チャーリー・バートレットの男子トイレ相談室

タイトルからしておバカコメディかと思いましたが、
それほどアクが濃くなくて見やすいドラマになってました。

転向した先で浮いてしまったチャーリーが
同級生の人気を得るために開いた相談室（？）。

そこでの相談や、チャーリー自身の悩みなんかは
おバカなんだけれど、
じつは多感な年頃の少年の心の葛藤なんかも
見ている側に伝えたかったりしたのかな？

まあ、そんなに深い意味も無いかもしれないけど、
おバカすぎず、シリアスすぎず、
見やすい内容でよかったですよ。

ロバートダウニーJrもなかなか良いです。

男子トイレでそんなことしてるの？
俺は男子トイレではタバコとアレをするだけでした！

　ヘンなタイトルですけど、エロではないし、軽さが魅力の青春映画。楽しかったです。
　金持ちで問題児の転校生が、学内の人気を得るためにかかりつけの精神科医を騙していろいろ薬をもらい学内で配っているうちに、トイレで皆の相談に乗ってはその悩みに相応しい薬を処方してあげるという、にわか精神科医になって……というお話。
　かつてのこういうハイスクール舞台の青春映画は、恋と車と音楽と、みたいな感じでしたけど、現代ではみんな多かれ少なかれ悩みをもっていて、クスリ（向精神薬？）のお世話になる。そういう映画が出てきたことに、なるほどと思いつつ、驚きもします。
　でもこの映画には、『プリティ・イン・ピンク』や『フェリスはある朝、突然に』などが好きなジョン・ヒューズ（今年亡くなった）作品にあった軽さと爽やかさがあって、こういう題材をこのように描けるということがとてもいいなあと思います。
　監督はジャド・アパトー組の人のようで、いまのいろいろな問題を繊細に笑いに変えようとするあたり、ちょっと共通するところもあるのかなとも思います。
　主人公のチャーリーを演じたアントン・イェルチャンも、現代風の線の細さが魅力的。しかし本作では、校長先生役のロバート・ダウニー・Jr.がとてもいい。周りがガキンチョばかりのせいか、ひとり大人の存在感といい加減さを醸し出していて、『アイアンマン』なんかよりとても好感。60点。

　率直に言って一見分りやすそうでも、部分的に劇中劇などフィーリングでは分るが理解しにくい所があった。
　中心人物二人の親子関係が、この手のものにありがちな類型的なものじゃなくて好かった。いわゆる大人は僕達のことを理解してくれないで終わらない、溝を埋める方向で話を進めるのは建設的で悪くないね。寧ろ子供たちの方が本当の意味で大人っぽい感じもしたし。チャーリーの母親に対する気持ちも、チャーリーの女友達の父（ロバート・ダウニー）に対する気持ちも十分伝わって来た。特にロバートは好かったなぁ。

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チャーリー・バートレットは、有名私立高校に通う高校生。
お抱え運転手や専属の精神科医がいるほどのお金持ちの息子だ。
彼は人気者になるのが夢で、時々、みんなの前でスピーチする場面を妄想している。
「やあ、僕がチャーリー・バートレットだ」
湧き上がる歓声。

チャーリーが、退学と転校の繰り返しを余儀なくされたのも、新しい受け入れ先の公立高校で問題を起こしたのも、全ては人気を得たい、できるだけ多くの誰かから必要とされたいという欲求からだった。
チャーリーの問題行動とは、運転免許証を偽造して売ったり、学校の男子トイレで学生たちのカウンセリングをすることだった。
チャーリーは、学生達から聞き出した症状を、自分の専属医師たちに、まるで自分の症状のように訴え、処方された薬を学生達に売りさばいていた。
これは確かに違法で、犯罪なのだけれど、お金儲けが目的なのではなく、真面目に相談者たちの救済を考えて助言しているチャーリーを、私は何故か憎めないのだ。
男子トイレを訪れる学生たちも、彼らと向き合うチャーリーも、自分探しの途中であり、自分の存在価値や居場所を探っているように見える。
自殺志願の男子学生が、唯一自己表現の手段としてプロデュースした演劇に、彼ら若者の主張があったように思うが、親の側に自分の青春時代を思い起こす想像力があり、もっと聞く耳があったなら、日常の会話の中でも歩み寄って行けたのかもしれないと感じた。
青春を生きた時代は違っても、人の心にどれだけの違いがあるだろう？

他人の相談ばかり受けていたチャーリーだったが、ガールフレンドのスーザンに、やっと自分のことを語ったのだった。
彼の父親は刑務所にいて、チャーリーに「ママを頼む」と託して行ったのだったが、以来、チャーリーは、ずっと母を見守り続けていたのだ。
夫の収監をきっかけに、母には鬱病の症状が出ていた。
父がチャーリーに掛けて行った何気ない言葉が、どれほどチャーリーの負担になっていたことか、父親は気づいていないだろうし、母も息子がそんな責任を負っていたなど知りもしなかっただろう。
スーザンの父親であり、高校の校長でもあるネイサン・ガードナー（ロバート・ダウニー・Jr）とチャーリーとの体を張った闘いが、二人の縛りを解放することになったのは、意外な功を奏したと言えるかもしれない。
何よりもチャーリーを救ったのは、「あなたは、まだ子供なのよ」と言った母の言葉だったと思う。

「チャーリー・バートレットの男子トイレ相談室」
いかにも、おバカ映画を思わせるタイトルだが、見方によっては思春期の不安定さを思い出させる青春ドラマ。
そして、ロバート・ダウニー・Jrの熱演？により、社会的地位を得た大人も、いつまで経っても悩める一人の人間であるのだと思い当たるのだった。