愛を積むひと

原作は、ロングセラーのエドワード・ムーニー・Jr.の小説「石を積む人」。
東京の下町で営んでいた工場をたたみ、豊かな老後を求めて北海道に移住してきた篤史(佐藤浩市)と良子(樋口可南子)。しかし、ガーデニングや内装アレンジなど充実した毎日を楽しむ良子に対し、仕事一筋だった篤史は暇を持て余すばかり。そんな夫を見かねた良子は、篤史に家の周りの石塀づくりを頼みます。

石塀づくりの本当の狙いは、自分が亡き後一人になってしまう篤史を心配して彼の生きがいづくりであり、人脈づくりでもあったのかもしれません。

石塀作りを手伝う徹の罪からの再生だったり、子どもの和解だったり様々なドラマがあって予想外に心に染みました。
自分が死んだ後の篤史のことを考えて生前に手の限りを尽くした良子の気持ちが散りばめられていて、深い愛に泣けます。
語り口が丁寧で、押しつけがましさの無い優しいストーリーテリングでした。

　ぬくもりのある、優しさに満ちた、とてもすてきな映画です。人はひとりだけれど、互いに支えられて生きている。

　ひとつ、ひとつ、石の塀を積んでいくように、人生も血のつながりを超えた人と人との結びつきの積み重ねなんだなあ、としみじみと感じられる作品です。

　楚々として慎ましやかな樋口可南子と、とっても渋くて歳を重ねた重みを醸し出す佐藤浩市の、夫婦の姿が味わい深く、真珠のようにどこか凛としていて素敵です。

　若い世代のまっすぐな愛、熟年夫婦の深い思いやりの愛、我が子に対する慈しみの愛、袖振り合うも多生の縁かもしれない友愛、過ちを償いやり直す機会を与えてあげる赦しの愛、どれもどれも心がこもっていて、北海道の広大で厳しくも美しい四季の自然とあいまって、強く深く心に響きます。

　なにより、柄本明と佐藤浩市の芯はやさしい頑固おやじ二人組がなんだかかわいくて、とってもいい味を出しています。名（迷？）コンビ最高です！

※このユーザーレビューは作品の内容に関する記述が含まれています。

レビューを表示する

妻の良子さんが自分の死期を感じて、あらかじめしたためていた
３通の手紙。
どんなに深く夫の篤ちゃんを愛していたかが、わかるだけではありません。

良子さんが、とっても素晴らしいひと・・・で・・・ホント、好きにならずには
いられないひと・・・でした。

１通目の手紙

それは葬儀も終わって、落ち込んでる篤ちゃん（佐藤浩市）に、上田紗英（石塀造りを手伝ってる杉本徹のガールフレンド）から渡されます。

どうか石塀を完成させてください。
身綺麗にして栄養バランスの良い食事を心掛けて、
必要以上に、悲しまないでください。

２通目の手紙

それは篤ちゃんが良子さんに毎年、一粒だけ贈っていた真珠の小箱に
入ってました。
実は、夫婦の留守に空き巣が入り、大事な真珠の２０粒程が盗まれたのです。
（勘のいい良子さんは）
この箱を開けているのは、真珠がみつかったのね？
わたしは犯人を知ってるの！
でも、どうか許してあげてください。
彼はすごく後悔しているし、あなたにとって大事なひとだから・・・

そして３通目手紙

それは夫婦のひとり娘、聡子さんのアルバムの中から出てきます。
篤ちゃん、どうか聡子を許してあげて・・・そして、あなたが誰よりも
愛していることを、聡子に伝えてください。

こんな手紙を遺す女性（いえ人間）は素晴らしいです。

石を積むこと・・・
それは、愛を積むこと。
妻は、篤ちゃんが、ひとりぽっちにならないこと・・・それを
一番心配したのだと、思います。

妻の深い、深い愛のメッセージを受け取りました。

優しさ溢れる良い映画だった。

想像していたほどは泣けなかったけど、
人の根底にある思いやりの心、慈悲、優しさ
ここに出てくる人たちはそれを知っている。
夫婦の愛を描くだけでなく、家族の愛を、そして彼らを取り巻く人びとの愛をも描いていく。
失って初めて深く感じることになる存在の意義。
夫婦って、家族って、親子って？
血のつながりって何だろう？
生きることの喜びって何だろう？
東京の工場をたたんた後、美瑛町の外国人が住んでいた古い家に手を入れながら暮らす中年夫婦を中心に、優しい人々の心の再生物語。
北海道美瑛町の美しく広大な大地の如く、それはどこまでも広く優しく心に響く。

良質の作品だった。
そして、佐藤浩市さんが凄く素敵だった(^^)

※このユーザーレビューは作品の内容に関する記述が含まれています。

レビューを表示する

良かったです〜〜♪
残念なのは、ストーリーに重要なはずの、娘の過去がちゃんと明かされないことで、クライマックスの真珠のネックレスで涙するところがボヤけてしまいました。
「過去を許す」って何を？
と、思いました。

単純に、暖かく良いストーリーですよ。面白かったです。
良かっただけに、「娘の過去の恋愛」が残念でした。