新しき土

いくら地震に慣れた日本人でも、火山性地震の中で何食わぬ顔して食事はしないよ。なんていう突っ込みどころは満載ですが、アーノルド・ファンク監督は世界の山岳映画の開拓者なんですね。火山が秘めるエネルギーと日本人を重ね合わせる発想などはそういうところから来ているのかと納得です。

映画はドイツ人監督が感じ取った日本の風情を綴っていますので、その捉え方が滑稽であったりするのですが、日本人監督では考えられないような感性があり、それが非常に新鮮に感じられます。たとえば何ショットも重ねられる富士山の遠景ショットなど、そのアングルは今まで見たこともないような捉え方もあるんですね。
また、揺れ動く光子(原節子)の心象風景を、監督が感じ取った日本の情景と重ねて語ったりしますので、新鮮な瑞々しさが重なり合うんですね。今で言うPRV的なカットの刻みによるモンタージュだったりと、原節子のイメージPRV的な一面も感じられなかなか面白いです。

作品的にはいい出来とは言えませんが、ちょっと他では得られない新鮮な感覚が感じられて、そういう面では大いに見る価値ありじゃないかと思います。
またDVDに付録している「プロダクションノート」には当時の企画から撮影、公開に至るまでのちょっとした裏話も記載されていますので必見です。本作はアーノルド・ファンク版「サムライの娘(ドイツ語題名)」だそうですが、伊丹万作版も現存するなら是非見てみたいですね。

　お勧め外れなし第２弾は何と言っても「ケチケチ」さん　この人のレヴューは私共とはレベルの違いを感じてしまいます　この映画の存在を知ったのはＮＨＫのドキュメンタリー　国策と映画の役割を扱ったものだったと記憶しています　「新しき土」とは満州のこと　現在の中国東北地区のことですね　ご案内のごとくドイツ人監督アーノルド・ファンクは山岳映画が専門　山岳映画？とは何ぞやとも思ったが御覧になればわかるようにパナヴィジョンなんかない時代に岩肌にかかる水しぶき　阿蘇山の自然　など確かにあれは専門家の技です　

　日本の描き方は変の一言　阿蘇山の近くに住んでいて庭のそばに厳島神社があったり　東京のはずが関西の電車が走っていたり目茶苦茶　「ケチケチ」さんご指摘の如くいくら地震国でも電気の傘がゆれるような凄い地震で酒なんかのんびり飲んじゃいられません　留学帰りの小杉勇　チンチクリンに変な長髪　西洋かぶれ丸出しで百姓家のせがれがオープンカーを乗り回し婚約者がこれがもう可愛いー原節子　義理の父は早川雪舟　撮影所の踏み台（セッシュウ）として名を残す国際スターだが　生粋の日本人としては箸の使い方が下手なのが気になりました　この留学帰り　どこに不満があろうかというのにドイツ人女性との恋の悩み　みんな別荘があって　外国に留学して　みんなピアノが弾けるうえに恋の悩みと言う韓国ドラマみたいです　日本もあんなに背伸びしてたのですね

　さて本作はれっきとした国策映画　ナチスドイツは新しい盟友日本を自国に快く迎え入れる為企画されたものでレネ・リーヘンシュタール監督の民族の祭典など国策と映画は切っても切れぬ関係にあった時代　この後結ばれた日独防共協定　日独伊三国同盟　など我が国は戦争への道をひたすら辿っていくことになります　

　最大の失政といわれる満州移住計画の最中で喜び溢れる移住者は結局軍隊に守られてのものであったことがこの映画の最後で語られています　永久凍土の下に眠る多くの英霊　中国残留孤児の問題を生んだ満州移住計画があたかも明るい未来の如く語られる本作はやはり必見の一本だと今更ながら思うのです　　　

　

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イントロダクションより引用
『伝説の女優・原節子の国際デビュー作となった日本初の合作映画』だそうです。
ドイツ語を話す原節子さん、なかなか堂に入ってました。
やはり祖母が懐かしそうに見ていました。祖母が居る間は、古い映画をレンタルして婆ちゃん孝行です。(＾ー＾)ｂ

白黒映画に思わず「うお〜！」と叫んでしまった。そして原節子さんの登場でまた叫ぶ。「綺麗…」伝説の女優と言われるだけあり１６歳とは思えない落ち着きと美しさ。
背も高いのでしょう、男優さんよりも大きいようです。

養子に入った年の離れた義理の兄に秘かな恋心を持つ光子（原節子）。しかし、兄は留学先からフィアンセを連れて帰国。兄の妻になるのだと８年間、良妻賢母の勉強に励んできた光子なのに…悲しいよね。

そして養子縁組を解除することになり、親族会議が開かれた。落胆した光子は活火山に身を投じて死のうと決心をする。その伏線として、フィアンセと同じ国の男性との会話に日本女性は内に秘めた強い心があり男性と同じ…まるで火山のように熱いものを持っている…なんてのがある。

しっかり伏線と分かるのが面白くないけれど、和服で火山口まで登って行く光子は凄いと思いました。内に秘めた情熱がマグマのように熱いことを表しているのか。
それ程までに男性を愛した経験がないので、同じ女性として羨ましいなとも思いました。

しっとりとした原節子さんを是非、この映画から感じて下さい。伝説の女優さんだけあります。　

日独合作でありながら、日独の監督がケンカ別れして、結局二編ができたという変な映画ですが、これはドイツ監督版だそうで…。さらに、独の親日策や日本の満洲政策宣伝の思惑がかぶさって、ドロドロしたものが画面に流れています(これも見所の一つですが)。

留学帰りのインテリ青年が、欧州流の個人主義と日本の家族・全体主義との間で葛藤した末、民族の血を自覚する姿を描いています。その過程で、主人公が同伴するドイツ人の恋人と比較対照される原節子はちょっと気の毒。やっぱり日本人男性は金髪好きですから(笑)。

ラストは兵隊が四周を警戒する下で、トラクター(コマツ製)を走らせるという満洲の農事風景(当地ロケではないと思うが)が見られます。直前の内地の手植えシーンと対比させて、かの地での開拓が「安全」で「金になる」ことを印象づけようとしています。当時の開拓団送出が難航していたことが逆に分りますね。

ドイツ人監督が見たニッポンでしかないので不自然なところは沢山あります。それらをツッコミながら見るもよし、当時の国内の世情を見るもよし、という映画です。