チキンラン

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　この作品のレビューを書こうとして、他のレビュアーのレビューを参考に、と見てみたら、いきなりおうち大好きさんの「細木数子がいっぱい」で爆笑してしまいました。確かに！

　ジブリの森美術館でアードマンの展示を見たあとに、ＤＶＤで見たのですが、アードマンがドリームワークスと協力している作品というのは知りませんでした。

　「ウォレスとグルミット」シリーズをこの作品の後に見たのですが、本作ではクレイ・アニメとしてはよく動くし、スゴイとは思うのですが、脚本・プロットという面では後退かな？と。アードマンが大手と組んで手抜きをしたわけではないのでしょうが、ＣＧアニメとは違う部分というものが「ウォレス」シリーズに比べると弱いような気がしますね。でも、クレイ・アニメの制作方法を見てきた後だったので、それで８５分もの長編を作る苦労はいかばかりかと、変な部分で感動してしまいました。

　物語としては、導入部は「大脱走」のパロディだし、最後は「インディ・ジョーンズ」で、まあおきまりの勧善懲悪。（養鶏場の採算を考えるミセス・トゥイーディーが悪なのか？とは思いますが）その後の展開もこれと言った見せ場もなく、単純な筋書きなので子供でも先は想像がつくようです。６才の娘が、
「ジンジャーたちは結局、飛べないよ」
とか
「正義の味方みたいのがあらわれるんだよ」
なんて、予想してましたから。

　映像的には、ＣＧ・ＶＦＸに比べて好き嫌いが別れるかも知れませんが（この作品にも少しＣＧとか使ってますよね、JUCEさん）ＣＧでは表現しきれない陰影とかがあって、結構好きです。
　ただ、クレイ・モデルをコマ送りで動かして撮影するので、動かすことが主眼になって（これ、ＣＧアニメにも言えますが）静止している場面、つまり普通の役者の演技で言う「間」というものが軽視されているような気がします。どうせ動かしっ放しならスラップスティック・ムービーにしちゃった方が面白いかも知れません。

　まあ、子供と一緒に見るには退屈はしないし、意外などんでん返しもなくて、安心して見れる一本ですね。

ニワトリ達の顔がどことなく細木数子に似ています。
そんな事を書くと、これから観るかたの夢を奪ってしまうかな？
でも観ているうちに物語に引き込まれて忘れてしまうほど、これは面白いです。

冒頭から「大脱走」のパロディで楽しませてくれ、その後はヒューマンな展開で、感動あり、ハラハラドキドキありで、子供から大人まで楽しんでいただけると思います。

仲間たちを引っ張る役目のジンジャーのセリフがいいんです。
玉子を産むのが仕事でしょというニワトリたちに
「フェンスは小屋の周りだけじゃなく、みんなの頭の中にまで囲っている」
　「脱走出来るの可能性は１００万分の１よ」
「じゃあ、可能性はあるってことね」


「ウォレスとグルミット」よりこちらのほうが良かったです。
「チキンリトル」ではないですよ。
「チキンラン」です。お間違え無きように。

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　クレイ・アニメーションと言ったら、固定されたカメラ枠の中で粘土のキャラクターたちがぐにょぐにょ動いてるだけ、というイメージを持っていた自分が、強烈なアッパーカットをくらったのが「ウォレスとグルミット」シリーズだった。ストーリーの出来の良さに加えて、演出、カメラワークに腰ぬかしました。この子たちは、いつの間にやらテレビＣＭでキャラクターとして知名度がアップしてましたが、やっぱりドラマで評価しないと。キティ（ちゃん、なんて言わんぞ、あたしゃ）とかと一緒にするなよ、と。

　で、本作「チキンラン」はこの「ウォレス・・・」シリーズを手掛けたアードマン・アニメーションズが製作。自ら「ミニチュア版の実写映画」と言っているように、文法的には実写のセオリーを踏んでいるが、アニメ（マンガ）の語法も存分に生かし、粘土キャラが実存の深みを表出するオリジナルの世界を創りあげている。

　さて、タイトルだけだと「にわとりが走る」・・・なんのこっちゃですが、往年の名作「大脱走」（６３）をニワトリがやってるんですね。あの男汁１２０％のドラマを、洋梨体型のプリプリした雌鳥たちが演じてるさまは、かわいいやらおかしいやら。

　ところはイギリスの養鶏場。これがまるで収容所、鋼鉄の柵に囲まれた監房暮らしの雌鳥たちは、卵を産み続けなければ殺されてしまう。そんな奴隷状態はまっぴらと本作のヒロイン、ジンジャーはニワトリたち全員の運命を受け負って脱出を試みる。が、失敗また失敗。独房に入れられ芽キャベツを壁にぶつけながら（ここ、笑ってください）、彼女は次なる脱出の策を練るのだった・・・。

　プロットだけ見ると聖書の「出エジプト記」＝映画の「十戒」（５６）が思い浮かぶお話。カリスマ・リーダーの先導で理想郷に旅だつ民衆、という図ですね。自分たちの奴隷状態に自覚がなく、目先の快楽（養鶏場の女主人の罠）に飛びついてしまうニワトリたちのあさはかなこと。烏合の衆とはまさにこれ。モーセに導かれてエジプトを脱出したイスラエルの民も、文句たれたり言いつけ守らなかったりで、神様の怒り買いまくりのアンポンタンだった。

　しかし、モーセは神の命令ゆえの使命感があったが、ジンジャーの場合、何も他の仲間まで逃がす義理はない。なのに、彼女は懸命にみんなを説得する。金網の向こうには自由な世界があるのだと。彼女は外の世界は知らないが自由の何たるかを知っている。何度、独房に閉じ込められようと彼女が決してあきらめないのは、彼女の心が自由だからだ。「ショーシャンクの空に」（９４）の主人公は、刑務所の中で「ここ（と言って頭を指さす）の自由は誰も奪えない」と言っていた。自分をとりまく過酷な状況に打ちのめされない勇気、その源は自由な心にある。ジンジャーは言う。「みんなの頭の中にある金網を取り去らなきゃ」と。

　モーセにはアロンという片腕がいたが、本作ではロッキーという雄鶏がジンジャーを助けることになる。こいつがヤンキーらしい軽薄さとチャームで世の中を渡ってきたお調子者。サーカスから逃げてきた「空飛ぶニワトリ」で、みんなに空の飛び方を伝授するのだが、かなりチャランポラン。彼はジンジャーに言う。「俺は外の世界を知っているが、自由なんてありゃしないよ」と。

　現実のしがらみにとらわれた私たちも、もしかしたら自由な心をどこかに置き去りにしているのかもしれない。そんなことを、ふと思い、ジンジャーのひたむきさに励まされた。そうだ、頭の中の金網を取り去らなきゃと。

　そんな訳で、過去の名作に目配せをきかせた小ネタや、お国柄のジョークも軽快な、とってもスマートなコメディの本作。「弱虫」の意味も持つ「チキン」が勇気あふれる活躍を見せるというのも、なかなか気が利いているじゃありませんか。しかし、この作品を試写で観た直後に鶏肉のサラダを食してしまったワタクシもなんだかな、です。「ベイブ」後の豚肉料理に通ずる罪悪感。しかもちょっと泣き入ってたくせして・・・。ま、チキンパイじゃないからヨシとしましょう。

キャラ的に、ウォレスとグルミットにはかなわないのは仕方がないところ。登場キャラも多く、惹き込まれもせず、最初のうちは「……ハズしたかな？」とか思っていたけど途中からニック・パーク節が炸裂、がぜん面白くなります。パイ作成マシンとかどっからああいう発想出てくるんでしょう。内部の描写とか楽しすぎます。

クレイアニメなのは知っていたんですが、登場キャラのあまりの多さにＣＧかと思ってしまったほど。よく動かせるもんですあんなに。ただ、表面が綺麗（指紋がなかったり）なので手作り感はあまりありません。

また、もしウォレスとグルミットをまだ全部見ていないのなら、そちらを先に見ることをオススメします。十分に面白い、とは思いますが、ウォレスとグルミットのほうがさらに面白いと思いますので。「危機一髪！」「ペンギンに気をつけろ」あたりがオススメです。

クレイ・アニメってだけで借りてみた。
粘土を少しづつ動かしてアニメーションになっちゃうなんて
考えただけでも気が遠くなる作業。。。
見事！！としかいいようがないねぇ〜
とてもキレイに可愛く仕上がっています。

話は単純明快で子供にもわかりやすいかな！？
最後はちょっとホロっと泣けました。
あぁ。。私って感情移入が激しいからなぁ。。
でも主人公のメス鳥が気が強くて頑固で。。。
私にそっくりだったからかな！？

クレイ・アニメにちょっとでも興味のある方は
観ておいても損はないと思います。