風の電話

2011年の東日本大震災で家族を失ったハル（モトーラ世理奈）は、
広島の叔母に引き取られ、17歳高校生になっていた。
当時9歳のハルは、突然、何もかも失い、心に強い不安を抱えたまま育った。
ある日、学校から帰ると、ただ一人の身内である叔母が倒れていて、入院するも
意識不明であると告げられる。
またひとりぼっちになるかもしれないと動揺したハルは、行先も決めないまま
電車に乗り、ヒッチハイクし、やがて故郷の岩手県大槌町を目指すと決める。
ハルはそこで、実在する「風の電話」（電話線はつながっていない）亡くなった人と話せるという事を聞き、そこに行きたいと願った。

という話ですが、これはドキュメンタリー風ロードムービーと言ったらいいのか、
震災や災害で傷ついた人たちへの応援歌だと思うので、もとより娯楽性やハプニング要素は
まったくありません。
震災で心を病んだ女の子が、ほぼヒッチハイクで広島　⇒　岩手と、本州縦断して
都度会った人たちに、応援され徐々にしっかりしてゆくという感じですが。

まず先に褒めておけば、当初、眠ったような眼でうつむきがち、世話になって
「有難う」も大きな声で言えないようなハルが、電話BOXに入ったとたん、
「なぜ私だけ置いて行ったの！私もみんなの所に行きたい！どうしてなの！」
と、大きな声で絶叫し続けた場面。
聴いている方も身につまされました。
ラスト近くになるまで、無口で不愛想だったのは、ここで変身するための伏線だったのかな。
これで、もう安心して強く生きていけるかもという安堵感はありました。

さて、腑に落ちない点が少しあります。叔母さんが意識不明だというのに、行き先も
連絡もなしで飛び出しますか。（それこそ叔母さんはどんなに心配するでしょう）
幸い、列島の旅先で会ったのは三浦友和、西島秀俊　西田敏行、山本未来といい人ばかりです。
食事を提供し、話をしてくれ、お金まで貸してくれます。
でも、ヒッチハイクや夜の駅など、危ない事このうえありません。いい人ばかりじゃない。
制服を着た切りの、いかにもボーとしたモトーラなんか、いいカモですよ。
絶対、真似してはいけません！
西島さんが埼玉まで乗せてやる、と言ったのは現在地どこなんでしょうか。
それで何日かかって岩手に着いたのでしょうか。
（周辺情報が整理されていればもう少し楽しめたと思います）

出演者も豪華で驚きました。東日本大震災って10年たったけどまだ10年って感じで見ていて何とも言えない気持ちになりました。近すぎて冷静な気持ちで見れない感じでドキュメンタリーを見ている感じがしました。
あと少し長くも感じました。
入院されたおばさんとかも気になってしまいました。

8年前に震災で両親を失った、高校生のハル。
引き取ってくれた広島の叔母が倒れ、意識不明に。
叔母が行こうと言ってた岩手県の大槌（ハルの住んでいた場所）へ、広島からふらりといく、ロードムービー
いやいや、危ないよ、お金持ってるの？とついつい現実的になってしまう
心の傷から、大きな声で話せないハルに、いきなりヒッチハイクって、めっちゃ危ないでしょう。。。という目線で見てしまった
妊婦さん姉弟や、福島で妻子を失った男（西島秀俊ですが）が送ってくれますが（まあいろいろあって）そんなに甘くないよ、とついついそういう目で見てしまう

ラスト、風の電話にたどり着き、大きな声で自分の心を叫ぶのですが、私はそれより、ふるさとに着いて幼馴染のお母さんと再会し、そのお母さんの、「生きていれば娘も高校3年生なんだ」という、心の声が聞こえてきて、ここが一番泣いてしまった。。。
「ごめんなさい」と謝るハル（いや、ハルは悪くないよ。。。）

でもちゃんと広島に帰ったの？とか、お金返したの？とか、叔母さんは助かったの？とか、いろんなことが気になった私、
長い映画だったので、ここはきちんと描いて、力強く生きている、というメッセージがほしかったかな。。

「お前がいなかったら、家族を思い出す人がいなくなる」
「生き残った以上は食って、だして、食って出して生きていけ」

この言葉も響きました