狼男アメリカン

■原題：An American Werewolf In London
■１９８１年■アメリカ■９８分
■監督：ジョン・ランディス
■脚本：ジョン・ランディス
■特殊メイク：リック・ベイカー
■出演：デヴィッド・ノートン／ジェニー・アガター／グリフィン・ダン　他
■受賞歴：アカデミー賞◆メイクアップ賞（リック・ベイカー）

■この作品は、公開当時によくＴＶスペシャルでその特撮が紹介されていたのですが、よく考えると本編そのものをしっかり観た記憶がなく、これはイカンと今さらの初鑑賞。

　デヴィッドとジャックという二人のアメリカ人がイギリスを旅行中、ある村で何者かに襲われる。襲ったモノは村人が射殺したが、ジャックは死亡し、デヴィッドも重傷を負いロンドンの病院に収容される。
　やがて目覚めたデヴィッドの前に、死んだはずのジャックが現れて、自分たちを襲ったのは狼人間で、生き延びたデヴィッドはその呪いにより次の満月の夜に狼人間に変貌すると告げる・・・。

　というのが大まかなストーリーラインですが、デヴィッドの前に現れるジャックが、現れるごとに体の腐敗が進んでいたり、やがて狼人間へと変貌してしまったデヴィッドが殺した人間たちも一緒に現れたり、それはおそらくデヴィッドの深層意識が見せる幻覚の類なんだろうけど、何とも言えないブラックなユーモアに彩られていてなかなか面白いです。ラストも無駄に引っ張ることなく潔くていい。
　それから、本作の見どころである狼人間への変身場面。これがやはり見事です。
　ついこないだ観た『ウルフマン』の変身場面は今の時代だから当然ＣＧも駆使して精緻に描かれていましたが、生々しさとか迫力は断然本作のほうが上です。この特殊メイクを担当していたのは本作でアカデミー賞のメイクアップ賞を受賞したご存じリック・ベイカーですが、本作の前に製作された『ハウリング』で、彼の弟子的な存在であるロブ・ボッティンが見事な仕事をしていたために、これにすごく刺激を受けたとのこと。こういうお互い刺激し合いながら向上していくってすごくいいことだと思いますね。
　もう３０年も前の作品ではありますが、十分観応えがあると思います。個人的には『ウルフマン』よりは数段おもしろかったです。
　あと、女性看護師役で出ていたジェニー・アガターという女優さんが、何とも言えない色気があってこれはこれで素敵でした。

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当時中学生頃の私は、変身シーンの特撮、街で暴れる狼の迫力に驚愕したのを覚えています。

地下通路のシーンは、今でもトラウマです（笑）

ストーリーも、今見ても新鮮で、いわゆる狼男とは一線を画しています。
狼男の恐怖を、ただ描いているのではなく、狼男に襲われたもの達のエピソードや、板ばさみになった主人公の苦悩など、テーマがきっちりしており、大変面白く見ることが出来ます。

斬新な発想ってのは、時代を経ても新鮮に写るものなのでしょうね。

なお、ユーモアを絡めながら、と言ってもそれほどコメディタッチではありません。
ホラー的要素は若干薄まっているとも言えますが、主人公の苦悩もあまり重くなりすぎず描かれており、クライマックスに向けての迫力を増幅させる効果があったのではないでしょうか。

イギリスを旅していたアメリカ人が、狼に噛まれて狼男になってしまうお話。
多分ホラーコメディというジャンルの、ハシリの作品でしょう。といっても、あからさまに笑わせるシーンがあるわけではなく、ジョン・ランディスらしいオフビートなノリと展開にクスッとさせられる感じ。終盤は意外とシリアスです。

公開当時は特に変身シーンが話題になりました。『ハウリング』を手掛けた弟子の仕事に刺激を受けたリック・ベイカーが挑んだもので、人間が狼に変貌する姿がリアル。
こういうリアルさって、なんて言えばいいんだろう。今ならCGを使って、もっと滑らかで見た目は遥かにそれらしくできるのに、手作業で作ってたこれくらいの時代の特殊効果の方がリアリティを感じる。
スクリーンを通してとは言え、そこにいる（ある）という“実在感”みたいなものを、人間て意外と敏感に感じるのかもしれない。

ちょっと本筋から外れてしまったけど、過剰に期待しなければ、変身シーンはもちろん、80年代っぽいユルい雰囲気が今も楽しい作品です。
主役の男はプロ野球選手のカブレラに似ているので、カブレラマニアの方もどーぞ。

人からオオカミ男へ変身する場面の特撮がすごい。公開当時、映画館で見てびっくりしたのを思い出します。この変身場面は一見の価値があります。ジョン・ランディスらしい、人を食ったストーリーは、当時はあまりよく理解出来ませんでしたが、今見てみると実に面白い。変化球の楽しさに溢れていて、傑作だと思います。

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既に「ライカンスロープ」モノの古典的名作になってしまいましたね。
アメリカンとか言うと薄くて安っぽい感じを受けますが実は内容はカナリ濃いです。
狼男が熊っぽいとか俗な事は言いっこ無し。
幻獣を見た者なんて実際にはいない訳でどんな形体をしていようと、それは製作者のイメージなので構わない訳です。
恐竜の肌にしても対比出来る資料が無いので「唐草模様」でも良いと言う学者も存在します。

人狼に噛まれた者は人狼になる。
ゾンビと異なるのは対象者が「故人」になってはならないと言う事。
ですが人狼に「惨殺された者」の魂は天には召されません。
人狼自体が「不老」で有る為に彼等の魂は人狼の魂に引き摺られる形で痛みと悲しみを背負ったまま現世に留まる事になってしまいます。
主人公デヴィットは友人ジャックとバックパックを背負っての貧乏旅行の際にひょんな事から人狼に噛まれ、その呪いを引き継ぐ事になってしまいます。
人狼の呪いを解く為には、その血縁となってしまったデヴィットの命を絶つ必要が有る。
既に腐った死体になりつつ有る親友ジャックのシニカルな台詞が悲しくも可笑しい。
好むと好まざるとに関わらず「負の遺産」を背負ってしまう事は有る。
それをどう処理するかと言うのは個人の資質の問題。
この物語に於いて、主人公はその若さから悲劇的展開した見出せなかった様です。
ブルームーンと言う悲しい響きの有るテーマソングも実に良い。
現在でも十分に楽しめる、一風変わったコメディーホラーだと思います。