大塩のじいさんに何してくれてる？！
恩をアダで返すとは、正にこの事。

雪景色という幻想的で美しい背景を
近親相姦で汚すとは。。。
これ観て「美しい」「深い愛」「禁断の愛」とか何とか素敵に捉えるなら
悪趣味。

小町さんの、彼等に対する視線。
「えっ？！何この変態……。」
それが正しい。
そこに☆１つ。

ジメジメジトジト、カビ臭くて気色悪い作品。
ラストとか、どーでもよくなってました。