ワイアット・アープ

超一流の銃の使い手であるばかりではなく、法と正義を尊ぶ高潔な人柄でつねに紳士的に振る舞う保安官の理想像、といったこれまでの思い込みがガラガラと崩れ去る映画でした。
そもそも当時の保安官という役職は公務員というよりお金で雇われる町の用心棒のよう。兼職も可でアープも鉱山開発などで儲けています。しかもワイアットは「血は水よりは濃い」との父親（ジーン・ハックマン）の教えを守って、兄弟で同じ町に住み行動をともにします。それぞれの細君もいっしょにアープ家軍団を形成し町の商売もほぼ独占状態に。
けっして孤高の一匹狼ではありませんでした。
物欲もあれば性欲も同様というところで、初恋の相手と結婚早々妊娠中の愛妻を伝染病で失ったのは気の毒でしたが、その後ながく内縁関係を続けていた女性を捨てて、若い美人と結婚してしまうのには納得がいきませんでした。ずいぶん残酷な仕打ちではないか。
保安官職務においても強引苛烈な手法を用い、悪人と見たら何もしないうちにしょっぴいてしまいます。転び公防の手間も惜しんで予防拘束ですね。
法を守れといいながら、自分自身も法の名で訴えられる。裁判なんか頭から無視してクラントン一家を皆殺しにしようとする。ダブルスタンダードで平然としていられるのです。国際社会におけるアメリカのふるまいの原点は、ワイアット・アープにあるのかも。
あのＯＫ牧場の決闘の前に、ワイアットはコーヒーを飲んだというのも面白い発見でした。
最初の妻に死なれた悲しみからアルコール依存症になりずっと禁酒をしていたのです。まさかアープがアル中とは思ってもみませんでした。
その後立ち直りドッジシティで保安官の役職を得るまでのあいだ、彼はさまざまな職につきます。
衝撃的だったのは、バッファローの皮はぎ。銃で仕留めたバッファローの毛皮をその場で剥ぎ、集めては市場で売る。広い草原には皮をはがれた赤むけのバッファローの死体が点々としている。西部劇はけっこう見てきたつもりですが、初めて目にするシーンでした。
バッファローが絶滅寸前まで数を減らした理由がよくわかりました。
史実に則って映画化されると、どこが魅力なのかわからなくなりますが、あのすさまじい暴力の時代を銃弾の破片すら浴びずアープは８０歳まで生き抜いた、生き証人として西部開拓時代を語ることができた、という点が特別なのでしょう。
「シルバラード」のように軽快な面白さはありませんが、西部開拓史の勉強にはなります。ケビン・コスナーももちろんよかったのですが、ドク・ホリディ役のデニス・クエイドの激やせ病人ぶりはすばらしかった。

亡き父が西部劇や戦争映画が好きで、幼い頃から映画館通いに付き合せられていました。
だから、なんとなくこの映画観たような気がします。

ワイアット以外の人は銃で撃たれ死んだり、怪我をしているのにワイアットはかすり傷すらなかったとか。運の強い人は弾の方からよけて行くと聞きます。
内縁の妻…最後には捨てられてしまいましたが、私は当然と言う気がしました。だって、酒におぼれるし、口を開けば嫌味しか言わない。
どんな事情があろうと、酒に逃げたり夫に嫌味を言えば嫌われるの当然です。意地があるならシャントしていなさい！と喝を入れたい。

最後では若い妻との航海のシーンでしたが、そのシーンだけはちょっつ不満です。ワイアットの為に亡くなって行った人々の事を考えたら、もう少し控えめにしなさい。
と言いたい。若い妻を貰い、男として満足でしょうけれども、多くの人の犠牲の上に貴方の幸せが成り立っていること…決して忘れてはいけない。
そうそう、前後してしまいますが、肉親を殺されたからと既に死んでいる体に何発も銃弾を浴びせるシーン。ワイアットの本性観たり！でした。
憎しみからは何も生まれない…と誰かが言っていました。私も同感。死を以て罪を贖ったのですから追い打ちをかけるような行為には反対です。

DVD２枚と言う、長編作品でしたが、見ごたえありの「これぞ西部劇」と言う感じがしました。西部劇ファンには見逃せない作品なのではないのでしょうか。

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やっぱり史実を作品にするのは難しいのかもしれない。興味深いエピソードがたくさんあるのに．ポイントが絞られていないため．単にあったことが羅列されるばかりで．登場人物に魅力を感じなかった。自分がワイアット・アープという人物を知らなかったせいかも知れないが．．．

血の繋がりが一番大切で．法が次に大切という父の教えを生真面目に頑なに守っている主人公の価値観がいまいちピンとこなかった。それを守るために結局家族を犠牲にし．自分は最後まで生き残っている主人公がとても腹ただしかった。やっぱり．映画だから主人公の感情に少しでも共感できないと観ていてつまらないのかもしれない。だから．最後まで観たけれど本当に長く感じた。

その反面．周りの人物には共感できる部分が色々あったように思える。でも．そのことが深く掘り下げられることがなかったので．観ていて消化不良を起こした。久々に自分には全く合わない作品だった。

前編後編一度に借りられなかったので、後編だけツタヤに足を運びました。
この時代は生活を楽しむというよりは、如何にして命を守るかが毎日の課題だったようです。こんな恐ろしい時代に生まれなかった事を感謝してしまいます。生涯弾丸１つたりとも受けなかったのは奇跡というよりはワイアットの気迫に弾丸も避けたって感じでしょうかね（ｏ￣∇￣）ｏ
まさしくこの西部劇時代の王道といったところですね。
楽しめましたし、ネットでご本人のお顔を拝見させていただきましたがケビン・コスナーを起用した理由がとてもよく分かりました。

長いわ、だるいわ・・・なんでこんな作品作ったんだろう。ケビン・コスナーの『ダンス・ウィズ・ウルブズ』的な西部劇の切り口を期待してしまったんですが、そんなことはなく、英雄ワイアット・アープの知られざる部分を多分描いているんでしょうが、元々のワイアット・アープの英雄譚に興味ないもんにとっては、うーーーん、西部劇としても物足りぬ仕上がり。もっと描き方があったような気がするんですが・・・長けりゃえぇ、ってもんやないやろ！！と思わず言いたくなるような鈍重な展開です。

とりあえず、思ったのは・・・家族の物語だったのかなぁ。