獄門島

市川崑＋石坂浩二コンビ第３弾です。獄門島という不気味な名前の小さな島での本鬼頭と分鬼頭が絡み合う複雑な人間関係の中で発生する俳句に見立てた連続殺人事件がストーリーの柱です。今回は小さな島が舞台なので登場人物もあまり多くありません。ストーリーもそれほど複雑ではないので頭を悩ます事もなく見る事が出来ました。

今回のマドンナは大原麗子なのでしょうね（＾＾ゞ。この作品は珍しく女優さんが多数出演されているので誰がマドンナ的存在なのか迷ってしまいます（＾＾ゞ。司葉子、大原麗子、大地喜和子、草笛光子、浅野ゆう子、坂口良子、荻野目慶子（ちょっとだけ（笑））と豪華絢爛です。皆さん綺麗でお若い（＾＾ゞ。この中ではやっぱり大地喜和子さんの存在感が一番かなぁ〜？あの妖しいまでのお色気と迫力のある演技は出番が少ないものの記憶に残ります。逆に司葉子さんは大事な役所なのですが全般的に地味で印象が薄い感じがしました。大原麗子さんも大事な役所なのですがこれといった印象に残るシーンや演技はなかったように感じました。坂口良子さんは相変わらず可愛い役を演じていました。少女時代の勝野役で荻野目慶子さんが出ていたのにはちょっと驚きでした。

連続殺人事件の犯人の動機は遺言です。遺言を残した人の怨念がそうさせたのかもしれませんが、こんな事ってあるのかな？といつもこの作品を見て思います。戦後直後の島での話なのでそれもありかなとも思いますが・・。その遺言にいつもの人間の業や情念を絡めるあたりは良くできていると思います。

この作品では金田一耕助が「鶯の身をさかさまに初音かな」「むざんやな冑の下のきりぎりす」「一つ家に遊女も寝たり萩と月」この３つの俳句に見立てられた殺人事件だと気づき推理していく様が見所です。お見逃しなきように。

市川昆監督＋石坂浩二の本作シリーズは、安心して観てられますね。
村の因習や複雑な人間関係を絡めて、横溝ワールドのおどろおどろしい世界観を醸しだしています。

「悪魔の手毬唄」では、唄の歌詞になぞらえた殺人現場でしたが、本作は俳句。
子供の頃観た時は、めちゃめちゃ怖かったです。第一の殺人現場では、地面に置かれた釣鐘から着物のすそがはみ出てて・・・あの白痴の姉妹が入ってるに違いない！！　嫌でも想像させられます。ハラハラドキドキ・・・案の定、予想通り釣鐘の中に遺体が・・・死に顔が怖っっっ。しかも添え木が折れて釣鐘が傾いて、首チョンパ・・・余計に怖いわっっ！！！
ジャケ写にもありますが、逆さづりの遺体も怖かった・・・

昭和２０年前後の日本の田舎ってこんなにドロドロしてるんだなぁ、と子供ながらに思ってましたね（笑
ダリオ作品と同じで、本作シリーズも犯人は別にどうでもいい感じです（笑　あっと驚くようなシナリオではありません。恐ろしい雰囲気さえ堪能できれば満足なんです。

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原作は金田一の2つめの事件として、とても重要なポジションを占める作品なのです。昭和12年に「本陣殺人事件」を解決した金田一が戦争から帰ってきて、磯川警部と感激の再会すること、依頼を頼まれたのが復員船の中ということなど、戦争の残した傷をそこかしこで感じさせます。しかしながら、繰り広げられる殺人事件は、実に大胆でセンセーショナル。瀬戸内海の小島を舞台に繰り広げられる本作は、殺人の小道具や俳句の導入など、いわゆる日本古来の要素が巧みに取り入れられた点において、世間に横溝ワールドが決定づけられたのは間違いないでしょう。

で、映画の方ですが、「犬神家」「悪魔」に比べるといささか地味に見えますが、私はシリーズ中この作品が一番好きなんです。まずこれは、原作の力なのですが「見立て殺人」「釣り鐘トリック」というミステリーの醍醐味を存分に味わえること。そして、女優陣が多い作品ゆえ、それぞれの登場シーンが実にあでやかです。素早いカットのつなぎも、前2作よりも一段とキレている気がします。またナレーション代わりに、太明朝のタイポグラフィを挿入するなど、シリーズ3作目ということで、市川監督がノリに乗ってやってる感じがします。事件と事件の合間のほっとひと息するようなシーンも実に楽しい。冒頭金田一は自転車で坂を転げ落ちながら登場するし、床屋の三木のり平のおとぼけシーンも面白いし。これらの笑いの要素は原作にはないですが、映画を観ていると付け足しや無駄とはとても思えず、むしろなくてはならないものに見えてくるから不思議です。

そして、犯人の変更が違和感なく収まっているということ。犯人がね、原作と全然違うんですよ。美人女優が犯人というパターンが見事にハマったため、それを踏襲しているんです。原作の犯人も読者の虚を突くということでは、面白いのですが、映画の方も、なかなかうまくまとめたと思います。また和尚を演じる佐分利信がいい味出してますねえ。世の中を達観視したような和尚の雰囲気にぴったり合ってます。原作で金田一は早苗さんに一緒に東京に行こうと誘うくらい彼女に惹かれています。が、映画では、逆に積極的なのは早苗さんの方で、金田一は控え目です。この辺も市川版における金田一像をシリーズを通じて創り上げた結果の改変でしょう。惜しむらくは、磯川警部との絆が描かれていないことでしょうか。しかし、金田一が去りゆくいつものシーン。今回は船で去っていくわけですが、原作では和尚の跡継ぎが突いていた鐘を早苗さんに突かせるあたり、これまたもの悲しさ倍増でうまいです。

事件解決のヒントでもある和尚のつぶやき、そして殺される三姉妹の日頃の描写、共に現在では倫理上、映像化は難しいかも知れませんね。また「悪魔」が4月公開で、これが同じ年の8月公開なんてのもビックリです。

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前２作と比べると、確かにクオリティが低い気がするけど、私は結構この３作目も好き。
でも、ちょっと観客ウケを狙い過ぎてるかな？
釣鐘で生首が飛ぶとか、やりすぎ。原作にはそんなシーンないし。
しかし、原作の犯人を変更したのは、私としてはＯＫでした。
昔、横溝正史の小説を５０冊くらい読破したけど、監督の市川崑は、横溝正史の作品の世界観を十分理解した上で変更してると感じられるので。
原作の複数犯バージョンも面白いんですけどね。興味があれば小説の方もどうぞ。
そういえば、昔、この映画がＴＶのゴールデンタイムに放映された時、事件解決の重要なキーワードである「きちがい」という言葉が放送コードに引っ掛かるようで、その部分だけ無音になってました。
そのセリフをカットされたら、ぜんぜん意味が分かんないって！と、当時ＴＶにツッコミを入れていた私でした（笑）。

独偏満足度　７２点

監督：市川崑（1977年・141分）
原作：横溝正史「獄門島」

BS放送で観ました。
「不適切な用語・表現が含まれますが、作品のオリジナリティーを尊重してそのまま放送します」との断り書きがありました。
これは、レビュータイトルに使った「きちがい」という言葉を指していますが、
この単語こそ事件の謎解きに必要なのです。
この「獄門島」は、石坂浩二の金田一耕助シリーズとしては、「犬神家の一族」「悪魔の手毬唄」に続く3作目です。
映画の公開は1977年8月27日でしたが、その直前の1977年7月30日から8月20日まで全4回でテレビドラマとして放送されていたらしいです。（金田一役は古谷一行）
そして、テレビと本作とでは犯人が違うのだそうです。
また、ストーリー展開においても原作通りではなく、改変が加えられているようです。
さて、「悪魔の手毬唄」は、（架空の）手毬唄を使った“見立て殺人”でしたが、本作は「俳句」が見立てに使われています。
使われた俳句は、次の三句です。
「鶯の身をさかさまに初音かな（宝井其角）」
「むざんやな冑の下のきりぎりす（松尾芭蕉）」
「一つ家に遊女も寝たり萩と月（松尾芭蕉）」
これらの句になぞらえて、鬼頭家の三姉妹の花子、雪枝、月代（浅野ゆう子）が、無残に殺されます。
一番の衝撃は、雪枝の遺体が発見されるシーンでした。
釣鐘の下から雪枝の着物の袖がはみ出していて、木をテコ代わりに釣鐘を持ちあげてみると雪枝の遺体が出て来ます。
その後、テコが外れて釣鐘が落ちた瞬間、雪枝の首が・・・！
それで、前出の「きちがい」ですが、第一の事件で逆さ吊りの花子の遺体を見つけた時に、了燃和尚（佐分利信）が呟いた言葉なのです。
俳句と「きちがい」を結び付けて考えてみて下さい。