掠奪された７人の花嫁

「掠奪された七人の花嫁」はいい。「ブリガドーン」に同じく一部を除くとスタジオで撮影されたシネマスコープサイズのミュージカルなんだけど、スタジオ撮影、シネマスコープという特性をミュージカルという題材によって非常にうまく使いこなしている。何が違うんだろうと考えたんだけど、「掠奪」は「ブリガドーン」に比べ喜劇の色合いが強いのだ。いや強いと言うよりも全編これ喜劇と言って良い。その踊りも立ち居振る舞いも喜劇的な、すなわち映画的な楽しさに満ちている。素手の殴り合いが延々と続く様のなんと美しいことよ。やっぱり映画の「決闘」は素手の殴り合いに限る。

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せっかくなのでミュージカルの名作を連続鑑賞。
かなり「濃い口」の本作は、なんと５０年前、力道山・木村組が、シャープ兄弟と激闘を繰り広げている頃に公開された作品です。

山奥の男所帯に、半ば騙されて嫁に来てしまった町娘ミリー。彼女は、旦那を含め７人の粗野な兄弟の世話をすることになります。生活の中、野人兄弟にマナーやダンス、女性の口説き方をレクチャーしてゆくミリー。やがて、愛（？）に目覚めた兄弟は、自分達も嫁が欲しいとばかりに町から娘を拉致してきて、結婚を迫るという暴挙に！娘達を取り返しに、町の男衆が武装してやって来ます…そしておとずれる驚愕のラストシーン！…

ストーリー展開の強烈さと、それに反して、やたら牧歌的な画作りに「こ、これでいいんですか？」と、唖然とせずにはいられません。

当時まだ、米映画界に於いてミュージカルはメジャーな位置にあったと思われますし、本作はオスカー（ミュージカル映画音楽部門）も得ています。当時の一般のアメリカ人はこれを許容したんだという、その事実が興味深かったりします。

もちろん現代の我々が観ても、ミュージカル映画としては充分楽しめる出来になってます。中でもスゴイのが、兄弟達と町の男衆が、フォークダンスで女性を奪い合うシーン。単なるダンスの域を越えダンス・バトルへと展開していきます。（アメリカ人って、いつの時代もこういうの好きね…）それはもはや役者の業ではなく、体操選手のそれにしか見えません。６分間の激闘を観終えた時には、「…ほおぉ…」と嘆息をついてしまうことでしょう。

色んな意味で、今後作られないであろう映画です。ミュージカル好きは、観ておいて損は無いかと♪

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最初から最後まで、強引なストーリーに度肝を抜かれる映画です。

タイトルに偽りなしというか、「やつは・・・とんでもないものを盗んでいきました」みたいな比喩的表現でなく、まんま掠奪ガチ拉致監禁。女性もまんざらでもなさそうなのがまた驚きです。

原始時代は、嫁にしたい女性を殴り倒して巣穴に運べば婚姻完了だったそうですが、ちょっと前のアメリカでもそんな感じだったんだー・・・知らなかった！　すごいよアメリカ！

ストーリーはさておきまして、ダンスシーンがとにかく痛快。踊っている人たちの中には、ウエストサイド物語でリフ役を演じた人と、トミー・ロールが混じっています。とびきりの身体能力を堪能。すばらしい！
それと拉致られた女の子のなかで、ひときわ小さい子もぐるぐるしていてかわいかったです。

さて振り付けのマイケル・キッドについて。
この人の振り付けはエネルギッシュで詩的で、見ていてうっとりしてしまう。大好きです。ｗｉｋｉによると２００７年に９２歳でなくなったそうで、わりと最近まで活躍していた人なんですね。どんな人だったんだろう。バレエ畑の人だったってのは間違いなさそうなのですが、詳しいことはわかりません・・・もっと英語力があれば色々調べられるのかな。

特典のメイキングもとても楽しめました。
もし昔のミュージカルに興味がある方なら、押さえておくべきおすすめ映画です。
ただ、痛快ミュージカルシーンだけ楽しみたい、という方は、ザッツエンターテインメントを見ればＯＫ。ダンスに限れば、見所のほとんどのシーンはザッツエンターテインメントで紹介されています。後半の、女の子たちがバレエを踊るシーンだけ、入っていなかったように思います。


とりあえず調べられた、彼が関わった映画リスト
ディスカスさんに在庫アリのものは◆　ナシのものは□(2009年8月現在)。

□1937年　Another Dawn　詳細不明
□1952年　Where's Charley?　レイ・ボルジャー
◆1953年　バンド・ワゴン　アステア＆シド・チャリース
□1954年　あの手この手(Knock on Wood)　ダニー・ケイ
◆1954年　掠奪された七人の花嫁
◆1955年　野郎どもと女たち
□1958年　僕はツイてる(Merry Andrew)　ダニー・ケイ
□1959年　Li'l Abner　詳細不明
◆1968年　スター！　ジュリー・アンドリュース
◆1969年　ハロー！ドーリー　バーブラ・ストライザンド　
□1978年　ブルックリン物語(Movie Movie)　監督スタンリー・ドーネン

見たこと無いのがいっぱい！
特に見たいのが「Where's Charley?」
レイ・ボルジャー(オズのかかしさん)のパフォーマンスをぜひ確かめたいです。

あと「いつも上天気」という映画ではなんと本人も踊るそうで、競演はジーン・ケリーとシド・チャリース！　見たい。心から。どうすればいいんでしょうか。

掠奪された七人の花嫁（１９５４年・アメリカ、カラー、１０２分）

ＭＧＭミュージカルの傑作の１本ですが、本作の最大の見どころは、マイケル・キッド振り付けのアクロバット的な群舞シーンでしょう。
しかもシネマスコープの大画面で作られているため、当時の劇場で観た人は、ダンスの素晴らしさに感動したと思います。

１８５０年代。オレゴン山中の農場で、男ばかりの７人兄弟が暮らしていた。長男のアダム・ポンティピー（ハワード・キール）は町へ出かけていって、首尾よく料理店の女ミリー（ジェーン・パウエル）を口説き落として連れ帰った。ミリーは荒々しいアダムの弟たちにびっくり仰天、しかも家の中は散らかし放題で、すっかり興ざめしてしまう。しかし気を取り直して一生懸命に働くミリーを見て、弟たちも次第に感化されていく。ある日、ミリーは弟たちを連れて町へ買い物に出かけたが、些細なことが原因で喧嘩や大乱闘を引き起こした。見かねたアダムは、古代ローマの掠奪結婚を入れ知恵し、弟たちは早速、意中の相手である娘たちを連れ帰ってきた。ところが、ミリーはこの野蛮な行為に大憤慨する。

なんとも単純なストーリー展開ですが、スタンリー・ドーネン監督の ‘ミュージカル魔術’ にかかればガラリと作風が変わるから不思議です。
本作の成功によって「西部劇ミュージカル」なる言葉も生み出されたほどですから。
因みにドーネン監督のミュージカル映画といえば、「雨に唄えば」（５２年）を筆頭に、「踊る大紐育」（４９年）、「パリの恋人」（５７年）などがあります。

本作が公開された１９５４年には、数多くのミュージカル映画の傑作がありました。
全米興行成績で第１位に輝いた「ホワイト・クリスマス」、「スタア誕生」、「ブリガドーン」、「カルメン」、「ショウほど素敵な商売はない」、「ローズ・マリー」等々。
本作「掠奪された七人の花嫁」も全米興行成績では第９位に入っていましたし、アカデミー賞では作品賞にノミネートされています。

又、３５分間のメイキング映像は必見です。
スタンリー・ドーネン監督をはじめ、主演のハワード・キール、ジェーン・パウエル、共演のラス・タンブリン、ヴァージニア・ギブソン、トミー・ロール、ルタ・リー、更に、振付師のマイケル・キッドらのコメントが視聴できます。

本編シーンのなかで、「椅子取りゲーム」を楽しんでいる場面がありました。
発祥はアメリカ？　それとも？　そして、いつ頃からなのでしょう．．．。

ロキュの69日連続レビュー　�V　　第6日

特殊音で始まる題名の映画　　「　リャ　」

( ネタばれあり　)
Discasさんのイントロはあらすじ書き過ぎで、完全ネタばれに近い・・・困ったもんだ。(笑)
南北戦争前の西部開拓時代のおはなしで、邦題はいささか乱暴な内容を示唆しているが、原題は「　Seven Brides For Seven Brothers 」(七人兄弟に七人の花嫁)とさすがに穏便なもの。　　　　　

まあ、でも、「　傲慢で粗野なオレ様男が、美女を自分のものにして支配しようとするが、頭のいい女に逆に教育( というか調教　)されて逆に意のままにされてしまう　」(笑)というのは、古典的なラブ・コメディーだし、ミュージカル全盛時には黄金のお約束パターンでもありました。　　　　　
　たとえば『　マイ・フェア・レディ　』しかり『　サウンド・オブ・ミュージック　』しかり、『　王様と私　』しかり。　　『　美女と野獣　』もそうかな。
　本作もその好例。　　　たわいもないお話と受け流してほしい。

　主演はハワード・キール( 　フレッド・アステアやジーン・ケリーが踊るスターにたいして、ええ声の人　)とジェーン・パウエル。
　兄弟の一人にラス・タンプリン。　『　ウェスト・サイド物語　』のリフ( マリアの兄)役で知られ、「　ツイン・ピークス　」にも出ていました。

　監督はスタンリー・ドーネン。　ダンサー、振付師出身。
　ジーン・ケリーとの共同監督作品に『　踊る大紐育　』『　雨に唄えば　』
　単独の監督作品に『　恋愛準決勝戦　』『　パジャマゲーム　』『　くたばれ　!　ヤンキース　』『　パリの恋人　』などのミュージカル映画があるが、一般の人には『　シャレード　』が一番有名かな。
　1998年アカデミー名誉賞を受賞。授賞式で74歳にして歌ってタップを踊って見せて、会場総立ちで喝采を浴びました。　　粋な人です。

　本作の一番の見どころは、山男の兄弟たちが、町の娘たちにアピールするため、町の男たちと繰り広げるダンスバトル。　　映画史に残る名場面です。
　個人的にはミュージカル映画10には外せないと思うし、実際世評は高い。

　強力おすすめの作品です。