哀愁

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衝撃的で強度のあるシナリオ(物語)の作品ではあるが、実はこの作品が優れているのはこのシナリオに依るものだけではない。むしろシナリオを過不足無く捕捉すると同時に単なる物語の運び以上のものを画面で語っていることが実に素晴らしいのだ。また、売春婦に転じるきっかけとなった際の驚きとも畏れとも受け取れるような表情のアップを始めとして素晴らしい演技を見せたヴィヴィアン・リーも、「風と共に去りぬ」の主演女優という知識しかなかったが故に殆ど全くと言ってよいほど興味を感じることがなかった彼女が著名な作品に出演していたただそのことだけによって著名であったわけではないことも驚きであると同時に、この作品の彩りを一層豊かなものにしていた。ほかにもアイキャッチでことさら強調された涙を流すアップのシーンなども、その照明効果による強調がちっとも嫌みとは感じられないほどドラマティックだったし、本来なら喜び以外のなにものも入り込む隙間もないほどの愛する男性との再会のシーンにおける彼女の様子も、後の悲劇が後になって考えれば充分に予測されうるほど不吉な表情を湛えていたりと印象深いシーンを上げていけばそれこそ枚挙に暇がないほどだ。
もちろん、個人的には大傑作だと思う。

ヴィヴィアン・リーの薄幸な美人という役作りが凄い。『君は人生に何も期待していないような気がする』と会ったその日にロイが言うが、そういう気が本当にする。冒頭から運命の力を感じさせる演技だ。

この映画の価値観は、今ではどこにも無いのではないか。娼婦を見下して言う女性たちが日本にはたくさんいるが、職業に貴賎は無いと私は思う。娼婦は職業ではないと言うかもしれないが技能が伴うものだけが「職業」ではない。人を騙すものでない限り、生きるためにすることはみんな立派な職業だ。

1940年にはそうではなかったのだろうか。そうではなかったのだろう。だから映画になっているわけで。

マイラはバレリーナだったが、バレリーナが賎ましい職業として描かれているのも、今の価値観とは掛け離れている。人間の価値観なんて、時代によってくるくる変わるものだと思う。しかし、不変の価値観もある。マイラが真心を持つ(だから死んじゃうわけだが)、人の思いやりを読み取れる（ロイの伯父がなぜみんなの前でマイラと踊ったかをマイラは見抜いてお礼を言う）、素晴らしい女性だということは今でも同じく理解されるだろう。そして、そういうものって、生まれとか、職業とか、教育レベルとかにまったく関係なく、その人間に神様が宿すものなんだな、という事が、マイラの姿から感じられる。

ヴィヴイアン・リーって、30年間に20本しか映画に出ていない。それでも、歴史に残る映画スターだ。この人も多くのハリウッド女優同様、あまり幸せではない一生を送ったように見えるが、この映画はそれがだぶって見えて仕方が無い。沈み込んだ気分を盛り返すには「風と共に去りぬ(1939)」のスカーレットをもう一度見直したくなる。

永遠の名作だと思う。

名作シリーズの戦争映画を何本か見て来ましたが、「青年将校と踊り子」の設定多いんですよね。踊り子の「決して裕福ではないけど、でも夢を追っている」という姿が主人公の女性の健気さを伝えるのにふさわしいキャラクターだったのかもしれませんね。

バレエダンサーのマイラにヴィヴィアン・リー。
『白鳥の湖』の白鳥の衣装を身にまとった彼女は本当に美しかったですね・・・。そして私は背の高い恋人を見上げる時の彼女の目が一番好きなんです。
目は口ほどに物を言い・・・と言いますが、この映画の彼女も様々な表情を魅せてくれます。

なんとか前向きに生きようとしていた彼女でしたが、まさかの運命・・・。

彼女の「愛の選択」が哀しい名作でありました。


原題は『ウォータールー橋』。
ロバート・テイラーも凛々しい大尉役でしたが、なんと言ってもヴィヴィアン・リーの美しく、そして哀しい表情はずっと心に残るだろうと思います。

ラスト・ダンスの『蛍の光』とともに。

「風と共に去りぬ」のスカーレットの印象が強すぎて、私にはだめでした。ビビアン・リーの気品のある顔立ちが、主人公のたどる生活にあっていないようにも思えました。

閉店の時のアノ音楽が、今と変わっていないのは驚きました。

古典名画である。原作はロバート・Ｅ・シャーウッドの舞台劇「ウォータルー橋」で、彼は４０年「レベッカ」、４６年「我等の生涯の最良の年」の脚本を担当している。それだけに単なるラヴ・ロマンスに終始することなく、物語を回想シーンから展開させる手法や、ヒロインのマイラ（ヴィヴィアン・リー）と親友キティ（ヴァージニア・フィールド）の友情、そして「どん底」の生活描写など、胸にグッとくるものがある。戦時下であることや、ハッピーエンドに終わらない哀しさなど、暗く重い作品であるが、それはそれでいい．．．と納得する。　ところで、マイラがローイ（ロバート・テイラー）にお守りとして渡す人形は、大阪・通天閣に飾られている「ビリケン人形」と同じもののようです。