ミス・ブロディの青春

この映画をみて最も印象に残ったのは、‘ブロディ親派’を自認する女生徒４人組です。
ブロディから絶大な信頼を得ているサンディ（パメラ・フランクリン）、ユーモアに富んだモニカ（シャーリー・スティードマン）、気品と落ち着きのあるジェニー（ダイアン・グレイソン）、そして吃音癖のあるメリー（ジェーン・カー）です。
皆、それぞれ個性的で可愛い。
主人公ブロディを演じたマギー・スミスは、本作で見事アカデミー主演女優賞を獲得、彼女の演技の上手さは折り紙つきで、本作以外にも７８年「カリフォルニア・スイート」でアカデミー助演女優賞を受賞しているほか、６５年「オセロ」や、８５年「眺めのいい部屋」、０１年「ゴスフォード・パーク」など、オスカーノミネートの常連です。
このＭ・スミスの演技に負けずとも劣らない、女生徒４人組の、可憐さ、愛らしさ、憎々しさです。　Ｐ・フランクリンを除いては、後年、特に目立った活躍はないようですが、皆さん今頃どうしているのでしょう．．．現在、６３歳〜６５歳くらいかと思います。（Ｍ・スミスは７９歳のはず）
美術教師のテディを演じたロバート・スティーブンス（７０年、シャーロック・ホームズが有名）ですが、６７年〜７４年はＭ・スミスと実夫婦でした。（後年、離婚）
女子高の事務員ミス・ガーントに扮したアン・ウェイ。　独特な‘顔’で台詞なしの演技、微妙な雰囲気をもった女優ですね。
英国らしいおちついた雰囲気を醸し出す映画でした。

自分の流儀を貫く女教師の物語。ミュリエル・スパークの原作とあって人間の心の動きがひしひしと伝わってきます。
いつの時代であっても、どこの国であろうと、人間の深層心理は似通ったものがあるということが確認できた人間観察、人間描写の優れた作品。
確固たる信念を持ち自己の理想に忠実に生きる人、自分の欲望を隠さず妻帯者であるにも関わらず独身の女教師や女性徒にかまわず手出しをする輩、
恋愛に臆病な大人、あまりにも純粋な少女などなどの生々しい登場人物と自分自身を比較したり、
自分がこれまでの人生で関わってきたきた人たちをあれこれ思い出してしまいました。
主人公の女教師ミス・ブロディの授業の様子を見ていて、高校時代の古文の先生で、
たまに50分ほどの授業時間すべてを使って自分の政治観を延々としゃべる先生がいたことを思い出しました。
自分の考えを押し付けるのではなかったので、古文の授業よりもずっと面白かったなあと、そんな記憶がよみがえります。
この映画での生徒も高校生で、物の分別は自分でできる年なので、
ブロディのような偏った考えであっても自分で咀嚼・反芻できるのかなと思います。
ラスト近くで生徒のひとりがブロディに意見を強烈に述べますが、よくぞ言ったと私は感じました。
言い過ぎと思われる方々もいらっしゃるでしょう。観方、考え方の違いがあって当たり前。
自分とブロディ、あの人と美術教師、この人と女性徒などなど、自分や周囲の人たちを登場人物とつい比べてしまう、そんな映画でした。
佳作。

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面白かった。古めの映画を適当に借りたうちの一つですが、予備知識もなく期待もしてなかったのにもの凄い見応えのある作品でした。
ハリウッドや日本のドラマでは一方的に賛美されそうな主人公ですが、冒頭からなにか違和感があり見ているうちにどんどんつのっていって最後に爆発するという…その様を淡々と描いています。
ラストシーンの涙をこぼしながら歩く少女が印象的でした。彼女は決して対立したかった訳ではないような気がします。
製作はイギリスとの事、日本やハリウッドでこの手の映画は作られないんでしょうね。

検索してみたらこの映画でのファシズム云々について論じられてる方も結構いらっしゃるようですが、あくまで背景の一つなので興味を感じて論じるのも自由、気にしないのも自由でしょう。
私自身はそういった政治状況や教育について語ろうとした映画ではないと思います。あくまで一人の人間とその周囲の関係性を描いたドラマだと。
説明文の欲求不満から云々も余り関係ないような…、作中罵倒のようにそういわれるセリフがありますが、むしろタイトルや開始早々のセリフにあるように、自分の青春はいつまでも続く自分は盛りのただ中にいる、自分は教師であり指導者であり主人公であるという全能感から抜け出せなかった思い上がりぶりが問題だったように思います。