獲物の分け前

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　それでゴダールの『女と男のいる舗道』などを思い出しながら、この『獲物の分け前』を観てみると（テレビ以来十数年ぶりだ）、ロジェ・ヴァディムは美しい女優を撮っているけれども、映画の中で美しく輝かせることができないのではないかと思ってしまいます。確かにこの映画でも、ジェーン・フォンダは若く溌剌として、つややかな肌、ヌードも滅法美しいです。フォンダはどこまでも美しいのですが、彼女が演じるルネという女性は、あまり魅力的に見えない。ですから、あまり官能的ともいえません。
　ルネの夫（ミシェル・ピコリ）もその息子マキシムも、男たちはひじょうに幼児的なところがあって、酷薄です。女性の美には惹かれるが、心の深いところでは愛情を持たない男たちは、ヴァディム自身の投影なのではないでしょうか。
　映画は若く美しいフォンダを汚すことに一生懸命なふうがあります。冒頭から、ダイエットにいそしむフォンダの下半身を覗きやすい位置にカメラをおいて、女優に多対する敬意というものを知りません（自分と関係があるからいいということでしょうか）。義理の息子との関係を持ってしまう場面では、はがれおちそうなパックを顔に付けたままだし、ラストの仮装パーティでは池に飛び込んでずぶぬれになり、髪は崩れ化粧もはがれおちたフォンダをこれでもかと見せつけます。
　こうしたフォンダの汚し方が、映画を豊かにしているのならいいのですが、魅力的な人物を描けていないために、どうにもヴァディムのややサディスティックな自己顕示欲の表れに過ぎないのではないか、と思ってしまうのです。
　金持ちの屋敷の風俗描写もいまとなっては冴えない感じで、退屈を重ねていたように思えた映画が、その仮装パーティの場面でやおら息を吹き返したように思えます。そして正直なところ、ラストの暗い部屋で呆然と座るフォンダのカットにはなかなか魅力を感じたのも確かですが、トータルではあまり評価できない作品というほかありません。30点。

実業家アリスティッドの後妻ルネは、美容と社交中心の生活を送っていた。
夫が留守中のある晩、彼女は義理の息子マキシムと関係する。
戯れのように始まったこの関係に、ルネ（ジェーン・フォンダ）は溺れていく…

ロジェ・ヴァディム監督作品。撮影監督はクロード・ルノワール。
エミール・ゾラ原作「獲物の分け前」を映画化。
守銭奴の夫と義理の息子に翻弄される若妻ルネの運命を描く。
時代設定は19世紀から1960年代に変更されている。
30代の美しい義母が、大学生の義理の息子に夢中になる。
愛し合う二人の姿が延々映し出され、正直、腹一杯である…
しかし、マキシムと銀行家の娘の縁談が浮上、苦悩したルネが行動し物語が動く。

資産家の娘ルネには財力がある。アリスティッドが彼女と結婚した理由はそこにあった。
自己資産を持つルネの生活は無為だが贅沢で、屈託無かった。
野心も夢もないマキシムの刹那的な暮らしを支えるのは、親の財力である。
マキシムの縁談は、アリスティッドの事業拡大が目的だ。
登場人物には、常に金の臭いが付きまとう。
終盤、ヘアサロンを訪れたルネは長い髪をカットする。
マキシムが好むショートヘアになったルネの脳裏を去来するのは、マキシムか、それとも金か…

当時、ヴァディム監督夫人だったジェーン・フォンダ。とても美しく撮られていた。
華やかなドレスだけでなく、裸身に毛皮のコートや薄物を羽織って魅惑する。
居室と浴室が一体化したルネのゴージャスな部屋、緑が生い茂る温室は原作小説を思わせる。
マキシムの婚約者アンヌ（ティナ・オーモン）の蠱惑的な顔立ちが印象に残った。
シタールの妖しい音色が響く音楽も良い。

マキシム（ピーター・マッケナリー）に魅力がない。
失敗したビートルズみたいな髪型が面白い。
当時の流行だったのかもしれないけど。ごめんなさい。申し訳ないです。
長い手足を持て余しているようにも見えた。
「ニグロ」「黄禍」発言、中国語講師への舐めた態度も不快だった。
ちなみにマキシムの自室は中国風で、仮装はモンゴル皇帝だった。
東洋趣味ってヤツね。ふーん…

人の冷たい部分が浮き彫りになる。
義母と息子の不倫の関係なんて危ない設定で、
当然夫は気付きながらも、問い詰めない。
離婚したいという妻の財産を事業につぎ込む冷たさや、
じわじわと真綿で首を絞めるような復讐を果たす怖さ。
そして息子はもう少し愛に純粋なのかと思いきや、意外にも
流れに逆らうことの出来ない根性無しで更に打算的。ボンボンだからか？
勿論、大前提で不倫はいけない。
しかし、全ての人に平等に罰が当たるのではなく、最後には
ルネ一人だけに罰が下っているようで女性蔑視的。

・ロジェ・ヴァディムは魅せてくれますね！ジェーン・フォンダの柔らかでとろけるような肢体は、すばらしいソフトポルノ、あるいは、それ以上かも。