夕陽のあと

※このユーザーレビューは作品の内容に関する記述が含まれています。

レビューを表示する

鹿児島県長島町、夫とともにブリの養殖業を営む五月は、赤ん坊の頃から里親として育ててきた
豊和（とわ）が、8歳になるのを前に「特別養子縁組」の申請が通るのを心待ちにしていた。
（里親と特別養子縁組の違いは、両親の籍に入り実子と変わらない待遇になること）

一方、この島に一年前に東京からやってきて、島の食堂で働いている若い女性、茜がいた。
カメラは、とわに世話を焼く茜の姿と、一瞬切ない表情をするのを捉える。

考えられない事だし、あってはいけない事だが、この映画は児童相談所の面接官が、
児童（とわ君）の実母の名前と事件のあらましを教えてしまう。
「佐藤茜」という、まさかの食堂の女性の名を聞いて、動揺する五月。
また、逆に茜はいかにして我が子のいる場所をつきとめたのか、
その辺も簡単にはわからないはずなのに。
面接官の言葉から、とわが母親のところに帰るかもしれないと思い、五月は苦しむ。

この映画は、育ての親と産んだ母親が、真っ向から向き合うが、二人切りで
お互いの立場にたてるのは理想的すぎるというか、映画だから描けた。
（夕陽傾く漁船の上でなど、美しすぎる！）

それから、関係ないと思うのだが、悩んでる茜に「俺と結婚すればすべてうまくゆく」
と押しムードの男はなんなのだろうと引いた・・。
問題提起にはなっているだろうが、長島町の観光映画風で作品的には少し弱い。

　生活に困窮した産みの母に生後３か月で遺棄された乳児。その子を児童相談所から里子として引き取り、７歳になるまで我が子のように慈しみ育て、８歳になる前に特別養子縁組の申請をしようとする育ての母。ぶりの養殖業を営む夫、優しい祖母、幸せな４人家族。

　そこに突然現れた実母は、成長した我が子を密かに見守り、再び親として引き取って育てたいと、親権停止取り消しの申し立てをする。裁判所がこれを認めれば、親権は実母に戻り、養母は子どもと別れなければならない。

　生活苦に一旦は子どもを手放してしまったけれど、我が子との再会を夢に、再びやり直すことだけを心の支えにして、必死に生きてきた産みの母。里子を実の子同然に愛し、本当の母親になろうと、無我夢中で必死に努力してきた育ての母。どんな決着をしようとも必ず誰かが悲しむ結果になる、重く深刻な問題。

　映画は、舞台を鹿児島県の長島に設定することで、悲痛さや深刻さを和らげている。山と海に囲まれた、のどかで自然の美しい、小さな漁村。温かい人情溢れる地域で、のびのびと心優しく、とてもいい子に育った少年。「海は夕陽のあとが一番凪いでいて暖かい」と、育ての母が言うように、物語は親権をあまり深く追究せず、優しく静かにソフトランディングしている。

　祖母役を演じている木内みどりさんの遺作となった映画とのこと。特典映像に彼女のインタビューが収録されているが、いかにもベテラン俳優らしい、大らかで闊達な話しぶりに、親しみやすく魅力的な人柄がうかがえる。素敵な方がまた逝ってしまった。ご冥福をお祈りいたします。

育ての親と生みの親が7歳の子どもを奪い合う。子どもは育ての親を実の親と信じてなついている。しかし裁判になればどっちが勝つかわからない。赤ちゃんの時に棄てられたこと、両親が実の親ではないこと、実の親が自分を取り返そうとしていること、すべて子どもにとっては大ショック。裁判になったら、どちらの子どもになりたいかときかれるのだろうか。残酷な選択だ。どういうエンディングになるのかとハラハラしていたら、大切に育てられた子どもの優しさのおかけでなんとか・・・という感じだった。おばあさんのセリフ「子どもはいつか島を出て行くんだから、預かりものよ。」お父さんの「お母さんは1人じゃない。島のみんながお母さん。海もお母さん。」それはそうかもしれないけれど。

貫地谷さんは、目で演技する力がありますね。目で感情を訴えていますね。山田さんのヌ〜とした顔つきとは好対象でした。監督さんもあえてそうゆう人選だったのですかね。
子役もなかなかいい味だして、いい作品だと感じました。