ならず者部隊

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　たまたま続けて観たジョン・フォードの『コレヒドール戦記』とつい比較してしまいますが、あちらが理想的な軍隊・軍人のあり方を描いた一種のファンタジーともいえるのに対し、リチャード・フライシャーの本作は、よりリアルな装いを凝らしています。
　主人公の兵士ロバート・ワグナーは、南部の綿花農場を経営する大地主のぼんぼん。この小作人をアゴでこき使う、金持ちのイヤな男が、戦場で人間として成長していくという物語です。ワグナーの出自は、意外なほど長い回想シークエンスで語られますが、僕にはここが大変面白く思えました。フライシャーの淡々とした演出は、イヤな奴とかヘンな奴を描くのにとてもいいんです。
　太平洋戦争末期の南の島の攻略作戦に参加しているぼんぼんは、いろいろ辛い経験をします。敵である日本兵は、見えないところから狙撃銃で撃ってきて仲間を殺していくし、英語を駆使して味方のふりをするなど、当たり前ですがやり口が汚い。
　同僚とは出自を越えた友情を育んでいくぼんぼんですが、怯えた上官に友人を皆殺しにされてしまうし、少し精神的に病んでいる別の上官（男色家）には、美人の妻を持っていることがばれて徹底的に苛められてしまいます。
　フライシャーの手堅いアクション演出はいつもながら見事で、戦場や軍隊描写はすこぶる良いのですが、まさに上品でハンサムなぼんぼんらしいロバート・ワグナーの存在感が希薄で、いまひとつ物足りません（狂った上官などは非常によいのですが）。そのためでしょうか、戦争はリアルなのですが、主人公の成長の過程が紋切り型で、終盤のヒーローめいたアクション満載の活躍もあり、尻すぼみとなってしまったように思います。たとえば、カーク・ダグラス主演なら、もっと良かったでしょうね。
　もちろん、娯楽映画としての出来はよいので、安心して観ていられますけれど、天国と地獄の間（原題）というほどの深遠な中身にはなっていないような気がします。また、反戦映画というよりも、汚い奴はどこにでもいるという、人間ドラマなのだと僕は感じました。６５点。

　戦争に負けると反戦映画を作ると、日本の戦後の映画を観て思っていたので、ベトナム戦争以前のアメリカ映画にはそういうものは無いと思っていた。でも、ベトナム戦争以前にも反戦映画・厭戦映画・軍隊批判映画が意外とある。これもその一本。
　主人公は若くして農場主になり、苦労知らずゆえに小作人をこき使うが、戦場で小作人と共に戦う。そこで、人間的な感情に目覚める主人公。
　なんでもない音に過敏に反応して部下を誤射する、両脇にいつも部下をボディガードとして置いているという描写は「プラトーン」を連想してしまう。ベトナム戦争はアメリカの威光と理想を砕いてしまって、アメリカの正義に揺らぎがおこる。７０年代のアメリカ映画にベトナム戦争の敗戦が影を落とすことになるが、正義の戦争ということにいささかの揺らぎのない第２次世界大戦以後、ベトナム戦争以前にもアメリカ映画に反戦映画、軍隊批判映画があったのだ。それを娯楽映画の枠のなかに描いている点は高く評価したい。主人公の回想形式で話が進行するのは煩わしい構成だが、作品の体裁は低予算のアクション映画という風味である。だから、観客に考えさせる作品だとは観る以前には思わなかったのだ。
　
　
　
　

南部の大農場の苦労しらずの主人公が戦場で、前科者ばかりの
ならず者部隊に配属されて、人間的に成長していくということになっているが・・・
主人公のエッセンスがまるで見えてこない。
日本軍の描き方も、まるで噴飯ものである。５０年も前の作品では仕方ないかも。
まさに典型的なＢ級映画です。