ペルセポリス

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イラン・イスラム革命、イラン・イラク戦争と１９７０年〜９０年代のイランの近代史をフランス在住のイラン人作家が、自身の体験を基にして描いたアニメなので暗さはなく、新鮮な感じで見れました。

しかも、革命後のシャリア（イスラム法）による女性に対する人権問題がメインで、政治や宗教の問題も扱っているのですが、市民レベルの視点で描いているので、興味深く見れました。
彼女は、ウィーンに留学をしたりと上流階級なので、一般市民を描いてはいないのでしょうが、家の中では自由なので、こっそりロックを聴いたり、パーティをしたりと身近に感じます。
しかし、そのすぐ隣で、戦争が起きていて、知り合いが命を落とす。そんな現状も垣間見れて、イランの現状を知れただけでも価値ある作品だと思います。

登場人物では、おばあちゃんのキャラが良かったです。
おばあちゃんは、随所に登場し、主人公を癒す存在であり、道しるべとなるとても素敵な人。
枯れても、ジャスミンの香りなど女を忘れず、確固たる人ですね。

ラストのセリフを聞いた途端、ここで終わることの意味を感じました。ひいては、映画全体の意味に気付かされ、すっかりやられてしまいました。
主人公と母親の声を、実際の母娘のキアラ・マストロヤンニとカトリーヌ・ドヌーブが吹き替えをしているのも良かったです。

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モノクロのアニメなんて大丈夫かな？とちょっと心配していましたが、杞憂に終わりました。絵そのものはそんなにうまくないのかもしれませんが、同じ黒でも濃淡のつけ方で非常に表情豊かになっています。雪の白も黒に映えて印象的です。

７０年代から９０年代にかけての激動の時代のイラン。
ナイキのスニーカーとブルース・リーを愛する、元気で好奇心いっぱいの少女マルジ。成長するにつれ、その自由で時に反抗的な言動で問題をおこすようになったマルジは、祖国を脱出し、ウィーンへ留学する。

ストーリーそのものはかなり暗いです。
この時代のイランのことについてはよく知りませんでしたが、体制がかわることで多くの無実の人々が反政府主義者として殺されたり、厳格なイスラム主義を強制され、特に女性は大変な不自由を強いられていたのですね。
裕福な家庭に生まれたマルジはまだ幸運だったのかもしれない。
しかし、祖国イランにいても、外国にいても、自分の本当の居場所を見つけられず、どこにいても根無し草の異邦人の状態。
そんなストーリーに、モノクロのアニメはよくあっていたと思います。

一方、マルジの体が少女から女性に変わってゆくところの描写や、恋愛中はあんなにハンサムに描かれていた恋人が、浮気が発覚して別れたとたんにものすごい醜男に描かれたりするところはユーモアたっぷり。（この恋人といい、後に結婚する男といい、マルジけっこう男運が悪いですね。）

何があっても支えてくれる家族。特にマルジのおばあちゃんが素敵です。
化粧を咎められそうになったマルジが、たまたま同じ場所にいた男性にセクハラを受けたと警官に訴えて難を逃れたことを、おもしろおかしく話す孫を一喝する。
ただ溺愛するのではなく、一本筋が通ったおばあちゃんの生き方は素敵ですね。
「氷水で冷やすとふくよかな胸が保てる」というおばあちゃんの美容法は本当なのかしら？？ためしてみようかな？（もう遅いか。）

レンタ候補リストに加えた理由は覚えていませんが、なんだっけ？ＳＦ？と開いてみて、出演者顔ぶれにびっくり。
アニメということは声の出演。その興味で観始めたのですが、その事は忘れてしまうほどの珠玉の掘り出しお宝もの作品でした。

ＴＶのニュース報道でしかしらなかったイラン・イラク戦争の実情が、とてもよくわかります。
わかるだけでなくて面白い。主人公マージの一挙一動に引き込まれていきます。
マージのおばあちゃんもほんとに素敵です。頭の下がるはっとする名言の数々。
日本映画「ゴジラ」（イランで上映されてたのも意外でした）を
マルジと観にいった帰りに言ったおばあちゃんの一言には、一時停止して笑わせてもらえました。
滅多に思わないのですが、若い方に（特に十代）観てほしいと思いました。
ペルセポリスはイランにあるペルシア帝国の破壊された宮殿群。世界遺産なんですね。
これをタイトルにどんとすえた主人公でもある作者のマルジャン・サトラビ。
彼女の今の言葉からもその意味が、伝えたい意気込みがうかがえます。
「生きている限り、抵抗し、叫ぶことができるし、
それでもなお、最強の武器というのは笑いなのよ。」
破壊されても失われない美しさと強さ、作者のようなたくましい傑作です。

ミルクチョコさんに誘われて、鑑賞してみました。
おそらく自分だけでは手に取ることなどなかったと思います。
観て良かったです。ミルクチョコさん、ありがとう。

今までに見たことのないタイプのアニメでした。
ほとんどが回想シーンで、現在の人物以外は全て白黒。
人物はいたってシンプルでヘタウマな絵です。
背景は白黒の濃淡でうまく表現していてかなり味わいがあります。
人物もヘタウマな絵ではあるのですが、表情はとても豊かです。

はじめのうちは、ちょっぴりコマッシャクレた女の子マルジャンの
イラン版のちびまる子かと思いながら見ていたのですが・・・
話はどんどん、サクサクと進んでいきます。
哀しくて重い、政治的・歴史的な話も含んだストーリーなのですが
悲しんでいる暇もないほどめまぐるしく進んで行きます。

中東の女性は肌の露出を抑え、不自由な生活を強いられているけれど
それをただ受け入れているのか、反発する気持ちはないのか？
少し不思議に思いながらもあまり深く考えたことがありませんでした。
でも、マルジャンのようにパンクに憧れたり、
パリやウィーンでは不自由な服装から開放されて
自由を謳歌しようとする女性もいるのだと知り
ちょっとホッとした気がします。

大爆笑するようなアニメではありません。
でも、どこかクスリと笑わせてくれるような
シニカルだけれど不思議な魅力いっぱいの作品でした。

不思議な映画ですね。カラーになったり、白黒になったり、白黒の中に色がついたり、独特な世界観に一気に惹きつけられる。白黒の世界は抑圧された生活をひしひしと感じさせるようでもあるし、マルジや両親の不安な気持ちを表すかのようにも感じられる。
でもそんな中でもマルジは、元気に、健やかに、ロックを胸に生きていく。
混乱する時代の中で、人生や恋を模索するマルジ。
運命と思った恋に敗れた時のあの哀しさ、まわりに馴染めず感じる孤独感。
誰もがどこの国でも同じように通る道。
イランが歩んできた歴史、女性の置かれた立場、1人の女の子の生き方、たっぷりのユーモアと不思議な世界観で知らなかった世界を教えてくれる。
そういえば私が子供の頃は海外文通が流行っていて、私はイランの女の子と文通したかったのだけど、女の子は紹介してもらえなかったなぁ。こういう事だったのかな、何も知らなかった。
走ったらダメなんだものね。

おばあちゃんが胸に忍ばせるジャスミンの花びら。ジャスミンの華やかで濃厚な香りがふわっと漂うように、女性としての誇りや、マルジに向ける愛情や、心の豊かさが自然と伝わってくるようでとても素敵な気持ちになりました。
いい映画です。