あ・うん

門倉と水田の掛け合いが阿吽の呼吸であることから
狛犬みたいな二人だね、と水田の娘さと子のお見合い相手が言う。
な〜るほど、阿吽とは狛犬の事だったのですね。

門倉役の高倉健さん、映画公開当時58歳。
水田役の板東英二さん、映画公開当時49歳。
二人は寝起きを共にした寝台戦友ということで
年の差は関係なく大親友になったのでしょう。

昭和12年、日本はこれから戦争に突入しようとする頃
軍需景気で会社を経営する門倉は羽振りがよく
サラリーマンで転勤族である水田一家を
いつも気にかけていて、何かと面倒を見ています。
二人の関係が男の友情から来るものなのかと思っていたら
水田の妻・たみを想うあまりの行動であることがだんだん判ってきます。
プラトニックラブです。
水田との友情を壊してはいけないと
たみへの恋心をひっそりと心に秘める男を健さんが渋く演じています。
なんたって、水田の妻たみを演じるのは富司純子さんですもの。
美しくて、慎ましくて、しっかり者、それでいてちょっと抜けている所もある
可愛らしい妻を見事に演じていました。
水田を大切に思いながらも、門倉に淡い恋心を抱いているたみです。
そう、実は両想いなんですよね。
でも、恋心を尊敬と友情に変えて
家族のように門倉を温かく包み込むたみは女性としてあっぱれです。
でもちょっとズルいかなぁ。。。生殺しっぽくて(笑)

この3人の絆は永遠に続くのでしょう。

なんと24年前の作品でした。
家の掃除をしている男性が始まりの映像。背の高いガタイのよい男性が誰だか分らなかった。
なんと高倉健さん。今の健さんしか知らない私は、本当に高倉健さん？とジ〜ト観てしまいました。
今の健さんとは違う、女ったらし役でしたが、恰好よかったです。母も、昔の健さんはこんなチャラケタ役もしていたんだ。
なんて呟く。
中小企業の社長である門倉（高倉健）と会社勤めのサラリーマン水田は戦友。水田の妻にあの藤純子さん。その後改名されて富司純子さんになっていた。
この妻民子だったと思うを門倉は密かに思いを寄せていた。それを知っている水田。それをいいことに門倉に無心する水田にちょっと人間の醜さを感じた。
しかも水田役にあの坂東英二なので、はまり役と言えばはまり役。その娘役に富田靖子。普通の家の娘なのに、門倉のお蔭でどこのお嬢様と言う生活を送っている。
ただ、この映画を観ていて家族ぐるみ（水田）で門倉にヒルのように吸い付くさまが観ていていい気分はしない。
人のよい門倉。その妻役に大好きな宮本信子さん。信子さんは蚊帳の外で可哀想…。
ま、お時間ありましたらそんな人間関係をお酒を飲みながら観賞して下さい。そんな関係が嫌いな方にはお薦めしません。

「あ・うん」（1989、東宝、カラー、114分）。
監督は降旗康男、脚本は中村努、撮影は木村大作、音楽は朝川朋之。
原作者の向田邦子さんは、今年2021年が没後40年（1981年8月22日没）。
2021年11月10日は健さんの７回忌、2021年11月28日は邦子さんの生誕・満92年。
「三角形」と言うと、ロベール・アンリコ「冒険者たち」のドロン、ヴァンチュラ、シムカスのことが浮かびますが、この映画も邦子さんの冴えた原作、健さん、板東英二さん、富司純子さんの共演、降旗監督の演出もなかなかの名作に出来あがっています。漱石原作「それから」と森田芳光の同名映画（松田優作、小林薫、藤谷美和子）も三角関係を描いたものですが、三角形が完成しません。
1937（昭和12）年の春の東京。大陸での紛争は拡大しています。「水田仙吉」（板東英二）と妻「たみ」（富司純子）、娘「さと子」（富田靖子）の一家は、「門倉修造」（高倉健）が探しておいた二階建の借家に辿り着く。「水田」は転勤の多い製薬会社員暮らしを質素に続け、３年半ぶりに東京に戻った。「門倉」は中小「金属工業」社長、軍需景気で一見裕福だが遊びが派手で、妻「君子」（宮本信子）との関係は冷えている。「門倉」、結婚前の「水田」と「たみ」は、20数年前、美しい三角形を成していたのだった。「たみ」は「門倉」が好きだったが、「門倉」はなぜか（肺病のため？）遠慮し、親友「水田」に「たみ」を譲ったようだ。（ここは「それから」に似ています。）
「さと子」は「君子」の紹介で、帝大生「石川」（真木蔵人）と見合いする。「石川」は、「門倉」と「水田」を「阿吽（あうん）」のようだと形容する。「水田」は肺炎になった娘「さと子」に、昔の三人の思い出の籠もる詩集を渡す。
このあと様々な事件が両家に巻き起こる。「水田」が「部下」（？）の「5000円」使い込みの補填を「門倉」に頼み、彼は都合するが、実は彼の会社も破綻の危機にあった。さらに、「門倉」が紹介した神楽坂の芸妓「まり奴」（山口美江）に「水田」が入れあげ、「たみ」を苦しませたので、「門倉」と「水田」は絶交する。
「ヴェルレエヌ詩集」（堀口大學・訳）が上手く使われています。「さと子」が「みんな本当のことを言わないで生きている」……「巷に雨の降るごとく」と言うと、「門倉」は「わが心にも涙ふる」と応えます。
結局、三人は心離れがたく生きていきます。「阿吽」は神社の狛犬や寺門の仁王の一対像で使われてきた形です。「阿形」は口を開けて何かを叫び、「吽形」はその叫びを「ん」と吞み込むように口を閉じています。「阿吽の呼吸」の語源で、一方が欠けては両方が生きられない二辺。もう一辺の「たみ」は観音様でしょうか……。

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健さんの映画は　任侠物を含めて大概観ているのですが　この作品は何故か後回しになってしまいました。

それはねぇ　ばんどーさんの濃ィーキャラが生理的にあきまへんねん。

純子さんも靖子ちゃんも好きなんだけどねぇ。

映画としての感想は　漱石の「こゝろ」のような　親友との友情とその妻に恋心を抱くという微妙な三角関係をモチーフにしたシナリオの流れでジトッとした重く陰湿な空気が羊羹みたいにネチャっとしている昭和の映画！

物悲しい重厚な質感と婉曲的でもどかしい様な昭和の芳香は嫌いじゃないけれど　やっぱり“ばんどーさん”が気になって…

クライマックスシーンの「今晩　帰ってこなくていいよ！」っていう健さんの台詞！
これだけで観た甲斐がありました。

宮本信子さんの役柄って　一番気の毒なような・・・

男らしい恋だなあ