彼奴（きゃつ）は顔役だ！

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　　モノクロに浮かぶ硬質なワーナーブラザーズのトレードマーク。摩天楼を背景に電飾であしらわれたタイトル。邦題からはいかにもなギャング映画を想像してしまうけれども、原題は“The Roaring Twenties"　。怒涛の20年代とでも訳せるだろうか。映画を観る悦びに浸れる、パワフルな傑作だ。心うつドラマ、俳優の魅力、セットや衣装などのスペクタクル。何年かおきに繰り返し観たくなる。
　第一次大戦の最前線、塹壕に隠れている兵士の頭の上に、別の兵士が飛び込んでくる。しばらくすると、もうひとりが飛び込んでくる。ほとんどコメディのような出会いで始まる三人の男の物語だ。彼らは戦後20年代のアメリカという、禁酒法から大恐慌へいたる狂騒の10年を、ニュース映画風の硬質なナレーションに乗って、疾風のように駆け抜ける。
　帰還した社会に馴染めない三人の元兵士といえば、『我らが生涯最良の年』や『父親たちの星条旗』がすぐに思い浮かぶ。この映画はきっと、そのように様々な作品に影響を与え、盗まれてきた。独断ではあるけれど、最も強くこの作品にオマージュをささげているのは、アメリカ映画狂としても知られるセルジオ・レオーネの『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』ではあるまいか。レオーネのセンチメンタルも悪くはないけれど、この映画は数段格上である。
　戦場で出会った男たちは、死の淵で夢を語り、かすかな友情を育む。優等生なひとりは弁護士になり、ひとりは確信的に暗黒街を目指し（ここでは脇のハンフリー・ボガート）、市井の幸福を求めたキャグニーは、社会に受け入れられず、不本意ながら裏街道を歩むことになる。
　切ないのはキャグニーの純な恋だ（このような純粋さをいま表現することはとても難しい）。ラオール・ウォルシュは、報われない恋情を抱えた男女を主人公にした映画を何本かとっているけれども、自分の感情を抑えて恋する相手に尽くす様を淡々と描き出した本作の切なさは際立つ。ただのギャング映画というより、心うつ青春映画でもあると感じるのは、そういうところのせいかもしれない。８５点。

キャグニーの演技のキレは只事じゃないです。動きキビキビ。ヒーローになる前のボギーの卑劣さも良かった。話としても納得。映像もシャープ。名作。

第一次大戦も終盤にさしかかったころのフランス戦線で、３人の男が米国へ帰還後の生活を語り合っていた．．．しかし、夢と現実のはかなさの中に生きながら、３人それぞれの人生と闘いが始まる．．．アメリカの禁酒法時代から大恐慌時代。まさにこの時代、俳優から監督と映画の青春を生きたウォルシュが、共感と冷笑を込めて描く、米国の‘バブル’史。落ちぶれてからのキャグニーの惚れ惚れする侠気。そして映画史に残る‘雪’のラストシーン．．．。３０年代ワーナー・ギャング映画の素晴らしい決算でもある。