あなただけ今晩は

にゃおさんの仰る通り「んなあほな！」の連続です。
でも、それがすごく楽しい映画です。

オープニングから緑色がすごく効果的に使われていて
緑といえば嫉妬の色ね！と思いながら見ていたのですが
やはり愚かしいほど可愛い嫉妬の絡んだストーリーでした。

シャーリーン・マクレーンの若い頃の映画はあまり見たことが
なかったのですが、こんなにキュートな女優さんだったんですね。
口からでまかせの身の上話で、お客の同情をひくしたたかな娼婦なのに
下品さがなくて愛らしい女性そのもの。
まさに’かわいいイルマ’なんですね。
緑のリボンに緑のタイツ、緑のドレスで
ピーター・パン？それとも魔女？といった姿ですが
あんなに可愛く着こなせるなんて・・・

カフェの主人の’That's another story!'で上手くまとめられた
ドタバタ・ナンセンス・コメデイなのですが
たまらなく楽しかったです。
ビリー・ワイルダーの作品、他の作品もどんどん見てみたくなってきました。

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　ケチケチさんのレビューを読んで久々に。
　オープニング・クレジットの文字が緑色、娼婦イルマ（マクレーン）の衣装やリボンも緑を基調にしていて、ちょっとポップかつ奇異な感じを受けますが、それがこの映画がリアルというより作りこんだ「お話」なのだということをよく表していると思います。『アパートの鍵貸します』よりもナンセンス度が高くなっていて、どちらかというと『お熱いのがお好き』（傑作！）に近いです。そういえば、どちらもジャック・レモンの変装に誰も気がつかない。誰もＸ卿の正体を詮索しない。すれば詰まらなくなりそうなことは、ワイルダーはやらない。そこがとってもいいです。

　アレクサンドル・トローネルの美術はすごくて、パリのレ・アルの市場と、隣り合うカサノヴァ通り数十軒の建物ををスタジオ内に作ってしまった。ごちゃごちゃして猥雑で汚い感じが、ほんとにパリの裏町っぽく見えます。繰り返し巨大な肉の塊や色とりどりの野菜が描写されるのは、もちろんマクレーンのために身を粉にして働くレモンの物語に沿っているわけですが、ともすると悲惨な感じに落ちがちな娼婦の物語を都市生活の日常に取り込んで、軽快なコメディにまとめることを可能にしていると感じました。
　本作のマクレーン演じる娼婦イルマは、オープニングでは偽りの身の上話で客からチップを引き出すというしたたかさを見せますが、映画が進むにつれてあまり賢くなく、人を信じやすい素直さを発揮していきます。当初はあまり可愛く見えなかったイルマが、Ｘ卿という上客をつかんだと喜びビリヤード台の上で踊るシーンでは、すっかり彼女が好きになってしまいました。このイルマは、カビリアに近い感じですね。
　どうにも行き詰まった状況をどう手仕舞いするか、脚本はとんでもなくナンセンスな選択をしますが、びっくりと同時に爆笑です。７０点。

娼婦とそのヒモが主人公の映画なんて…と、実は観る前は敬遠してたんです。
ちょっと下品なイメージがどうしてもつきまとうじゃないですか…。
でも、この映画を観ていて、これっぽっちも下品だとか、お下劣だとか感じることはなかったですよ。
それ以上に、最初から最後までキュートキュート！
ストーリーはロマンチックだし、もちろんビリー・ワイルダー節コメディも炸裂しまくってます。
また、複雑になってしまう人間関係のもつれの描き方も、さすがビリー・ワイルダー殿。
最後にはすっきりしつつも、「あれ〜っ!?」って驚かされるとんでもない演出まで用意されてます。

この映画も、他のビリー・ワイルダー作品に違わず、登場人物がとっても魅力的。
で、その魅力的な登場人物を演じてるのが、ジャック・レモンとシャーリー・マクレーン。
『アパートの鍵貸します』のペアは、この映画でもすばらしいタッグを組んでます。
そして、ビリー・ワイルダー作品に欠かせない、スパイス的役割の登場人物が、今回はカフェの髭マスター。
彼の活躍にも途中から目が離せなくなります（笑）。

40年も前の作品なのに、これだけ楽しめるなんて…。
本当にビリー・ワイルダーは永遠の巨匠だと思います。

「アパートの鍵貸します（１９６０）」がとても面白かったので借りた。

娼婦になんでヒモが必要なのか、（ヒモは娼婦から稼ぎを取り上げるだけで自分は働かないという夢のような身分＝できればなりたい）というのを長いこと理解できなかったが、イルマ（マックレーン）はこう言う。

「Everybody needs somebody. You’ve got to belong to someone, even if he kicks you once in a while.【たまに殴られても独りぼっちよりマシだわ】」

なるほど。説得力のあるセリフだ。【この映画は珍しく字幕がよくできてる。しかし邦題はヘンだ。夜のシーンなどほとんどないのだから。】

世の中には（日本）、娼婦を見下す人がたくさんいるが、この人の生い立ちを見ても、他に選択肢がなかったということが分かるだろう。私は、生きるためにすることは、人を騙さないかぎりすべて立派な職業だと思う。イルマの嘘ぐらいならご愛嬌だ。

シャーリー・マックレーンの魅力が溢れている作品だ。この人は優れたコメディエンヌだと思う。アカデミー賞を初めて獲ったのが５０歳になってからというのが信じられない。（「愛と追憶の日々（１９８３）」＝名画です）
この人は自分の前世を日本人だと著書で言っている。その所為かどうか分からないが、日本人的な顔をしていると常々思う。そして、黒髪で出演している映画の方が、後に脱色して出演した映画より圧倒的に面白い。

マックレーンの映画を他にも観たくなったら、黒髪の作品をまず全部観ることをお薦めします。

この映画は何といってもセットが豪華でいいですね。色遣いも落ち着いた暖色系を配していて、その中に映える緑が印象的に記憶に残ります。
この緑がイルマ(シャーリー・マクレーン)のイメージそのもので、娼婦という役所ですが、汚れ無き可愛い妖精のようでもあり、寂しがり屋で人恋しい可愛さを持つ彼女を引き立てます。一方ネスター(ジャック・レモン)も、生真面目で一途。構図的には「アパートの鍵貸します」をさらに単純化したような人物設定ですから、汚れ無き純なものに触れるという意味での満足感は同じものが得られます。

元はミュージカルということで、テーマ曲も耳に残っていて、久しぶりに見直すと「もっとミュージカル的な演出だったんじゃなかったかな」なんて思ってしまいました。人間の記憶なんて曖昧です。それほどテーマ曲が印象的ということなんでしょうね。
また、セットのトーンもこの翌年に公開されている「マイ・フェア・レディ」(ジョージ・キューカー)と似通っているということもあるのかな。「スペインの雨は平野に降る」という同じフレーズも使われていたりします。

「アパートの鍵貸します」に比べてしまうと、クライマックスの収束力などは見劣りしてしまいますが、シネスコ画面で繰り広げられるカラー作品ならではの良さという点では、見所十分。緑に始まり緑に終わるというイメージが強く印象に残っている映画です。