佐賀のがばいばあちゃん

泣かせますよ的なものを前面に押し出した作品は好きではないが
祖母と孫に当時の時代背景からくる説得力を考えれば、中高年層には懐かしく、若者には祖母や祖父はＡＴＭではなく、時には誰よりも頼りになる存在だと認識させてくれる作品である。

だが、どうしても島田洋七氏のキャラが頭から離れず、原作自体がフィクションではないのか？という疑念から、わたしは素直に楽しめなかった
なまじ話題になっただけに、後追い商法丸出しが見て取れ
作品自体は秀逸な出来なので、観客の先入観が無ければ、もっと評価は高く文部省推薦くらいはいけたかもしれない
勿体無いと言えば勿体無い作品。

原作を先に読んで、泉ピン子のテレビドラマ版も見ました。
そして、最後にこの映画版を見ました。

話の筋もだいたいの台詞もわかっているのに、
笑えるところでは笑ってしまうし、泣き所は泣いてしまう。

原作もドラマも映画も、甲乙つけがたいですね。
どれも、良かったと思います。

ただ、映画版はばあちゃん役が吉行和子で、
もちろん演技は申し分ないのですが
原作のイメージからすると上品過ぎる気が・・・
もうちょっと庶民的な人が良かったかも。
と言って誰が良いか具体的には思い浮かばないのですが。

これは、原作を読んだ時点で中１の長男にもすすめて
回し読みをしていたので、映画も子供たちと一緒に見ました。
長男はもちろん、小１の次男もすっかりトリコに・・・。
次の日になってからも、昨日のばあちゃんの映画は面白かった
と言っていました。

近時ちょっと流行りの〈昭和ノスタルジー〉作品。
『ＡＬＷＡＹＳ三丁目の夕日』が都会版なら、こちらはその地方版か。
さらりと流れすぎで、もう少し刺激がほしかったかな。
吉行和子さんは品がよくて、「がばいばあちゃん」のイメージから離れている。泉ピン子さんあたりならピッタリのはまり役だったかもしれない。
運動会の日、ひとりで「日の丸弁当」を食べる明広少年に複数の先生が気遣いをみせるシーンはよかったね。
「貧乏」であることを恥じる必要のなかった時代。
かつて日本にも、確かにそういう時代があった。

　ケチは必要なものも用意しようとはしないこと。
　
　節約は必要なものをどうにか工夫して用意すること。

がばいばあちゃんの生活を見ていると、そんな風に思いました。
ばあちゃんは、ケチはいかん、でも節約はせないかん・・・といいます。
ケチと節約は似てるようで、紙一重のようで、そうでないことが、ばあちゃんを見ていると判ります。
歩く時もただでは歩きません。
自然と鉄くずが拾えるように工夫して歩きます。
裏の川だって、ただの川では終わらせません。
流れるスーパーマーケットです。
ただ欲しいものが必ず手に入るわけではないところが難ですが、この川のお陰でいろいろなものが手に入ります。
ばあちゃんの生活の知恵です。
勉強だって、やってもこれ以上は頭よくならせん、電気代の無駄じゃあ！と言って消してしまえば、なんだかあっけらかんとしていいではありませんか。
英語の答案用紙には、”わしは日本人じゃけん英語は判りません”と書いておけばいい、
歴史は”過去は振り返りません”と書いておけ、とまあその珍答ぶりが潔いこと。
貧乏にも、暗い貧乏と明るい貧乏の2通りあって、うちは明るい方の貧乏じゃ！と明るく言ってのけるばあちゃんらしい、明るい答えに先生もきっと○をくれたことでしょう。
みなさんの言われるとおり、吉行和子さんのおばあちゃんでは品が良すぎて、迫力が少し足りなかったかもしれませんが、そこは名女優、さすがの演技だと私は思いました。

ただ、洋七さんには申し訳ないけど、この程度のがばいばあちゃんは、昔は普通のことだったのではないでしょうか。
昔のおばあちゃんといわれる女性は、みんながばい人ばかりでしたから。
貧乏が恥ずかしいことではなかった時代の女性は、こんな生き方が普通のことだったのではないでしょうか。

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原作本が話題になり、島田洋七がテレビに出突っ張りの時期がありました。
その時の、洋七さん本人が語る「がばいばあちゃん」のエピソードの方が数倍面白く、映画ではちょっぴり残念な感想を持ちました。
原作本があり、世間に知られた人の自伝なのですから、あまり脚色は要らなかったのではないでしょうか？
現在の設定も、あえてサラリーマンにせず、漫才師でよかったと思うのですが。
また、冒頭で泣きじゃくる少年を見て、自分の子供時代を回想するまでは良かったのですが、その後のストーリーに、三宅裕司の登場は、全く必要がなかった様に感じました。
さて、こんな風に悪口雑言をたたくのは、期待していた反動です。
洋七さんが語る「がばいばあちゃん」は、もっと活き活きと魅力的でしたから。（演じたのが吉行和子さんで、品がありすぎたのでしょうか？）
それでも、がばいばあちゃん語録は、ユーモアと逞しさ、何よりも困難を乗り越える力を秘めています。現実をしっかりと受け止め、今あるものの中で精一杯生きています。
「辛い話は、夜するな」というのは、確かにそうだと思いました。
歴史が苦手だという明広に「過去にはこだわりません」
ふと、「あしながおじさん」の中で、ラテン語が苦手なジュディが「あんな時代遅れのことば」と言っていたのを思い出しました。
武田鉄也のお母さんも、相当面白いことばを発した人でしたが、共通しているのは、どんな環境にあってもユーモアを忘れず、多少のことは笑い飛ばすくらいの逞しさがあったことでしょう。
それは決して消極的なのではなく、あるがままに全てを引き受けて、どうせ貧乏なら明るい貧乏！という前向きな生き方、強く生き抜くための生活の知恵と言えるかも知れません。