モーターサイクル・ダイアリーズ

この映画は革命家エルネスト・チェ・ゲバラの南米旅行日記を原作としており、伝記映画であることは間違いありませんが、政治的な匂いが全くしないところに好感が持てました。裕福な家庭で育ち、喘息の持病のあったエルネスト。この映画に描かれている南米大陸縦断の旅にでたころのエルネストはまだ若く、陽気で人なっつこくて、無鉄砲だけどどこか甘えん坊で、とても後に有名な革命家になるようには思えません。そんな彼が南米の国々の過酷な現実を目のあたりにして、精神的に成長していく姿を描いたすばらしい青春映画だと思いました。「水着を買ってきてね。」と彼女から渡されて、大事にしていたお金を、過酷な労働に耐える人たちにあげてしまったり、ハンセン病の療養施設での最後の夜、「隔離されている病気の人たちと過ごしたい」と病弱な自分の体を顧みず川を泳いで渡ったりするところは、彼の思想的なバックグラウンドとなるエピソードだと思います。
南米の自然も美しいし、音楽もいい。（ちなみに２００５年アカデミー賞歌曲賞を受賞していますが、歌曲賞の受賞のみというのはものたりない気がしました。）
ガエル・ガルシアファンの私は、もちろん映画館でみましたが、絶対もう１度観ます！！

蛇足ですが、先日別の映画のDVDの新作情報で「チェ・ゲバラとカストロ」という作品があることを知りました。なんとガエル・ガルシアがその後のチェ・ゲバラを演じているのです。予告編をみた限り、なんだか安っぽそうで、せりふも英語。（ちなみに「モーターサイクル・・・」の方は、サレス監督が映画化のひきうけるにあたり、スペイン語で撮ることを条件にしたそうです。）「モーターサイクル・・・」の感動が薄れてしまうのがこわいけど、やっぱり観てしまうでしょうね。

私も最近865ccのデカいバイクを新調し、走りたくて走りたくて仕方がないという今日このごろに、たまたまこの映画を観る機会を与えられました。
まず、バイクに乗るものとしては、これほどうらやましい旅はないだろうな〜と思わされたのがまずこの映画の第一印象。
Nortonのバイクは今観てもカッコイイ！
現在でもNortonのバイクがあったら、私は買っちゃってたかもしれないな…。
しかしながら、かなり予想外だったのは、『モーターサイクル・ダイアリーズ』でありながらも、中盤ぐらいで、そのバイクが壊れて退場しちゃうこと！
それでも徒歩で旅を続ける、ゲバラとアルベルトの意志には脱帽。

そしてもう一つ悔しいのは、日本が島国であることかな。
陸続きに国がある大陸って、本当にうらやましいと思う。
そんなこと言いながらも、私はその日本の100分の1ほどしか足を踏み入れていないと思うのだけれども…。

すごく印象に残るのは閑散としたマチュピチュで日記を書く2人。
私のあこがれの地マチュピチュだけれど、今となっては観光客でごった返してしまってるんだろうなぁ…なんて考えたりもしました。

…と、ここまでは全然映画のストーリーには関係ないことばっかり書きまくってしまいましたが…。
この映画を観終わって思ったのは、この映画の主人公が“ゲバラである”ということが宣伝文句になっていたものの、
そこは全く重要なポイントではなかったということ。
確かに、ゲバラがいかにして偉大なる革命家になったか…そのきっかけの“片鱗”ぐらいはこの映画でもかいま見えるのだけれど、
そこが重要なところではなく、旅とはなにか、旅で何を感じ、どう考えるのか…ということを疑似体験できることがポイントだったのではないか…と思いました。
職を探して放浪する夫婦、土地を追われて途方に暮れる小作人、ハンセン病の療養所で暮らす人々、自分を捨てる遠い地の恋人…。
私もゲバラ＆アルベルトと一緒に何かを感じることができました。

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チェ・ゲバラは、愛称で、本名はエルネスト・ラファエル・ゲバラ・デ・ラ・セルナらしいです。
元々医者を目指していたゲバラが何故革命家となったのか？
そのきっかけとなる内容です。
裕福な家庭に生まれ、家族に愛されて育ったゲバラが、友と二人で南米大陸を旅しながらだんだんと変化していく彼らの姿が印象的です。

南米政治の屈折と矛盾、そこで暮らす人々の貧困とを織り交ぜて、雄大な景色と共に、彼らの見聞きしたものを淡々と見せられます。
アマゾンの奥深くハンセン病患者の隔離施設に入ると、なおざりにされている彼らに、ショックを受け、経済の発展の裏側に追いやられた人々を目の当たりにし、けれども混血民族として生きる誇りを見出してそれぞれに生きている人々を見て、理想的な暮らしとかけ離れた生き方の現実として、人間の生きる価値というのを疑問視するようになったような気がします。
彼らの心優しい二人の旅の記録として描かれていたことが 、美しい映像として引き立っています。

映画の冒頭でも、「これは、偉業を讃える映画ではなく、同じ夢を持った二人のロードムービーである」と記されています。
ラストに出てきた老人が、当時ゲバラと一緒に旅をした友人であり、その佇まいにちょっぴり哀愁を帯びた感慨深さを感じてしまいました。

　ああこれは映画館で観たかった。

　どんなに仲が良くても、ふたりで長く旅をしていると、だんだん気持ちがささくれてくるときがある。その日の日程や、ルートの取り方、ご飯の時間。しまいには宿はいっしょでも別行動を取ることになる。何でいっしょに旅しているのか？　なんて考える。バイクじゃないけど、学生時代に友人とふたりでヨーロッパを旅した。そのときのことをいろいろと思い出した。

　美しい自然の中を走る、二人乗りのバイク。様々な人々との出会いが、短いエピソードをいくつも重ねていく形で、つづられていく。途中、あまりに羅列的で、ひとつひとつのエピソードの掘り下げが薄いなあとも感じたのだけれど、観終わってみると映画はとてもよい印象に変わった。出会った人々をモノクロの映像で振り返る（これが写真ではなく映像なのが面白い）ことで作り手の意図はよりはっきりすると思うのだが、この映画はゲバラの若い頃の「アルバム」をつくるような気持ちで撮られたのではないかと思う。
　実際のふたりの旅そのものを再現するというアプローチではなく、映画はふたりの「記憶の中の旅」を描こうとしたのではないか。それはいったいどう違うんだといわれると困ってしまうけれども、作り手の視点が一貫して映画の中の時制の外側に置かれていて、過去を振り返る姿勢に貫かれている。そのことが僕自身の過去の旅の記憶を刺激するような気がするのだ。

　何カ国かをともに巡り、パリの名画座で仏語字幕つきの『第三の男』をいっしょに観て、友人は予定通り帰国した。僕はひとりでアラン島を目指した（彼とはいまでもいちばんの友だちだ）。僕がその頃乗っていたのはカワサキの４００cc、いまはチャイルドシートつきファミリーカー。また旅に出ないか？　映画に誘われているような気がして胸がざわつく。
　素敵な青春映画だ。

パープルローズさんに心からの感謝を。

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この映画を鑑賞後、図書館に行った。実在したチェ・ゲバラを深く知らないという悔しさ、さらに彼を知りたいという欲求に駆り立てられる。この映画はこんな魅力がある。娯楽で終わらせずその先を探求させる力。そして、製作にアメリカが関与していることも価値あるように思う。

彼の日記、その裏表紙を読むと、この旅の記憶が彼の人生を変えたとある。あと、受売りで申し訳ないが、スペイン語通訳の友人に教わったのだが、「チェ」とはキューバ人に名付けられたそうだ。

ロードムービーは人間ドラマの描写が稀薄になるのでストーリーは地味になりがちだ。が、生真面目で、洞察力に溢れ、感性豊かなゲバラ、女好きで口から出任せを言うが憎めない男アルベルト、この2人の役者の演技、そして広大な南米大陸の風景、この2つを観るだけでも価値があった。

南米大陸の大自然は映像を通して観ているにもかかわらず、場面ごとに、木立の香りを嗅ぎ、土埃に噎せ、水の冷ややかさを感じるといった不思議な感覚に襲われる。そう思った途端、旅先で束の間の時を「現実」を目の当りにして過ごす事になる。静かな映像ですがその中には琴線に触れるものがある。これはワタクシが2人と一緒に旅している証拠。ウォルター・サレス監督の作品は「セントラル・ステーション」のみの鑑賞ですが、この2作品から分かることは彼の手にかかると景色の雄大さに情緒が加わり、平坦な印象で映画が終わる事は無い。注目したい監督です。

ガエルは抑揚に乏しい演技と捉えることもできるが、彼は自分の持ち味をよく理解している役者。この映画で新境地を開拓したにちがいない。さらに、アルベルト役のロドリゴはシリアスでドキュメンタリータッチに成りがちな展開を上手く締めている。ロドリゴあってガエルの演技が活きる、と言う捉え方も出来る。

終盤、ハンセン病療養所の皆に、期待と不安を抱かれ見守られながら対岸まで川を泳いで行く若き日のゲバラがいた。生ぬるい感動だけでは無かった。だが、考え深く、感じやすい心を持ったこの青年が本当に革命家として生きる事になるのか？革命は綺麗事ではない。崇高な理想を現実にし、貫くために彼は「殺せ」と口にしたに違いない。「殺せ」。この青年が…。信じ難い事だ。

ラスト、アルベルト本人が出演しています。そして、エンディングに流れる音楽もいいですね。