ぼくの大切なともだち

　「私の葬式にはどのくらいの人がしゅっせきしてくれるのだろう？」。
　映画の冒頭、顧客の7人だけの寂しい葬儀に参加する主人公フランソワ（ダニエル・オートゥイユ）のシーンから映画は始まります。私は会社員では無いので、もし今死んだら一体どのくらいの人が私の葬式に来てくれるのだろうと考えずにはいられませんでした。ただわたしとしては、本当に私の死を悲しんでくれる人が7人もいれば十分嬉しいと思いますけど。

　さてこの作品パトリス・ルコント監督の作品です。監督のこれまでの作品を観てみるとどうも演出過多になりすぎて、作品によってはその演出が煩いと感じるものもありました。
『ぼくの大切なともだち』に関してはこれまでよりはずっと控えめな演出でしょう。逆に言えばかなりオーソドックスな作品だと思います。それは脚本に関しても同様です。これまでの浮世離れしたストーリーでは無く、設定的にはかなり普通のお話です。いやベタと言っても差し支えないでしょう。といいつつもこのベタの展開も悪いとは思えず、程よい主人公の滑稽さも微笑ましく感じます。
　一点気になったのはカメラワークです。演出的にハンディで撮影しているのですが、さらに細かいスウィッシュや短いストロークのズームなどをいたるところに使っているのがうざったいです。それが主人公二人の心情に合わせてシーンごとに意味づけされてつかわれているのであれば良いのですが、結構どんなシーンでも使われているので、その演出の意図がよくわかりません。

　お話としては「Ａ」と「Ｂ」に対するフランソワの友情の天秤の傾きを見る映画です。この天秤の揺れ具合が映画の面白さなのですが、もう少し微妙な揺れがあっても良かったようにも思います。かなり「ガッツン」「ガッツン」という感じで天秤が動いてしまうのでした。
　
　全体としては演出、脚本を含めて落ち着いた感じの映画ではなく少しドタバタとした印象です。しかしそのドタバタ感はコメディ的なドタバタではなく、あくまで映画の印象としてドタバタしているように感じるのです。

　「お前にともだちなんかいない」と本人を前にズバッと言ってくれるの人も大事な友達だ。そんな事を感じさせてくれるラストがあってこの映画の奥行きが少し拡がります。

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「列車に乗った男」「髪結いの亭主」のパトリス・ルコント監督作品ですが、こんなヒューマン・コメディにちょっとびっくりです。
男の友情作品は、数あれど、努力して友達を作ろうとする話なんて、私は初めてです。
友達って何だろう？と改めて考えてしまいました。

自分の誕生日に「お前の葬式には誰も来ないよ」と言われてしまい
「えっ？君たちは友達じゃないの？」
「単に、仕事仲間だから来たのさ」
人生の半ば、ふっと足を止めて振り返ってみると自分には友達がいないことに気付く。
愛想の良いタクシーの運転手ブリュノを友達作りの師匠にして、秘訣を聞こうとする主人公。
急に友達作りのノウハウを学んだって、無理。
多分、友達は作るものではなくて、気が付いたら一緒にいるもの。
だから、いつも傍にいてくれるブリュノの存在にも気が付かない。

初めて、自分には友達がいないと思う恐怖。そして、自分は何事にもお金で解決しようとし我がままだったと気付いた救い。
大切なもの、幸せの感度に気付き、見終わって優しい気持ちになれる作品でした。

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観終わって一言。
「ナイス！ルコント！」

とても友達がたくさんいそうなブリュノ。
フランソワにはそう見えました。
気さくで、優しくて、あったかい雰囲気があるブリュノ。
周りを楽しくしてくれそうなブリュノ。
そんなブリュノも実はひとりぼっち。
友達に裏切られてひとりぼっち。
妻に裏切られてひとりぼっち。
そんな時フランソワに出会う。
フランソワもひとりぼっち。
ひとりぼっちとひとりぼっち。
へんてこりんで微笑ましい日々のスタート。
フランソワとの特訓の日々。
ふたりは一緒。
サッカーを一緒に見た帰りの電車でのいざこざからの全力ダッシュ。
息を切らして走る二人。
自然とこぼれる笑顔。
ふたりは一緒。
おんなじことして、おんなじことで笑いあう。
ブリュノは思う。
友達っていいなぁ。
フランソワは思う。
こういことが友達ってことなのか？
フランソワ「友達みつかった！」
ウキウキ、ブリュノ。
でも、そのあとしょんぼりブリュノ。
ボクのことじゃなかったか・・・
悲しいけど笑ってあげなきゃ・・・
・・・・・・・・・・・・
フランソワが大変だ！
ともだちが困ってる。
ボクが助けてあげなくちゃ。
そしたらフランソワが笑ってた。
フランソワがともだちだってはしゃいでた。
だけどちっとも嬉しくないや。
「涙はどこだ・・・・・」
涙はたぶんボクの心の中。

ここから（「クイズ・ミリオネア」収録あたりから）はず〜っと泣いてました。
ブリュノがステキすぎるんだもの。
最初はブリュノの一方通行。
ブリュノはともだちと一緒にいる時間が幸せ。
だけどフランソワはともだちを作る方法に夢中。
たくさんあった「ともだち」を感じるきらめきの瞬間。
その瞬間はフランソワにとってどんな意味があったのだろう。
そんな二人がともだちになれるまでの心温まるストーリー。
フランスっぽい皮肉もたっぷりのルコント作品。
キツ〜イこと言ってくれるのもともだち。
温かく包んでくれるのもともだち。
ほんとはたくさんフランソワの周りにともだち。
そんなフランソワの成長とブリュノの再生の物語。

ともだちは作るものじゃない。
改めて認識するものでもない。
気付いたら炬燵に一緒に入ってるものなのだ。
気付いたら一緒に走っているものなのだ。
気付いたら同じ景色を見てるもんなのだ。

「君には友だちなんて一人もいないよ」
あんな大勢に囲まれて寄ってたかってそんなん言われたらアタシ泣いちゃうよぉ〜！


”親友”に定義なんてないですよねぇ？
たとえば全国から”親友同士”が１００ペア集まったとする。（←この時点で変な設定だけど。）
そこには１００通りの関係が築かれていて、ひとつとして共通の定義なんてない。
それぞれ積み重ねてきたものって唯一無二であって、言葉や文字では表せないもの。
そんでもって、「私たちは本物の親友なんだぜ！」ってわざわざ証明する必要なんてないもの。

”親友”じゃない”友達”も似たようなもの。
自然とお互いのちょうどいい距離感が保たれる。
少なくとも私は”友達”と呼べる人と無理な付き合いはしてないわ。

ただ・・・、それ以外の部分になると・・・・・、
「親友と友達が数人いれば幸せよ！」とも言ってられないんだよね。
まぁ、ママ友達とか、すこしは無理して接していかないとね。
こどものためにも大切なことかなぁーって思う今日この頃。
何よりも未熟な自分自身を成長させてくれるに違いない。
人格って、やっぱ人間に揉まれて作られるものだと思うし。
「めんどくさーい！」とか言ってたらもったいないかも！

よし！いつもよりちょっと関わっていこうかな。
友達って作るものじゃないんだろうけど、でも一歩踏み出すことで損はないよね！
みんなの「いいとこ」発見しては伝えたいし、盗みたい（笑）

そんな上向きな気持ちになれる映画でした。
特にわたしには良い影響を与えてくれました。

映画の内容そっちのけレビューとなってしまいました。

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「あなたには友達がいない」
「お前の葬式には誰も来ない」
　これはけっこうキツイ発言ですよねえ。私は・・・と考えてみると、葬式にはたぶんそれなりに人は来てくれるだろうけど、
「親友って誰だ？」
と考えると、ちょっと思い当たらないんですよねえ。やっぱり仕事がらみの関係が多いんですよね。
　映画好きの仲間とか友達かもしれないけど、ホントに困ったときに助けてくれるわけではないしねえ・・・。
　会社がうまく行っている時には、しょっちゅう連絡があって、一緒に飯食ったり、飲みに行ったりしたのに、会社が左前になったら全然電話もよこさないヤツもいます。金がなければ付き合うメリットは無いと思われてるんでしょうねえ・・・。

　「クイズ・ミリオネア」のシーンではフジＴＶの番組がそっくりなのでびっくり。構成から音楽、ＳＥまでおんなじだとは！
　ただライフラインのテレフォンは、相談する相手が番組を見てちゃあまずいんでは？
　アカデミーを独占した「スラムドッグ＄ミリオネア」が、そろそろ公開されますけど、本家ってどこなんでしょ？

　私、おフランス映画って割と苦手なんですよね（かみさんは好きだったりします）なんか小難しいような気がして・・・（ゴダールやトリュフォーとかのヌーベル・ヴァーグなんて、食わず嫌いです。いや、食ってないから嫌いではないか・・・）
　まあ、「シェフと素顔とおいしい時間」とか「パリ空港の人々」「Ｔａｘｉ」なんかは好きだったりするので、まったくダメと言うわけではないのですが・・・。
　そんな映画に対して造詣もない私でも、このルコント作品は面白かったです。大人向けのエスプリの利いたコメディというところでしょうか。
　初対面の人間とも、そこそこなかよくなれてしまうブリュノ。でも、実は彼にも親友と呼べるような人間はいないのです。と言うか、そう思っていた友人に手ひどい裏切りをかまされてしまったのです。なんか、こいつ私に似てるようです（いや、友人に裏切られた部分ではなく、誰とでもそこそこ仲良くできるけど、深い関係を築けないところが・・・笑）

　まあ、親友に限らず友達って、作ろうと思って作るもんじゃあないですよね。それを、
「あなたたちは、どうやって友達になったんですか？」
「友達の作り方を教えて欲しい」
とくそまじめに努力するフランソワの姿が逆説的に描かれていて、笑いながらも考えさせられますねえ。
「あなたには友達はいない」
とキツイ指摘をしてくれるパートナーは、実は得がたい友達なんだと思いますけどね。　

　獲得した１００万ユーロ（１億５千万近い！）を１年で使い果たしたってのはどうかと思うし、その間連絡が無かったのかと疑問にも思います。最後のオープン・エンドっぽい終わり方は良いのですが、そこに至る「崩壊と再生」が描写不足かもしれませんねえ。
　でも、なかなか楽しめました。

映画が発明されたのはフランスだそうですから、もっと勉強しなくちゃあ・・・。