奇人たちの晩餐会

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これぞフレンチコメディの王道、といった感の作品です。それに80分という短さがいい。あー、おもしろかった。で気持ちよく終われます。

まず、エリートたちがバカな奴を呼んで、そいつを種にメシを食うってのが、これぞフランスってな設定。もちろん、呼ばれたバカな奴はなぜ自分が呼ばれたのか知らないのです。そして、ピニョンの登場。ピニョンって、名前がもうバカっぽい。ピニョンを演ずるのはフランスの有名な喜劇役者ジャック・ヴィユレ。この人のために脚本を書いたらしく、当たり前ですがはまり役です。

この設定からして、「バカを笑う奴が、いつのまにか立場が逆転して…」というストーリーは誰でも思いつくでしょう。そういうこちらの予想を見事に叶えつつも、しっかり笑わせてくれます。ドカンと大笑いではなく、クスクス笑い。最初は観ている私たちは、ピエールの視点でピニョンを笑っているのです。ところが、おバカなピニョンがふと発言する人生の真実や純粋な人間性を観ているうちに、いつのまにか私たちの視点はピニョン側に移動していく。このあたりがすごくうまいです。

そして、私たちもピエールみたいに傲慢な人間なんじゃない？とちょいと皮肉られているようで、このあたりの説教くさくなく、でも人間ってのはね、と語りかけるような展開がまたまたおフランス的。すばらしい。

ジャック・ヴィユレ。
初対面は『ピエロの赤い鼻』。
涙がこみ上げてくる微笑を体感させてくれた丸い円い俳優さん。
まるいんですけど転がっていかない、
図太さと愛らしさがフレンチコメディの王道を闊歩してくれるのがこの作品。

こっちに来ないでって追い払いながら、出口でちょっと待ってよって引き止めてしまう、
そんな自分にイライラしながら笑えるのは、フランソワ・ピニョンだからこそ。
喜劇俳優ではないほんまもんのシリアス俳優かも…と思います。
これからその本領発揮、ヴェベール監督作品の違う物語でヴィユレの
”フランソワ・ピニョン”シリーズが続くだろうちょうどその時の急逝が（５３歳）惜しまれます。

ボンッと破裂するような”腹を抱えて大笑い”コメディではなくて、
ブラックに近い濃厚ピンクにお洒落なシニカルレースのランジェリーで、
罪悪感と嫌悪感をつつきながら迫ってくる…
それが美女でなくて転がらないまるいピニョン…これがフレンチコメディかなと思います。
優越感と罪悪感が混然としている若い未熟な頃は、こういうの観るといらいらするだけでした。
バカをバカにできない、したらだめですっていう自分が堂々と居ましたから。
バカにもなれない半端なオノレを自覚できるまで成長？した今は、クスクスと爽やかに笑えます。
ネタからこぼれる笑いの”オチ”を楽しめます。
もとは舞台劇。
バカにも何にもなりきれない小さな庶民のそのまんま、大勢の観客と観劇できたら、
極楽上戸だろうな。

面白すぎる。笑いすぎて苦しかったです。アメリカのくだらない下ネタよりよっぽど面白い。コメディ最高傑作かも。

ジャック・ヴィユレの出演作の
「クリクリのいた夏」や「ピエロの赤い鼻」が良かったので
この作品も見てみました。

「クリクリ・・・」や「ピエロ・・・」は感動作だったのですが
これは全然毛色の違う作品のようで・・・
長い長いコントを見ているような感じでした。

ジャック・ヴィユレ演じるピニョンが悪趣味なブロシャンの開く
バカな人を招いて笑いものにする晩餐会のゲストに選ばれて・・・
というドタバタ劇です。

ピニョンは所謂空気が読めないタイプ。それもかなり重症。
でも、その彼を笑いものにしようとするブロシャンは
空気を読もうとしない人。

他人を貶めようとする人は、いつか人に貶められるということなのですね。
人を笑いものにしようとする人間は、それだけで充分に大ばか者だった、
というわけなのです。

フランスらしい皮肉たっぷりのコメディです。
かなりバカバカしいですが、面白かったです。
ジャック・ヴィユレはなんだか憎めない顔をしていて
この役には最高にはまり役でしたね。

３年ほど前に見た時、お腹がよじれてしまいました。今は、戻ってますが・・・笑いすぎて、涙が出ちゃう、そんな感じの作品です。
ハリウッドでリメイクとか？やめて下さい。この作品で充分です。
これを見たら、ぜひ新作『女はみんな生きている』を見てね。
カトリーヌ・フロが、大活躍してます。未見の方は、ぜひぜひ！