小さな中国のお針子

文革の嵐が吹き荒れる中国。両親がブルジョアの知識人であったために、再教育と称して奥深い山村へと送り込まれた青年マーとルオ。そこで美しいお針子と出会い、「バルザック」等の西洋の文芸作品が禁書となっていた時代に、隠れてお針子に読み聞かせ、農村の若者達の知と自由を開花させるというのがテーマの様です。
文革の理不尽さを解きながらも、中国山村の人達の暖かさが伝わって来るところもいい。彼らにとっては、初めて耳にするバイオリン。「モーツアルト」の作品を「毛沢東同志にささげる歌」等と言って山村に響き渡るバイオリンの音も美しいし、「モーツアルト」を聞いて酔いしれている山村の人達も可愛い。
村長もわからないが故にモーツアルトが響くのでしょう。
お針子は、新たな自分を見つけ村を出て行く事に・・・
力で抑圧されても、抑える事のできない若者の知識と要求。そして、将来の夢。農村でたくましく、時代に翻弄されながらも生き抜いていく様子を見事に描いています。
舞台となったこの山間は、「三峡ダム」となって水没した地帯だそうです。彼らの辛い青春の想い出も一緒に埋もれたのでしょうか？
私も中国ドラマを見るようになってから、遅ればせながら、この作品を知りました。未見の方には是非お勧めの１本です。

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　「中国の植物学者の娘たち」を観て、そのパープルローズさんのレビューで興味を持ってレンタル。
　ＤＶＤが届いたら、かみさんが
「これ、観たよ」
「・・・」
　私は観た覚えがないぞ・・・？

　全編通して観ても、記憶がない。レンタルしたものの私は観ずにかみさんだけが観たようです・・・

　ダイ・シージエ監督の体験を元に書かれた小説を自ら映画化したそうです。
　中国人でありながら、フランスを拠点として活躍する彼の作品は、やっぱり中国映画ではなく、フランス映画っぽいですよね。
　文化大革命の時の「再教育」なるものが、どんなものかも知りませんし、そもそも文化大革命自体が、私にとっては歴史の授業でさわりを聞いた程度なので、まったくもって他人事です。
　でも、文化大革命の酷さとか、悲惨さは強調されていないので、まあ、この作品に関して言えば、それは単なる背景なんでしょう。

　山水画の幽玄の世界を思わせる山の中で繰り広げられるドラマが、
「いや〜、きれいだね〜」
としか思えないので、本当の意味での鑑賞は出来ないのかも知れません。
「ここなら、仙人もいるんじゃねえ？」
とか思って観てるもんですから・・・。

　ルオとマーに音楽や文学を教えてもらいながら、その知識欲がどんどん膨らんでいく「お針子」。
　結局、最後には映画冒頭でルオとマーが登っていった山をバルサックと共に下りていくのですが・・・。
　微妙な三角関係を織りなす物語が、どちらかと結ばれることではなく、「お針子」が自立していくことで崩壊していくというのは、なんか物足りないとも思うのですが、恋愛映画ではないのでしょうがないか・・？

「君を変えた物は？」
「バルザック」

　一冊の本が「お針子」の人生を変える、というか一歩踏みだす悠木を与えてくれたという話ですが、その後の彼女の動向は明らかにされません。あの村が水没してしまうことを知り、マーが居ても立っても居られなくなり、村を訪れるのですが、この辺の描写は余計なことのような気がしますね。知識を得たことが、お針子のその後の人生にどう影響していったのか考えさせられます。

　映像の美しさには、本当に感嘆しますね。

「文化大革命」と称する、毛沢東が仕掛けた、中国共産党内部の権力闘争は、マスコミ報道を通じても、その過酷さが伝わってきていた。抽象的なスローガンで煽られた青少年たちが、「紅衛兵」と称して、中国全土で、既存の秩序を破壊していた。日本の主要マスコミは、これを「中国における壮大な実験・新しい革命運動」などともてはやしていたが、首都や地方の行政の長や大学の学長などが、三角帽をかぶせられ、首に罪状を書いたパネルをぶら下げられ、彼らに市中を引き回される姿は、中世の魔女狩りを思わせた。　このような時代に、「下方政策」つまり知識階級の子弟を農村に送り込んで、再教育する政策がとられた。　この映画は、監督のダイ・シージェの実体験がベースになっている。　西洋的なものを禁止されひたすら重労働を強いられる、農村での日々の中で、若者たちが、知識欲を失うことなく、したたかにしかもしなやかに生きる姿が、描かれる。特に、お針子の少女や農民との交流を通じて、彼らにも影響を及ぼしていくところなどは、民衆は、権力者の思う通りには、ならないものだという、明確なメッセージである。　少女がバルザックの小説によって、自由に目覚めることになるのは、スポンサーであるフランスの映画会社へのサービス。「文革」当時の中国の過酷な時代背景が描けていないのは、中国での撮影許可を得るための妥協。その中でも、監督の伝えたいものは、中国の山間の農村地帯の美しい風景とともに、間違いなく私の胸に届いた。　

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時は文革の頃、山奥で無知ゆえに今の生活を疑うことなくすごすお針子の美しい少女と、再教育のためその村に送られたブルジョア階級の青年二人の三角関係を描く。
教養がなく従順なお針子が、二人の読み聞かせた西洋文学によって、意志を持つ女性に変貌してゆく様が興味深い。青年達にとって彼女との恋は過去の甘酸っぱい思い出だろうが、彼らを捨てて山を降りた彼女にとってはどうなのだろう。男のロマンティシズムと女のリアリズムはが交錯する。ラストの村がダムに沈む画は、ファンタジック。
キャストは、若手実力派「山の郵便配達」のリュウ・イェと「ハリウッド★ホンコン」のジョウ・シュン。切なく、エロティックに演じる。
中国映画にしては随分垢抜けてるなあと思ったら、これフランス映画なんですね。

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　題名から想像する内容とは違い、文盲の美少女と都会から送られてきた青年二人の青春の一コマを描いている。
　老年に差し掛かった二人の元青年の描き方も大変自然で、素直に最後まで見られた。
馬（マ）バイオリン君の生き方が特に心に残りました。
ダム建設の弊害を知人の中国人から聞いた事がありますが、埋もれていく（水底に沈む）人々の大切な生きた証を映画に残してくれて有難うという気持ちです。
　一番大切な心の宝物は、ヒリヒリした痛みと共に、いつまでも心に残っているものなんですね。

　静かに感動に浸りたいとき、あまり期待しすぎずご覧になってみてください。