ローズ

ベッド・ミドラーのステージシーンは圧巻だった。
しかし、ひとりの女としてローズを見たとき、なんでこんな生き方しかできなかったのかと悲しくなる。特典の予告編のナレーション、She gave, she gave, she gave, until nothing leftというまさにその通りで、みているのが辛かった。

ジャニス・ジョプリンもベット・ミドラーも名前しか知らなくて、白紙の状態で見ました。心を激しく揺さぶられました。音楽のデーモンはローズに天賦の歌の才能を与えました。同時に悪徳の蜜の味も教えました。シンガーとして有名になっても、アルコール・ドラッグ・セックスに溺れる日々。ダメダそんなことしちゃ！もっと自分を大事にして！醜いショービズの世界を捨てて愛する男性のところへ行って！映画を見ながら、何度も心の中で叫びました。けれども凡人が求める幸せとローズが求める幸せは、違っていました。ローズはみんなに素晴らしい歌と圧倒的なライブパフォーマンスを残した、ローズにはこういう生き方しかできなかった、自分に言い聞かせました。そう言い聞かせなければ、ローズが悲しすぎるから。

だいすきでたまらなかった男の子が、お友達から彼氏になって初めて一緒に見た映画。当時でもかなり古い映画で、リバイバル上映されることに彼はすごく興奮していた。けれど、当のわたしは隣でいるだけでドキドキで、初めて見た時は、何度見てもいい映画とか、やっぱりたばこはマルボロやったなあとか言われても、全く内容は覚えていなかった。小さなホールで、横でかきぴーとビールを手に寝そべって見ていた彼の姿がこの映画にはくっついてくる。（よく考えると、当時奴は未成年だったな。）

でも、後で見直すと、ほんとにジャニスのことがよく分かるし、
なんしかベッド・ミドラーという女優さんに圧倒される。
歌を歌いたい、そんな少女の夢が、現実になる。でも、名声とともに、いらない、
汚いものもついてくる。お金や名声の匂いにたかる蝿達。次第に何をしたかったのか、自分は何者なのか、一体、自分は何をしているのか、何が大切なのかが見えなくなってくる。ステージを降りれば、ただのちっぽけな女の子。見ていると、こちらの胃がきりきりしてくる。

自分が、歌いたいからここにいる、と気づいてから、
すごい数のオーディエンスの前に立ち、歌う彼女の姿はとてもまぶしい。
ハーフ・ムーン。
ジャニスのハーフ・ムーン、今聞いても、あのハイハットのタイトさとピアノとからむジャニスのしゃがれ声も素敵。
でも、ローズで聞ける、ベッド・ミドラーのハーフ・ムーンもわたしはだいすき。

映画自体も有名なハズなのに、モデルがいたことや、ステージシーンがあんなに激しいことなど全く知らず、テーマ曲の"The Rose"が有名だったから、という理由だけで借りました。　てっきり、架空の歌手の話で劇中でこの"The Rose"をいう歌を披露してそれがヒットして…ていう感じの話だと思ってました。　ベット・ミドラーは歌が上手だということは知ってましたけど、ステージシーンは本当に鳥肌が立つほど圧巻でした!　あそこまで”スター”になってしまうとああいう生き方しか出来ない…っていうのはある意味悲しいですね。　振り返ってみて幸せな一生だったのか?っていうのを考えてしまいます。　

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映画のはじめの方で、言い争いの中でマネージャーのロッジがローズにこう言います。
「３００万ドルの仕事をホゴにしようっていうのか。仕事なんだぞ！企業と同じだ。『気分が悪いの』『お休みします』で済むと思うのか。みんな必死なんだぞ！」と。
　結局この姿勢、彼女を取り巻くこの環境が彼女を破滅へと向かわせる一端になるのですが、この言葉を聞いたときに私は少しぞっとしました。この言葉は、エンターテイメントの世界に生きる彼女だけでなく、仕事というものを生活の軸においている私たちも縛っているルールだと思ったからです。彼女の場合、「私には歌しかない」。つまり仕事＝自分の存在意義を確かめるモノでした。だからあれだけダイアーが手をさしのべても、あれだけ辛い生活から逃げ出すことができませんでした。でもそれは私たちにも言えることで、だから自分を無条件で受け入れてくれる相手を探し求めているのだとこの映画を見て思いました。
　ローズは他人に与えすぎてしまい、枯れてしまったのではないでしょうか。