海と毒薬 / 奥田瑛二
全体の平均評価点: (5点満点)
(26)
解説・ストーリー
太平洋戦争末期に実際に起こった米軍捕虜に対する生体解剖事件を描いた遠藤周作の同名小説を、社会派・熊井啓監督が映画化した問題作。敗色も濃厚となった昭和20年5月。九州のF市にも毎晩のように米軍機による空襲が繰り返されていた。医学部の研究生、勝呂と戸田の二人は物資も薬品も揃わぬ状況下でなかば投げやりな毎日を送っていた。そんなある日、二人は教授たちの許に呼び出された。それは、B29の捕虜8名を使った生体解剖実験を手伝えというものだった……。
太平洋戦争末期に実際に起こった米軍捕虜に対する生体解剖事件を描いた遠藤周作の同名小説を、社会派・熊井啓監督が映画化した問題作。敗色も濃厚となった昭和20年5月。九州のF市にも毎晩のように米軍機による空襲が繰り返されていた。医学部の研究生、勝呂と戸田の二人は物資も薬品も揃わぬ状況下でなかば投げやりな毎日を送っていた。そんなある日、二人は教授たちの許に呼び出された。それは、B29の捕虜8名を使った生体解剖実験を手伝えというものだった……。
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「海と毒薬」 の解説・あらすじ・ストーリー
解説・ストーリー
太平洋戦争末期に実際に起こった米軍捕虜に対する生体解剖事件を描いた遠藤周作の同名小説を、社会派・熊井啓監督が映画化した問題作。敗色も濃厚となった昭和20年5月。九州のF市にも毎晩のように米軍機による空襲が繰り返されていた。医学部の研究生、勝呂と戸田の二人は物資も薬品も揃わぬ状況下でなかば投げやりな毎日を送っていた。そんなある日、二人は教授たちの許に呼び出された。それは、B29の捕虜8名を使った生体解剖実験を手伝えというものだった……。
「海と毒薬」 の作品情報
「海と毒薬」 のキャスト・出演者/監督・スタッフ
海と毒薬 デラックス版の詳細
収録時間: |
字幕: |
音声: |
123分 |
|
日:モノラル |
レイティング: |
記番: |
レンタル開始日: |
|
PIBR1325 |
2002年12月02日
|
在庫枚数 |
1位登録者: |
2位登録者: |
1枚
|
0人
|
2人
|
海と毒薬 デラックス版の詳細
収録時間: |
字幕: |
音声: |
123分 |
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日:モノラル |
レイティング: |
記番: |
レンタル開始日: |
|
PIBR1325 |
2002年12月02日
|
在庫枚数 |
1位登録者: |
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ユーザーレビュー:26件
熊井啓作品の中で一番いい
投稿日:2006/03/16
レビュアー:吟遊旅人
前半のクライマックスである外科手術のシーンが圧巻だ。モノクロ画面でよかったと思うぐらい、生々しい内臓が大写しになる。この場面をスタッフの献血によって本物の血液を使ったという熊井監督の執念が表れている。手術場面の鬼気迫るリアルさといい、手術後の後片付けの手馴れた様子といい、実に自然な手つきで役者たちが手を動かすさりげなさがすごい。
本作は作り方とてもうまい。モノクロ画面の陰惨な話だというのに、手術シーンの迫真のカットといい、役者たちの演技のよさといい、申し分ない。構図や照明の懲り方もなかなかのもので、社会派作品といっても堅苦しいところはなく、かといってもちろん軽い映画ではない。
役者はみなそれぞれに癖のある役を巧みに演じていると思うが、とくに印象的だったのは看護婦長岸田今日子の目の演技と、田村高廣のメリハリのある演技だ。田村は高慢な医師橋本教授を演じているのだが、最初のうちいかにも偉そうにしている橋本が、手術の失敗の後では身体が縮んで見えるほど意気消沈している。
岸田今日子は、医師のいいなりになって部下たちを叱り付けるしっかり者の婦長役だ。彼女が一切「判断停止」状態になる様子は、ナチスの戦犯アイヒマンを想起させる。だがアイヒマンと違って完全に判断停止になっていない複雑な心境を目のかすかな動きで表現した岸田今日子は、いい役者だ。
現在にまで尾を引く問題をえぐった力作であるが、惜しむらくはラストのあっけなさだろうか。時間切れの尻切れトンボだったのか、ここをもう少しじっくり描いてもらえれば…。
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黒い波が、人間の業を飲み込む。
投稿日:2007/09/19
レビュアー:ぴよさん
※このユーザーレビューは作品の内容に関する記述が含まれています。
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終戦間際にあったとされる「九州帝大 生体解剖事件」を基に描かれた、遠藤周作の小説『海と毒薬』。その見事なる映画化だ。医学部内の権力争いを巡って、西部軍と通じ生体解剖によって成果をあげようとする勢力と、それに巻き込まれてゆく医学生、勝呂(奥田)と戸田(渡辺)の苦悩が描かれる。
1945年5月、九州爆撃中に撃墜されたB−29の搭乗員の米兵8名が、当時の九州帝國大学医学部に連行され、生体解剖実験に供される。都合4度に分け、全肺摘出・心臓摘出と肝左葉切除・脳手術・肝臓摘出と代用血液の試用の実験が行われた。
本編では、解剖を見学した西部軍将校が肝臓を食したという描写もある。(これには異論もある)いずれにせよ、このような生体解剖実験が実際に確認されたのは歴史上稀な事で、後日恐るべき戦争犯罪として断罪されることになる。
敬虔なクリスチャンである遠藤周作は、ある極限状況に陥った時、日本人に依って立つ思想理念が欠けている事の危うさを、問題にしたかったのだろう。勝呂は自責の果てに思考停止に陥るが、戸田は自己の良心の程度を確認する事が目的かのように、実験を続ける。その場の外科医達の誰もが、「医学の為に、命を無慈悲に侵す」ことの矛盾を、もはや感じきれていない。外科部長のドイツ人妻ヒルダだけが、生命の尊厳を意識している。彼女は「神に対して恥じないかどうか」を行動規範にしており、どんな状況にあってもその思いによって進むべき道が照らされている。
根岸季衣演じる看護婦・上田が、ある意味とても人間的だ。彼女は忠実な職業看護婦であるが故に、ヒルダと衝突する。そしてヒルダへの遠回しな復讐を動機として、実験に参加してゆくのだ。このような感情の動き方は、倫理とは別の次元にあるが、矛盾があるからこそ人らしくもあるという事だ。まあ、やってることは人でなしなんだけど。
ケチをつけるわけではないが…依って立つ「神」が、いつも正しい判断をしてくれているとは、私には思えない。その「神」を信じるがあまりに、世界に争いが絶えないことの矛盾を、誰が説明できるのだろうか。
いずれにせよ、この所業が同情の余地が無い蛮行であったことに疑いは無い。九大校舎から望む博多湾の波(当時はこんなに海が近かったのか)が、人の業を悲しく飲み込み、また寄せるかのようだ。
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医療の目的と人間の尊厳を見失う体質が近年も続いている恐怖
投稿日:2008/09/06
レビュアー:花ちゃん
※このユーザーレビューは作品の内容に関する記述が含まれています。
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九州帝国大学医学部において昭和20年に行われた米兵捕虜8名の生体解剖実験を題材としている。時は戦局不安な終戦まぎわ、大学病院は度々の空襲をうけ警報が鳴ると患者を抱え避難させる毎日。充分な治療を受けられず病状の悪化する病人を見ても、病気で死ぬか、さもなければ空襲で死ぬという投げやりな状況だった。
そんな中でも、外科部長である橋本教授は学部長の座を狙う権力争いに余念がない。有力者の血縁患者の手術で功績を挙げようとたくらむが失敗してしまい、他の体力のない重症患者で試験的手術をしようと計画するが事前の患者の死で未遂に終る。
この教授の起死回生の策として持ち上がったのが撃墜された米兵捕虜を使っての生体解剖だった。
加わるのは二人の医師と二人の学生、二人の看護婦だ。橋本と言う名誉欲に取り付かれた男。下に続く二人の医師の自己保身と損得勘定の日和見。それらの権力に逆らえない二人の対象的な学生、勝呂と戸田。橋本にはヒルダと言うキリスト教信者の妻がおり病院で奉仕活動をしている。看護婦の一人はヒルダに非難されたことで、看護婦長は橋本の愛人であるらしいゆえ、女二人は個人的な事情で実験に参加する事となる。彼らの心情をを追うことで話は進んでゆく。
主要人物の配役も良く(GHQの岡田真澄はいまひとつ。)白い巨塔のような病院内部の不気味な抗争も見応えがあり、暗い荒海に飲み込まれていくような個人の倫理観の脆さを奥田瑛二、渡辺謙が好演しており、医学生やヒルダに見られる宗教観の有無、相違などは遠藤周作らしい。
クライマックスは抵抗する米兵を数人がかりで手術台に押し付ける場面だろう。
軍医たちも興味深げに手術に立ち会いその肝臓を宴会に供して食す。狂気と興奮が激しく押し寄せるなか彼等自らが暗闇の深い海へ落ちていく瞬間のようだった。
作品は戦時下の異常事態が舞台であるが、橋本教授の有力患者への慇懃さ、無力な患者への尊大で無礼な態度、名誉と権力の為に人間性を封印(手術室のドアの前で後悔の表情を見せるが)してしまう怪物性を見るとき、薬害エイズで公判中に亡くなった某大学教授のニュース映像の姿が重なる。薬害を広めた製薬会社の前身は旧陸軍で生体実験を行った731部隊のメンバーが主要役員を勤めていた。医療の目的と人間の尊厳を見失う体質が脈々と近年まで続いている事に更なる恐怖が重なる一作でした。
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[es]と同じく重い気分満喫
少し前事実をもとに映画化されたとして話題になった[es]よりはるか以前に作られた遠藤周作原作の映画。わざとモノクロで作られていて、あの解剖シーンを見るとモノクロでよかったと思わせられる。
とてもよくできた映画だけど、[es]同様人間のいや〜な部分を見せ付けられて観た後しばらくくら〜い後味が残る。それでも観た方がいい、見なければと思う作品。
若き日の渡辺謙と奥田瑛二が好演している。ただアメリカ軍人役が岡田真澄なのが残念・・・熱演してるけど、リアルさを出すなら私らが顔知らないアメリカ人俳優の方がよかったのでは・・・と思う・・・。
おまけのインタビューは40分もあってダラダラと長すぎ・・・もうちょっとコンパクトにまとめて欲しかった。
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8人の会員が気に入ったと投稿しています
信仰があれば「運命」に抗うことは可能か?
※本項ではあらすじを紹介します。コメント欄に私の感想を記します。
監督・脚本:熊井啓(1986年・日本・123分・モノクロ)
原作:遠藤周作『海と毒薬』
新旧の『野火』に続いて、何気なく本作を観てしまった。戦時下あるいは極限状態においての人間というものについて考えるには、よい機会になったのかも知れないが、思った以上のダメージに参っている。私の今の心象風景を描いてみせるなら多分、もがいてももがいても浮かび上がることのできない「泥沼」だろう。
本作は、終戦目前の1945年5月5日、九州帝国大学(現九州大学)医学部で行われた生体解剖事件がベースになっている。(モチーフにしているだけで、描かれているのはフィクション)
九州方面を爆撃するために飛来したB29が撃墜され、その搭乗員たち(アメリカ兵捕虜)8名が当該大学に連れて来られ(麻酔で昏睡状態にはあったが)生きたまま解剖されたのだ。
勝呂(奥田瑛二)は医学部研究生で、初めて彼が主治医として担当したのが「おばはん(千石規子)」だった。おばはんは結核を患っていて、柴田助教授(成田三樹夫)は助かる見込みのないおばはんを実験台にしようとしていたが、勝呂は何かと理由をつけては、手術が先送りになればよいと思っていた。
同じ研究生で勝呂とは対極にいる戸田(渡辺謙)は、「医者に甘っちょろいセンチは禁物だ」と言い、「空襲で死ぬか病院で死ぬかの違いだろう」と。ならば手術で死ぬ方が「医学の人柱」となれる。「以て瞑すべし」だと説くのだった。
その頃、医学部長の大杉が急逝し、勝呂や戸田が師事する第一外科・橋本教授(田村高廣)と、第二外科・権藤教授(神山繁)が次の医学部長の座を争っていた。(この辺りはまるで白い巨塔そのまま)
医学部の部長選までに点数を稼ごうと橋本教授が行った「田辺夫人」の手術は失敗し、例のおばはんは実験台にされる前に亡くなってしまう。
そんな折、西部軍の医官から米軍捕虜の生体実験の話が舞い込んできたのだ。橋本教授やその取巻きたちが、勢力挽回のためにその話に乗ることを決める。
その手術(第一日目)に臨んだのは、橋本教授、柴田教授、浅井助手(西田健)、大場看護婦長(岸田今日子)、上田看護婦(根岸季衣)、勝呂、戸田と、記録係(写真撮影)だった。
後にこの生体解剖がGHQの知るところとなり、GHQの調査官ハットリ(岡田真澄)が行った勝呂、戸田、上田看護婦への聴取によって彼らの心情が吐露される。
【勝呂】自分は何故あのおばはんに執着していたのかも分からなかければ、おばはんが亡くなった後、まるで支えを失ったようになり、何もかもがなるようになればいいのだ。自分の考えではどうにもならない世の中なのだと、自暴自棄のような気持になってしまった。解剖への参加も断ろうと思えば断れたのに、判断も考えることすら出来ない状態だった。
【戸田】自分の心を不気味に感じている。死や苦しみに無感動な自分が不思議に思えた。自分が恐れるのは「社会からの批判」「社会から受ける罰だ」と考えた。自分の意志で逃れることが出来ないものが「運命」ならば、逃れることを可能に、あるいは運命から自由にしてくれるのが「神」かも知れない。同僚の勝呂がおばはんに執着したのは、彼にとっておばはんが神(心の拠り所)だったのかも知れないと考える。
【
上田】自然気胸の患者が苦しみ出し、浅井助手の指示通り注射しようとすると、橋本教授の妻・ヒルダに激しく非難される。(安楽死の可能性を指摘)「あなたは神を信じないのか?神に対して恥じないのか?」彼女は常に「神はどう思うか」と問いながら行動していると言うのだ。おまけにヒルダは病院にも告げ口し、上田を病院から追放しようとした。彼女は夫の橋本が捕虜の米兵を生体解剖しようとしていることを知っているのだろうか。知ったらヒルダはどうするのだろう。
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ユーザーレビュー
熊井啓作品の中で一番いい
投稿日
2006/03/16
レビュアー
吟遊旅人
前半のクライマックスである外科手術のシーンが圧巻だ。モノクロ画面でよかったと思うぐらい、生々しい内臓が大写しになる。この場面をスタッフの献血によって本物の血液を使ったという熊井監督の執念が表れている。手術場面の鬼気迫るリアルさといい、手術後の後片付けの手馴れた様子といい、実に自然な手つきで役者たちが手を動かすさりげなさがすごい。
本作は作り方とてもうまい。モノクロ画面の陰惨な話だというのに、手術シーンの迫真のカットといい、役者たちの演技のよさといい、申し分ない。構図や照明の懲り方もなかなかのもので、社会派作品といっても堅苦しいところはなく、かといってもちろん軽い映画ではない。
役者はみなそれぞれに癖のある役を巧みに演じていると思うが、とくに印象的だったのは看護婦長岸田今日子の目の演技と、田村高廣のメリハリのある演技だ。田村は高慢な医師橋本教授を演じているのだが、最初のうちいかにも偉そうにしている橋本が、手術の失敗の後では身体が縮んで見えるほど意気消沈している。
岸田今日子は、医師のいいなりになって部下たちを叱り付けるしっかり者の婦長役だ。彼女が一切「判断停止」状態になる様子は、ナチスの戦犯アイヒマンを想起させる。だがアイヒマンと違って完全に判断停止になっていない複雑な心境を目のかすかな動きで表現した岸田今日子は、いい役者だ。
現在にまで尾を引く問題をえぐった力作であるが、惜しむらくはラストのあっけなさだろうか。時間切れの尻切れトンボだったのか、ここをもう少しじっくり描いてもらえれば…。
黒い波が、人間の業を飲み込む。
投稿日
2007/09/19
レビュアー
ぴよさん
※このユーザーレビューは作品の内容に関する記述が含まれています。
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終戦間際にあったとされる「九州帝大 生体解剖事件」を基に描かれた、遠藤周作の小説『海と毒薬』。その見事なる映画化だ。医学部内の権力争いを巡って、西部軍と通じ生体解剖によって成果をあげようとする勢力と、それに巻き込まれてゆく医学生、勝呂(奥田)と戸田(渡辺)の苦悩が描かれる。
1945年5月、九州爆撃中に撃墜されたB−29の搭乗員の米兵8名が、当時の九州帝國大学医学部に連行され、生体解剖実験に供される。都合4度に分け、全肺摘出・心臓摘出と肝左葉切除・脳手術・肝臓摘出と代用血液の試用の実験が行われた。
本編では、解剖を見学した西部軍将校が肝臓を食したという描写もある。(これには異論もある)いずれにせよ、このような生体解剖実験が実際に確認されたのは歴史上稀な事で、後日恐るべき戦争犯罪として断罪されることになる。
敬虔なクリスチャンである遠藤周作は、ある極限状況に陥った時、日本人に依って立つ思想理念が欠けている事の危うさを、問題にしたかったのだろう。勝呂は自責の果てに思考停止に陥るが、戸田は自己の良心の程度を確認する事が目的かのように、実験を続ける。その場の外科医達の誰もが、「医学の為に、命を無慈悲に侵す」ことの矛盾を、もはや感じきれていない。外科部長のドイツ人妻ヒルダだけが、生命の尊厳を意識している。彼女は「神に対して恥じないかどうか」を行動規範にしており、どんな状況にあってもその思いによって進むべき道が照らされている。
根岸季衣演じる看護婦・上田が、ある意味とても人間的だ。彼女は忠実な職業看護婦であるが故に、ヒルダと衝突する。そしてヒルダへの遠回しな復讐を動機として、実験に参加してゆくのだ。このような感情の動き方は、倫理とは別の次元にあるが、矛盾があるからこそ人らしくもあるという事だ。まあ、やってることは人でなしなんだけど。
ケチをつけるわけではないが…依って立つ「神」が、いつも正しい判断をしてくれているとは、私には思えない。その「神」を信じるがあまりに、世界に争いが絶えないことの矛盾を、誰が説明できるのだろうか。
いずれにせよ、この所業が同情の余地が無い蛮行であったことに疑いは無い。九大校舎から望む博多湾の波(当時はこんなに海が近かったのか)が、人の業を悲しく飲み込み、また寄せるかのようだ。
医療の目的と人間の尊厳を見失う体質が近年も続いている恐怖
投稿日
2008/09/06
レビュアー
花ちゃん
※このユーザーレビューは作品の内容に関する記述が含まれています。
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九州帝国大学医学部において昭和20年に行われた米兵捕虜8名の生体解剖実験を題材としている。時は戦局不安な終戦まぎわ、大学病院は度々の空襲をうけ警報が鳴ると患者を抱え避難させる毎日。充分な治療を受けられず病状の悪化する病人を見ても、病気で死ぬか、さもなければ空襲で死ぬという投げやりな状況だった。
そんな中でも、外科部長である橋本教授は学部長の座を狙う権力争いに余念がない。有力者の血縁患者の手術で功績を挙げようとたくらむが失敗してしまい、他の体力のない重症患者で試験的手術をしようと計画するが事前の患者の死で未遂に終る。
この教授の起死回生の策として持ち上がったのが撃墜された米兵捕虜を使っての生体解剖だった。
加わるのは二人の医師と二人の学生、二人の看護婦だ。橋本と言う名誉欲に取り付かれた男。下に続く二人の医師の自己保身と損得勘定の日和見。それらの権力に逆らえない二人の対象的な学生、勝呂と戸田。橋本にはヒルダと言うキリスト教信者の妻がおり病院で奉仕活動をしている。看護婦の一人はヒルダに非難されたことで、看護婦長は橋本の愛人であるらしいゆえ、女二人は個人的な事情で実験に参加する事となる。彼らの心情をを追うことで話は進んでゆく。
主要人物の配役も良く(GHQの岡田真澄はいまひとつ。)白い巨塔のような病院内部の不気味な抗争も見応えがあり、暗い荒海に飲み込まれていくような個人の倫理観の脆さを奥田瑛二、渡辺謙が好演しており、医学生やヒルダに見られる宗教観の有無、相違などは遠藤周作らしい。
クライマックスは抵抗する米兵を数人がかりで手術台に押し付ける場面だろう。
軍医たちも興味深げに手術に立ち会いその肝臓を宴会に供して食す。狂気と興奮が激しく押し寄せるなか彼等自らが暗闇の深い海へ落ちていく瞬間のようだった。
作品は戦時下の異常事態が舞台であるが、橋本教授の有力患者への慇懃さ、無力な患者への尊大で無礼な態度、名誉と権力の為に人間性を封印(手術室のドアの前で後悔の表情を見せるが)してしまう怪物性を見るとき、薬害エイズで公判中に亡くなった某大学教授のニュース映像の姿が重なる。薬害を広めた製薬会社の前身は旧陸軍で生体実験を行った731部隊のメンバーが主要役員を勤めていた。医療の目的と人間の尊厳を見失う体質が脈々と近年まで続いている事に更なる恐怖が重なる一作でした。
[es]と同じく重い気分満喫
投稿日
2003/08/27
レビュアー
komaboo
少し前事実をもとに映画化されたとして話題になった[es]よりはるか以前に作られた遠藤周作原作の映画。わざとモノクロで作られていて、あの解剖シーンを見るとモノクロでよかったと思わせられる。
とてもよくできた映画だけど、[es]同様人間のいや〜な部分を見せ付けられて観た後しばらくくら〜い後味が残る。それでも観た方がいい、見なければと思う作品。
若き日の渡辺謙と奥田瑛二が好演している。ただアメリカ軍人役が岡田真澄なのが残念・・・熱演してるけど、リアルさを出すなら私らが顔知らないアメリカ人俳優の方がよかったのでは・・・と思う・・・。
おまけのインタビューは40分もあってダラダラと長すぎ・・・もうちょっとコンパクトにまとめて欲しかった。
信仰があれば「運命」に抗うことは可能か?
投稿日
2023/02/04
レビュアー
kazupon
※本項ではあらすじを紹介します。コメント欄に私の感想を記します。
監督・脚本:熊井啓(1986年・日本・123分・モノクロ)
原作:遠藤周作『海と毒薬』
新旧の『野火』に続いて、何気なく本作を観てしまった。戦時下あるいは極限状態においての人間というものについて考えるには、よい機会になったのかも知れないが、思った以上のダメージに参っている。私の今の心象風景を描いてみせるなら多分、もがいてももがいても浮かび上がることのできない「泥沼」だろう。
本作は、終戦目前の1945年5月5日、九州帝国大学(現九州大学)医学部で行われた生体解剖事件がベースになっている。(モチーフにしているだけで、描かれているのはフィクション)
九州方面を爆撃するために飛来したB29が撃墜され、その搭乗員たち(アメリカ兵捕虜)8名が当該大学に連れて来られ(麻酔で昏睡状態にはあったが)生きたまま解剖されたのだ。
勝呂(奥田瑛二)は医学部研究生で、初めて彼が主治医として担当したのが「おばはん(千石規子)」だった。おばはんは結核を患っていて、柴田助教授(成田三樹夫)は助かる見込みのないおばはんを実験台にしようとしていたが、勝呂は何かと理由をつけては、手術が先送りになればよいと思っていた。
同じ研究生で勝呂とは対極にいる戸田(渡辺謙)は、「医者に甘っちょろいセンチは禁物だ」と言い、「空襲で死ぬか病院で死ぬかの違いだろう」と。ならば手術で死ぬ方が「医学の人柱」となれる。「以て瞑すべし」だと説くのだった。
その頃、医学部長の大杉が急逝し、勝呂や戸田が師事する第一外科・橋本教授(田村高廣)と、第二外科・権藤教授(神山繁)が次の医学部長の座を争っていた。(この辺りはまるで白い巨塔そのまま)
医学部の部長選までに点数を稼ごうと橋本教授が行った「田辺夫人」の手術は失敗し、例のおばはんは実験台にされる前に亡くなってしまう。
そんな折、西部軍の医官から米軍捕虜の生体実験の話が舞い込んできたのだ。橋本教授やその取巻きたちが、勢力挽回のためにその話に乗ることを決める。
その手術(第一日目)に臨んだのは、橋本教授、柴田教授、浅井助手(西田健)、大場看護婦長(岸田今日子)、上田看護婦(根岸季衣)、勝呂、戸田と、記録係(写真撮影)だった。
後にこの生体解剖がGHQの知るところとなり、GHQの調査官ハットリ(岡田真澄)が行った勝呂、戸田、上田看護婦への聴取によって彼らの心情が吐露される。
【勝呂】自分は何故あのおばはんに執着していたのかも分からなかければ、おばはんが亡くなった後、まるで支えを失ったようになり、何もかもがなるようになればいいのだ。自分の考えではどうにもならない世の中なのだと、自暴自棄のような気持になってしまった。解剖への参加も断ろうと思えば断れたのに、判断も考えることすら出来ない状態だった。
【戸田】自分の心を不気味に感じている。死や苦しみに無感動な自分が不思議に思えた。自分が恐れるのは「社会からの批判」「社会から受ける罰だ」と考えた。自分の意志で逃れることが出来ないものが「運命」ならば、逃れることを可能に、あるいは運命から自由にしてくれるのが「神」かも知れない。同僚の勝呂がおばはんに執着したのは、彼にとっておばはんが神(心の拠り所)だったのかも知れないと考える。
【
上田】自然気胸の患者が苦しみ出し、浅井助手の指示通り注射しようとすると、橋本教授の妻・ヒルダに激しく非難される。(安楽死の可能性を指摘)「あなたは神を信じないのか?神に対して恥じないのか?」彼女は常に「神はどう思うか」と問いながら行動していると言うのだ。おまけにヒルダは病院にも告げ口し、上田を病院から追放しようとした。彼女は夫の橋本が捕虜の米兵を生体解剖しようとしていることを知っているのだろうか。知ったらヒルダはどうするのだろう。
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