ライフ・イズ・ミラクル

　この映画は、捕虜になった女性に恋をしたセルビア人男性の実話に基づいているという。まるで「ロミオとジュリエット」のようなお話だけれど、シェイクスピアの悲劇とは違ってやたら明るく賑やかで馬鹿馬鹿しくも楽しくおまけにベッドが空を飛んだり、とても戦争中の話とは思えない能天気ぶり。

　裸で野山を転げまわる楽しいラブシーンが続いたというのに、突然のようにお話は現実に戻ってしまう。明るく陽気だった空には雪が降り、サバーハは瀕死の重傷を負い、もはや彼女の命は風前の灯……。停戦はいつ？　息子は無事戻ってくるのか？　サバーハの命は助かるのか？　二人の恋の行方は？

　
　あれれ？　市長はなんで暗殺されたの？　密輸がらみ？　密輸事件はいったいどうなったの？　人食い熊を退治する話は？　話があっちにうろうろ、こっちにうろうろ。いつの間にか登場人物がいなくなったと思ったらまた戻ってきたり、なんだかよくわかりませ〜ん。コメディだからいいのかなぁ。クストリッツァ監督ってそんな細かいことは気にしない質（たち）なんだろうか？　牧歌的な映画ですなぁ。

　とにかくストーリーはまともに作られていないって感じ。それよりも、一つずつのエピソードが面白ければそれでええやんか、という映画なのだ。

　こういう面白おかしい「反戦映画」は、気に入る人とダメな人が極端に分かれそう。最後は哀しくも切なくも温かくも不思議な余韻を残します。ほんとにロバって可愛いわぁ。動物がたくさん登場するのでお楽しみ。これがまたいい感じです。

さ〜て、このタイトルの意味は一体何なんだろう？と、思ったら本作をご覧になって下さい。エミール・クストリッツァ監督の不思議な世界を堪能できます。これまでの大作に比べると、こじんまりとした人間ドラマ、人生賛歌の仕上がりになってました。９２年のボスニア紛争の時代。人々の平穏な日々、と言っても、少し騒々しい盛り上がり方で、慣れない方には、ちと抵抗ありかな〜・・・音楽は、いつ聴いても良いですね。鉄道が完成してないので、車が走っている風景なんか、のどかです。鉄道技師ルカの様々な苦難の日々が、ちとわかり辛く続くのですが、中盤から後半にかけての、彼の愛を取るか、捕虜になった息子を取るかの、苦しい選択を強いられる辺りから、ドラマの盛り上がりを感じました。そんなシーンの中で、彼の喜びの表現に、空を飛ぶベッドシーンが、なかなか素敵な光景でした。そして、彼と共に、もう一人？の主人公ロバちゃんが、とても存在感あり。失恋して自殺願望とか・・訳の分からん展開ながら、ラスト、人生捨てたもんじゃない！！と、感じさせてくれたかな？

この監督の作品は「アンダーグラウンド」「パパは出張中」など、タイトルは知っていましたがみたことはなかったので、これが初めて。独特な不思議な世界ですね。
田舎とはいえ内戦のさなかなのに、みんなすごく陽気。
人種問題や宗教紛争など、この土地の歴史に疎いせいもあって、前半はちょっとわかりにくかったです。それに、この映画の鍵となるムスリムの女性サバーハが登場するまでに１時間以上、長いです！
でも後半、主人公のルカのサバーハをとるか、息子をとるかの葛藤は、なかなか見ごたえありました。
失恋の絶望で自殺を図ろうとするロバ（ってそんなのあり？？）ほか、動物たちが大活躍で楽しいです。そして動物にいろんな意味がこめられているのですね。

不思議な感覚の残る映画です。
ドタバタしたコメディー、ラブロマンス、動物ののどかな雰囲気、ベッドが空を飛ぶといったファンタスティックな演出、それらが内戦に対して非常にシニカルに扱われています。
ラスト近くヒロシマがちらりと引き合いに出されますが、一発ドカンで終わるような戦争とは全く次元の違った、のどかな田舎町にジワジワと浸食する内戦の暗い影が、コメディーやファンタスティックな演出に相反して印象に残るんですよね。

しかし、前半のドタバタコメディーが長すぎ。しかも、描かれている熊狩りや市長の暗殺といったエピソードが、一点に向かって収束しないですから、ただ雑多で騒がしく無駄な描写に思えます。密輸のエピソードの扱いなども、ストーリーの軸になりそうであって、軸として機能していないですから、まとまりの悪さを感じてしまいます。
サバーハがルカの家に転がり込むまでの展開がもっと整理されていれば、この独特の演出の味は高く評価したい映画なんですけどねぇ。5段階評価は3。

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何にも知らされないで、いきなりこの映像を見せられても、クストリッツァ監督の作品であるとわかるであろう。喧騒的なジプシー・ブラス。生き生きとした動物たちの姿。ハイテンションな登場人物たち。いかにもいかにもというクストリッツァ監督の特徴に溢れている。ハチャメチャで即興的な作りのように見えるが、感情表現など緻密で繊細に描かれている。