エレファント

観てしばらく経つと、大まかな内容をすっかり忘れてしまった。
と言っても、映画館を出たら何も残らないハリウッド娯楽作的な意味合いではない。
各シーンに明確な文脈があるわけではないので、物語としての骨格が記憶に残らないという感じ。それなのに、数年前に初めて観た時から、ずーっと心の中にひっかかり続けている作品だ。

コロンバイン高校銃乱射事件当日の情景が、淡々と綴られる。
その描き方が独特。ほとんどがアドリブだという高校生たちの何気ない会話や、連続性の低いエピソードが積み重ねられていく。まるでドキュメンタリーのようでもあるし、不思議な浮遊感を持ったファンタジーのようでもある。

そこに突然襲いかかる絶望的な暴力。唐突な分だけ、余計に強烈だ。

この暴力を生み出した原因を考えろということなのか、それとも暴力そのものの恐ろしさを感じろということなのか、作品の中で明らかな示唆はない。観る人それぞれが、どう捉えるかだろう。

タイトルの由来である「群盲象を評す」ということわざに、まさしく相応しい作品だと思える。

ほぼ真四角のスタンダード画面なので　映画館で観客が軽く動揺する　俺はこのサイズの映画が大好き
この映画に対する最大の疑念は　結局本質には何も迫ってはないのではないかってこと　だと思うんだけど　そして黄色い衣装と「月光」とくれば　オリヴェイラの傑作「エイブラハム渓谷」の引用なわけで　この審美的態度も疑念を広げる　　

ガス・ヴァンのアプローチはこのスタンダード画面とステディカム撮影のスタイルに賭けているのだと思う
四角く狭い画面を　ひたすら滑らかにステディカムが走りぬける　そのとき我等は学校とゆう閉塞空間と　外に広がる可能的世界
とを同時に捉える事となる　そこでさりげなく拾われる　通販の銃器であるとか　いじめとかのエピソードが不気味な潜在する諸問題の記号的アプローチとなるのだろう

エレファントとは盲人と象の故事から　取られているのだそうだが　盲人が象の全体像をなでさすり探る姿は　この画面と撮影のスタイルそのものではないか

映画は死の予感（期待）と共に進行するのだが　この殺戮の場面の即物性は衝撃的だ　ガス・ヴァンは腰を据えて断固として
これを演出する　あとからかなりきいてくる

ここでもう一つのエレファントを是非　紹介したい　それは
モフセン・マフマルバルの「パンと植木鉢」
モフセン自身の警官襲撃事件を回顧再現する内容であるのだが
これが構成演出がそっくりなのだ　そして最後の最後の一場面
に真の感動が訪れる　人はそこでこの映画が　和解の「エレファント」であることを知るであろう

１９９９年のコロンバイン高校の拳銃乱射事件を題材にした映画で、各方面で絶賛されていたが、とにかく淡々と・・・という印象だった。
友達同士のくだらないおしゃべり、アメフトの練習風景、図書館や食堂の様子など、どこにでもありそうな高校の日常の様子が淡々と描かれる。抜けるような青い空や、主人公の金髪と黄色いＴシャツで、かなり乾いた感じのする映像。それがラストの拳銃乱射という悲劇にむかって、すこしずつ収斂されていく。静かで淡々としているが、怖い映画だった。

※このユーザーレビューは作品の内容に関する記述が含まれています。

レビューを表示する

ガス・ヴァン・サントは、全ての少年少女たちを同じ地平で描いている。もし、犯人の少年二人を主役としては描けば、彼らが「悪」になったり、いじめの「犠牲者」だったりして、必ずそこには「対立軸」が存在する。しかし、何かと何かを対立させる見せ方を、この作品は一切拒んでいる。そこが、実に印象的なのだ。

そのことによって、浮かび上がるのは何か。本作は、日常に静かに溶け込む暴力を表現しているのに間違いはないが、私が感じたのはむしろ、凶行を行う少年たちではない、普通の学生たちの日常の空虚さだ。一人ひとりの学生の名前が紹介され、カメラは後ろ姿を捉え続ける。それぞれの学生が交差することはあっても、交錯することは一切ない。その描き方はまるで、路線図の上を黙々と通過する地下鉄のよう。衝突することは決してないのだ。

「クラッシュ」という作品で、人間はクラッシュして浮かび上がることがあると書いたけれど、彼らはクラッシュしない。ただ、横をすり抜けていくだけだ。そのことを、淡々と後ろ姿を捉え続けるカメラワークが如実に物語っている。だからこそ、たった一度のクラッシュに心奪われる。犯人の少年たちがジョンに「中にはいるな。地獄になるぞ」と語りかけるシーンだ。それまで、少年たちが交わすのは日常会話に過ぎなかった。ようやく登場人物が相手の領域に踏み込む表現が出るのだが、それがこの警告の言葉。実にやりきれない。

確かに多くを語らない映画である。学生の虚無感と交錯しない若者たち、という印象だって、もちろん私なりの感じ方。しかし、ただひたすらに少年たちの後ろ姿を追い続けるという手法をなぜガス・ヴァン・サントはチョイスしたのか。その点に思いを巡らせると、鑑賞後も様々な考えが頭に浮かぶ。81分と短い作品だが、鑑賞後の余韻はいつまでも続く。

※このユーザーレビューは作品の内容に関する記述が含まれています。

レビューを表示する

いじめられっこ
いじめっこ

どちらが悪いと言えば、当然いじめっこである

しかし、うちの子が「いじめられる」と以前いった事があり、
話を聞いた。
当然ながら、何もしてないのにいじめられる訳等無い。
いじめられる方にも、なんらかの原因があったりする
当時うちの子はすぐに「ウジウジしてすぐに無く子」だった。
「それをやめろ、男らしくシャキっとしなさい。ウジウジしてたらあかん！それが出来てもいじめられるなら又言いなさい。いじめる子は悪いけど、考えてみ、ウジウジしてすぐ泣きべそかく子見て、気持ち良いか？言い返す事もせんと、ただ泣くだけで、偉そうにいじめられるとか言うな！自分の態度を変えて、それでもまだいじめられるんなら言うといで！」と息子に言った事がある。

うちの子供たちは格闘技を習っていたので（長男のみ現在も習っている）「絶対に手は出すな」と言ってある。
それぞれの家で取り決めはあるだろうけど我が家では
○（男の子は）女の子には絶対手を上げるな。
○自分からケンカは売るな
○売られたケンカは我慢できなかった場合のみ買え
○物は持つな、素手で戦え
○うろたえるな、逃げ腰になるな、なめられるな。
どこか間違ってるかもしれないけど、これが我が家の方針です。

我が家ではケンカをしても絶対に手を出すケンカはしません。
それぞれに自分たちは普通の子供より強い、と自覚し、傷つけると知っているからです。

こんな子供でも理解しているのに、なぜこの作品の少年2人は銃まで購入し、何の罪もない生徒までも殺してしまったのか・・・
「なぜ」の部分が深く伝わらなかったので理解が出来ない。
「なぜ」の意味は案外どうだってよかったのか

いじめられてる生徒の意見をちゃんと聞いてくれ！
この言葉は生徒として、きちんと教師に伝えるべき言葉である事は理解出来る。だからといって、殺す理由にはなっていない。
関係ない生徒までが殺される理由としては一切関係無い。

銃が通信販売で買えるなんて、信じられない。
しかも未成年が、いとも簡単に。

いろんな可能性を秘めた大勢の高校生達の未来を奪ってしまった。

実話なので、ドラマティックでは無いです。
はじめは良くある普通の高校での風景。
なんでも無い会話が色んな生徒目線で写されていく。

見てて辛かったです。
悲しかったです。

決してお勧めしたい作品ではありませんが。
悲しいかな嫌でも心に残りそうな作品です・・・



　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　pokorou