蝶の舌

　幼くしてオオカミに襲われ、声をなくした少女が走る。サキソフォンで愛を語ってくれた少年に別れを告げるため、走る。たぶん買われたのだろう、少女は初老の男の妻でもあるのだが、初めて恋というものを知ってしまった。木の陰から小さく手を振る少女を見て、少年は涙を流す。

　自由は、儚いものだ。みんなが好き勝手にしていれば、意見はまとまらないし、物事は進まず、みんなに不満が溜まっていく。充満した不満が後押しして、強い指導者が求められたり、いっぺんに事態を変えようとする者が出てくる。
　だから、自由を押しつぶすのは、一部の権力者やファシストではなくて、たいていは僕たち自身なのだ。

　まさにスペイン内戦が始まった瞬間、心の自由が押しつぶされた瞬間を描いたラストシーンは忘れがたい。本当にひどいことが始まるのは、きっとこの後からなのだ。甘い、甘い映画なのだけれど、好きです。７０点。

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ずっと気になっていて、やっと見ました。

病弱で他のみんなより遅れて小学生になったモンチョ。
最初はびくびくしていたように見えたが、
グレゴリオ先生に出会って
蝶の舌の話や、ティロノリンコという鳥の話など
少年にとっては興味深い自然界の話を聞くうちに
やさしい先生と心が打ち解け、学校も楽しむようになる。

先生が退職してからも、遊びにつれてってもらったり、
ほのぼのエピソードにほっこりさせられる。

ですが、予想通り、それはラストにつながる序章的なものでした。

内戦が始まる、というときに訪れた別れ。

この描写も画的にはぜんぜん地味なんですが、
少年の無邪気さゆえに発した痛烈な言葉が
なんとも心にぐさっときます。

大人が発する言葉に乗せられて
深い意味もわからず発したのでしょうけど・・・。

その言葉を聴いた先生の表情が
もうなんともいえない・・・
ショックというか、落胆というか、悲しいというか。

最後に先生に教わったエピソードにまつわる言葉を
叫んだが、それは先生にちゃんと伝わったかな・・・・。

あの先生なら少年の気持ちは察してるだろうな
と個人的に思いましたが
なんとも切ないラストでした。

地味ですが観てよかったです。

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スペイン内戦を描いた結構良い映画があると聞いていた『蝶の舌』を観ました（（(；°д°））ハッ！

なんともいえんラストやねー・・・少し解りにくい感じがするんで、ちょっとスペインとモンチョのその後について調べてみよう（・〜・）

□■□■□

・この映画の始まる少し前の1923年〜1930年（モンチョ２歳）までがミゲル・プリモ・デ・リベーラ軍事独裁政権（・〜・）ふむふむ

・この映画の大部分は、スペイン第二共和政で議会制民主主義の時代（1931年−1936年/モンチョ３歳〜８歳）か〜（・〜・）ふむふむ

・ほんで映画のラスト1936年（モンチョ８歳）にスペイン内戦が始まる・・・

・1939年（モンチョ１１歳）にフランコ独裁政権が成立＆第2次世界大戦勃発・・・

・1945年（モンチョ１７歳）に第2次世界大戦が終戦（・〜・）

・終戦後もファシズム体制（フランコ独裁政権）は、フランコが死去する1975年（モンチョ４７歳）まで続き、1978年に1978年憲法（モンチョ５０歳）が出来てやっと民主化の道を進むことになる（・〜・）

・1986年（モンチョ５８歳）ヨーロッパ共同体（現ＥＵ）加盟

・1992年（モンチョ６４歳）バルセロナオリンピック

・1999年（モンチョ７１歳）映画『蝶の舌』公開・°・（ノД｀）・°・

・2010年（モンチョ８２歳）・・・現在・・・

もう誰もモンチョから自由を奪うことは出来ない（出来なかった）のだ！

□■□■□

スペインのことに詳しくないので、ちょこっと調べてみたんすけど、この歴史を生きてきたスペイン人にとってあのラストがどのような意味（重み）を持つのか、少しだけわかったような気がするっすね・・・

個人的満足度　７４点　オススメ度　７５点

この映画を見て思ったのは家庭というのは、ある意味、ファシズムの温床だ、ということであった。
いたいけなモンチョ少年の視点だけからこの映画を見れば、それは感傷に浸ることである。少年の父や母の視点からこの映画を見てみてはいかがだろう。モンチョの父の転向。佐野学でさえ転向したのだからこれはしかたない。しかし私たちは佐野学の失敗を知っている。
私たちなら家族で話し合い最良の策を考え出せるだろう。例えば
「黙秘を貫こう。また、嘘をついてもいい。でも尊敬している人への悪口はやめよう。悪口を言うか言わないかは大きな違いだ。悪口を言えば私たちが尊敬する人への弾圧者になる。悪口を言わないことだけ命にかけて守ろう。これがまず第1ステップだ。命の安全を確かめながら少しずつ主張して行こう。別に家族全員が同じ態度を取る必要はないが、お父さんだけは、先生の悪口を言わないことに命をかけてみる。」
スペインに勝るとも劣らないファシズム国家だった日本に生きていることを忘れてはならない。

「夏には森へ、先生とチョウチョを採りにいった」このコピーでもわかるように先生と生徒の友情のお話です。そしてこの作品の最大の見せ場はなんといってもラストシーン。

スペインのガリシア地方の美しい自然の中で心優しいグレゴリオ先生とモンチョは先生と生徒の枠を超えて友情というすばらしい絆を結びます。先生にはいろいろなことを教わりましたね。蝶には丸まった長い舌があること、ティロノリンコという鳥は求婚の時に花を贈ること。自然の不思議とでもいうのでしょうか。人間が創造していない別世界が存在していることを。しかし、人間が創造した社会ではスペインの内戦がはじまり、「共和派」への迫害が。そして大好きなグレゴリオ先生も実は・・・。

逮捕された先生がトラックの荷台に乗るまでの間、いろいろな人から罵倒をあびせられますね。「アカ」「裏切り者」「犯罪者」「アテオ」。そしてその群集にモンチョ一家も。モンチョは母親に「お前も叫ぶのよ」と言われて、「ハッ」としたように大好きな先生に罵倒を。そして、先生を乗せて走って行くトラックを追って子供達が石を投げつける。モンチョも同様に。「アカ」「裏切り者」「犯罪者」。そして、最後に「蝶の舌」とおおきな瞳をして悲しげに叫び、その静止画面でこの映画は終わります。このシーンがたまらなく切ない。「大好きな先生」「先生」「先生」「さようなら」「さようなら」モンチョはこのセリフは言いませんが彼の瞳が語っていますよね。子供には大人に逆らえない悲しい現実が存在してしまう事実。そして、彼の瞳には彼の少年時代が終わりを告げ、大人社会へ一歩足を踏み入れた様子も。

くぅぅ。せつな過ぎる。な、涙が。モンチョの瞳に参りました。