我等の生涯の最良の年

戦後のアメリカの抱えた様々な問題を描きながら、良心あるその時代のアメリカが示す、再建、希望、人生への賛歌を感じる、超大作。また、国民的作品とも言えるでしょう。今でも、ベスト１０選出の際は、必ずあがる１本かな。時代の変化で、今観ると、このアメリカ的良心は、いずこへ？と、感じないでもありません。

３月２５日、クラシックな名作の多くが入荷。私も数十年掛けて、コツコツ観てきた作品の多くが入っています。なかなか、全部見るのは大変ですが、心に残る、名作に触れることで、今の映画が、また違ったモノに感じられてくるかも。ぜひ、同時に予約を！

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　いろいろとコメントをいただいていて深謝です、裸足のラヴァースさん。出されなかった手紙には気づきもしなかったのでほとんど感動しましたが、してみると、終戦の翌年すでに作られ、三人の復員兵を主人公にしたこの『我等の生涯最良の年』もまた、『父親たちの星条旗』をつくるに際してのイーストウッドに有形無形の影響を与えているのかもしれません。
　ベトナムはおろかイラク戦争を経験した現在からすれば、この映画が１７０分を費やして訴える、傷ついた兵士たちを地域社会で温かく迎えようというメッセージ、そして三人の復員兵の迎えるハッピーエンドには、はるかな夢物語のような気がしてしまいます。これは物事がシンプルであった時代の幸福な映画、そこに身を委ねるのはやはり心地よいものです。
　故郷の町は、やや物不足とはいえ戦争などなかったかのような繁栄ぶりで、三人に疎外感を与えます。軍では陸軍の軍曹だったフレデリック・マーチは帰還して銀行家に戻りますが、ヒロシマの記憶などどこか精神が不安定。爆撃の名手で数々の勲章に輝いた空軍大尉ダナ・アンドリュースは職探しをするもドラッグ・ストアの売り子に舞い戻る。海軍で乗っていた艦船が沈没した歳に両腕を失ったハロルド・ラッセル（本当に戦争で両腕を失ったそうです）。肉体的にも精神的にも傷ついた彼らが社会に再び溶けこんでいくまでの淡々とした物語は、容易に先の想像がつくものとはいえ、時にユーモラスに、時にシリアスに描いて飽きさせません。マーナ・ロイ、テレサ・ライトといった女優陣も素晴らしいと思います。
　こういう短い文章はある程度ざっくりと評価を断じないと詰まらなくなってしまうのですが、どうにもワイラーの評価が定まらず迷いが出てしまいます。この映画の頃のワイラーの演劇的手法は、引いた位置にカメラを据えて短いカッティングを避け、俳優の演技をじっくりと見せるとともに、パンフォーカスで手前と背後で複数のドラマを同時進行させるので、映画の「どこに注目するか」の選択が観客に委ねられているとも言えます。
　このことは作り手の意識がでしゃばらない、控え目で好感の持てる作品つくりに役立ちます。ことに本作のようなテーマ、登場人物の多いヒューマンなドラマにはぴったりです。
　ですが反面、それは何かを観る者に伝えようという意思の希薄さに結びつきます。ワイラーは優しく、弱い。ジョン・フォードに感じる強靭な意志、ヒチコックのなまめかしさ、たとえばアンゲロプロスやソクーロフや相米慎二に感じるえもいわれぬもの。そういうものが、ワイラーの作品からは漂ってこないような気がするのです。
　僕が本作でもっとも心惹かれたのは、ラスト近く、ダナ・アンドリュースが広大な敷地に並べられ解体されていく軍用機群の中をさまよい、やがて一機に入り込んで爆撃手の席に座り、しばし忘我の状態となるシーンでした。意味はよく分からないけれど感動的なこのシーンの後、ハリウッド的なハッピーエンドがくっついてしまうのは心地よくも残念なのですが、仕方ないところでしょう。６５点。

この映画は、もっと違うことを訴えたいと思うのですが、私はついつい復員兵たちの会話に出てくる「ジャップ」という言葉に気を取られました。

彼らの国の真面目な善良な市民が、私たち日本に的確に爆撃を落とした。どんなに負傷して辛かろうとも、部下を率いて爆撃を続けた。

そして、原子爆弾が落とされた広島で、人々がどのようになっていたかは、現地に行ったアメリカ人は「覚えていない」。

私たちの国の真面目な若者たちも、国のために戦った。彼らの国を痛めつけようと必死になっていた。

この映画を、素直に名作だと喜べない私がいる。観点が良くないのかな。

1946年、アメリカ制作
「趣味は洋画」さんのdiscover usでのコラム「懐かしき１９４０年代の映画「アメリカ編」」で紹介されていた本作。
ウィリアム・ワイラー監督作品ということでとても興味をそそられました。
とても良かったです。

第二次世界大戦に兵士として駆り出されていた普通の男たち。
アル、フレッド、ホーマーの3人を軸に物語は進みます。
戦争に行く前はそれぞれに職業があって、普通に恋をして、普通に家庭を持ち（持つ予定）であり
普通の男たちでしたが、戦地では過酷な体験をしたようです。
現にホーマーは両手がありません。義手をつけているのです。
故郷に無事帰還出来たことは嬉しいことなれど
彼らを戦地で戦った英雄と称えてくれるが
実際に戦場での厳しさを知らない人たちとのギャップは大きく
日常の生活に戻っていくことがなかなか儘ならないのです。
その描き方が実に秀逸で、とても引き込まれ、170分がとても短く感じました。
登場人物が皆一様に魅力的に描かれていて
特にアルの娘・ペギーはおそらく19歳ぐらいなのでしょうけど
とても落ち着いた良いお嬢さんで、好感が持てました。
フレッドと恋に落ちるのでは？という予想は見事に的中し
既婚者であるフレッドとの関係を心底応援したくなったのは私だけではないと思います。
そしてタイトルの如く、彼らが皆幸せな最良の日を迎えることが出来たときは
嬉しくて涙ぐんでしまいました。
感情移入しすぎですかね？(笑)

戦争は体だけでなく、人の心も壊していく魔物。
戦争なんてしちゃいけないんだよ、という熱いメッセージを受け取りました。
アルの高校生の息子の日本に落とされた原爆に対する発言も心に残りました。

何度も涙した。長いのに、滑らかなドラマ運びとなっており、臭みも嫌味もわざとらしさもなく、見事なトーンで全編が進む。フレデリック・マーチとその妻が笑いを伴う安らぎを受け持ち、他の二つのドラマで物語を引っ張る。古き良きアメリカといういった感もあり、温かい気持ちにさせてくれる。