地の群れ / 熊井啓
全体の平均評価点: (5点満点)
(3)
解説・ストーリー
「帝銀事件 死刑囚」の熊井啓監督が米軍基地を有する佐世保を舞台に描く社会派ドラマ。脚本は熊井監督と原作者の井上光晴が共同で手掛けた。昭和16年、少年の宇南は炭坑で朝鮮人の少女を身籠もらせた。やがて成長した宇南は、佐世保で開業医をしていた。宇南は原爆病の患者を診た時に、自らも父を原爆で亡くし、未解放部落出身者であったことを思い出していた……。 JAN:4907953060586
「帝銀事件 死刑囚」の熊井啓監督が米軍基地を有する佐世保を舞台に描く社会派ドラマ。脚本は熊井監督と原作者の井上光晴が共同で手掛けた。昭和16年、少年の宇南は炭坑で朝鮮人の少女を身籠もらせた。やがて成長した宇南は、佐世保で開業医をしていた。宇南は原爆病の患者を診た時に、自らも父を原爆で亡くし、未解放部落出身者であったことを思い出していた……。 JAN:4907953060586
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「地の群れ」 の解説・あらすじ・ストーリー
解説・ストーリー
「帝銀事件 死刑囚」の熊井啓監督が米軍基地を有する佐世保を舞台に描く社会派ドラマ。脚本は熊井監督と原作者の井上光晴が共同で手掛けた。昭和16年、少年の宇南は炭坑で朝鮮人の少女を身籠もらせた。やがて成長した宇南は、佐世保で開業医をしていた。宇南は原爆病の患者を診た時に、自らも父を原爆で亡くし、未解放部落出身者であったことを思い出していた……。 JAN:4907953060586
「地の群れ」 の作品情報
「地の群れ」 のキャスト・出演者/監督・スタッフ
地の群れの詳細
収録時間: |
字幕: |
音声: |
127分 |
|
日:モノラル |
レイティング: |
記番: |
レンタル開始日: |
|
DIGR1001 |
2015年07月02日
|
在庫枚数 |
1位登録者: |
2位登録者: |
8枚
|
0人
|
0人
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地の群れの詳細
収録時間: |
字幕: |
音声: |
127分 |
|
日:モノラル |
レイティング: |
記番: |
レンタル開始日: |
|
DIGR1001 |
2015年07月02日
|
在庫枚数 |
1位登録者: |
2位登録者: |
8枚
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0人
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ユーザーレビュー:3件
被爆者部落と同和部落の対立
投稿日:2021/09/24
レビュアー:趣味は洋画
地の群れ(1970年、日本アート・シアター・ギルド配給、モノクロ、127分)
‘あんたは、この海塔新田が世間で何と言われとるか知っとるとね。知らんことはなかろう。あたし達が部落なら、あんた達は血の止まらん部落たいね。あたし達の部落の血はどこも変わらんけど、あんた達の血は中身から腐って、これから何代も何代も続いていくとよ。ピカドン部落のもんといわれて嫁にも行けん、嫁にもとれん、しまいには、しまいには・・・’
本編のなかで名女優、北林谷榮の言うセリフです。
被爆者部落と同和部落の対立を中心に描いたこの「地の群れ」という映画は、社会派の熊井啓監督作品。
重く暗い時代が背景になっていますが、戦後76年が経過し、豊かで便利になった(?)と云われている今の時代にこそ観るべき、貴重なフィルムではないかと思うのです。
長崎県佐世保市で小さな診療所を開業している宇南医師(鈴木瑞穂)は、船上生活者の家弓安子の診療に出かけた。‘症状が原爆病に似ている’ と、安子の母親の光子(奈良岡朋子)に告げるが、‘自分は原爆投下時には佐賀に疎開していたので関係ない’ と頑なにそれを認めようとしない。おそらく「海塔新田」と呼ばれる被爆者ばかりが集まった村の住民と間違われて、差別を受けるのを恐れたのだ。宇南の患者に津山金代(原泉)という老婆がいたが、孫の信夫(寺田誠)は、被差別部落の福地徳子(紀比呂子)を暴行した容疑で逮捕される。だが信夫のアリバイが成立し釈放される。信夫は旧知の徳子に会って厳しく詰問するが、逆に ‘左手と耳にケロイドがある男が、信夫の住む海塔新田にいないか?’ と問われた。信夫には真犯人と思われる心当たりがあった。一方、宇南医師は妻(松本典子)と口論が絶えなかったが、宇南自身も被差別部落出身者で、炭鉱で働いていた少年時代から暗い過去を背負って生きていた...。
舞台は長崎県佐世保市。
造船の街であり、米軍基地の街でもありますが、かつては炭鉱の町として栄えました。
被爆者、朝鮮人労働者、被差別部落、海軍基地、海底炭鉱、様々な社会構造が絡まり、ストーリーは複雑な展開をみせます。現在と過去の描写が行き来するので、最初は戸惑いましたが、中盤あたりからどんどん引き込まれました。
長崎に原爆が落とされたときの様子も、登場人物のセリフのなかで生々しく語られます。
8月9日の月夜は、ぞっとするほどの黄色さ、そして蒼さだったといいます。
被爆によって亡くなった人、全身に火傷を負った人、言葉に表せない歴史の写真映像が出てきます。
覚悟がいります。
主人公の医師を演じた鈴木瑞穂が好演です。
まだ若い紀比呂子は20歳くらいだと思いますが、凛としています。目線に鋭さも感じます。
北林谷榮、奈良岡朋子、佐野浅夫といったベテラン俳優に加え、終盤になってやっと登場する宇野重吉も、皆それぞれ存在感があって、安定していますね。
大手の配給会社からは敬遠された作品のようですが、邦画の歴史のなかで決して忘れ去られてはいけない作品であることは疑いの余地もありません。
このレビューは気に入りましたか?
5人の会員が気に入ったと投稿しています
重いテーマを重いままに。
素晴らしい。
重いテーマを、これでもかとばかりにギュウギュウ詰めにして、
好奇心から見世物として「消費」されることも恐れず、
重いままに描いています。
被爆地・長崎の軍港の街・佐世保を舞台に、
被爆者、被差別部落民、在日朝鮮人が織りなす「差別」を巡るドラマ。
実際の事情は知りませんが、これは公開当時も以後も、
関係団体や当事者から「われわれの現実を正しく描いていない」というような
批判をかなり浴びたんじゃないでしょうか。
差別を前景とするなら、後景にあるのは
朝鮮戦争、レッドパージ、安保という戦後日本がたどった逆コース。
元共産党員である医師の過去に山村工作隊が影を落としているところには
大島渚「白昼の通り魔」を思い出しました。
その医師はじめ、登場人物の皆が何かしら差別の当事者であるか、
過去に苦しめられているのが良い。
客観的で安全な立場に立てる「正義の味方」など一人もいないのです。
語弊を承知で言えば、現代にも通じる「弱肉弱食」のような世界が展開されます。
差別であれ暴力であれ、被害者が加害者や体制を告発し闘争するのではなく、
まるで美徳であるかのように黙ってそれに耐え、その代わりに
絶えず自分たちより社会的・精神的に下位の者を必要とする構図。
これは極めて「日本的」なものなのでしょうか。
そんな中、暴行された被差別部落の少女が、大人たちのしがらみを振り切って
直談判しに行くところから、物語は加速していきます(少女の凛とした美しさ)。
そして、少女のために「仲間を売った」被爆者部落の少年が
逃走し迷い込んだ世界の描写が秀逸。
そこは、それまでの「地の群れ」たちが生きる世界とは正反対の、
もはや戦争とも差別とも全く切り離された、
どこまでも「無関心で清潔な幸福」に満たされた空間でした。
この映画で提示されている様々な問題そのものや、提示の仕方の妥当性について、
不勉強な僕には深くコメントすることはできません。
ただ、現在の「社会派」映画や、それに対するお決まりの褒め言葉に共通する
「深刻なテーマを『告発』するのではなく、ユーモアをまじえて、さらりと描いた」などというスタイル
(それらは「さらりと描いて」いるのではなく、単に「描き込み方が足りない」だけであり、
観客も趣味が良いのではなく、単に無知なだけである)とは正反対の
「重いテーマを真正面から愚直なまでに重く」描いた姿勢には、
再評価の余地が大いにあると思います。
このレビューは気に入りましたか?
5人の会員が気に入ったと投稿しています
重い重い重い映画。こういう作品もたまには見たほうが良い。
「地の群れ」(1970年、白黒、127分)。
熊井啓監督(1930〜2007)は、大作「黒部の太陽」(1968)を撮ったあと、1969年に日活を退社。
その直後、製作・監督したのがこの作品。
何と、40歳のときの作品だ!
以前から着々と準備はされていたのであろう。製作費の一部に日活の退職金を充てたという。
日活の監督でなければ、日活の小屋(映画館)で、映画が配給されないということである。
せっかく映画を作っても、小屋にかからねば、作品は多くの観客に見せられず、製作費も回収できない。
この映画の配給はATG、つまり日本アート・シアター・ギルド。
原作は、井上光晴(1926〜1992)が、1963年に発表した同名小説。彼はこの映画の脚本にも参加している。
VHSが1987年に発売され、レンタルもされていたようだが出合う機会がなく、中古品は異常な高額。
自分にとっては一種「幻」の映画だった。
2014年に各地で上映会が行われていたので、DVDの発売を期待していたが、2015年7月2日の発売と同時に、
レンタルも開始になったのは本当にありがたいことだ。
今日届き、早速見てみた。
俳優は、鈴木瑞穂、寺田誠、奈良岡朋子、松本典子、佐野浅夫、小杉勇、北林谷栄、大滝秀治(声)、宇野重吉……と、劇団民藝の人々が主体になっている。
「五社協定」に苦しんだ「黒部の太陽も、劇団民藝の全面的な協力があった。この映画では、手弁当のノーギャラだったかもしれない。
前進座からは、瀬川菊之丞、坂東調右衛門……多数出演。。
原泉(1905〜1989)。旧・新協劇団、この映画当時はフリー。(詩人・中野重治の奥さん)
映画系ではなく、劇団系の実力俳優たちが、この映画を支えたのだ。
紀比呂子(きの・ひろこ)さんは、僕らの世代には、国際線スチュワーデス(今はCAという)を主人公にしたTVドラマ
「アテンションプリーズ」(1970〜1971)がまず浮かぶ。
彼女がほぼ同時期に、このような映画に、このような役で出ていたことを、全く知らなかったし、驚く。
隠れキリシタンの伝統があり、米軍基地と軍港、炭鉱のある長崎県佐世保市が舞台。中心にあるのは、宗教、原爆、新たな戦争、さまざまな差別の構造だ。
社会派映画というレッテルが浮いてしまうほど、重いテーマを重いストーリー、重い画調で描いている。
重いといったが、集団劇で、実に会話が多い映画である。無駄な会話は一言もない。
冒頭、「地の群れ」というタイトルが出て、鶏が一羽、多くの鼠が同じ檻に閉じ込められている。
映画は基本的に娯楽だと思っているが、最近の映画は、見た翌日には忘れてしまうほど軽いものが多い。
気分転換、時間つぶしに見る映画も決して悪くない。映画の魅力の半分はそこにあるのだから。
が、娯楽とは対極にある重い時間に耐える経験も、たまには必要だ。
日常が過酷なのに、なぜ映画でまで、つらい現実に立ち会わねばならぬのか……。
この映画は、過酷な現実を、たった2時間余りに凝縮している。
そこに身を浸すと、昇華はないが、闇の底を覗き見ることができるだろう。
音楽は、松村禎三(1929〜2007)。重い映画を、刻んでいる。
この作品以降の熊井作品の音楽は、すべてではないが、ほとんどこの作曲家でなかろうか。
西洋の近代音楽と、アジアの伝統音楽を研究し、独自の作風を開いた。
遠藤周作原作の「深い河」(1995)も再見したい。
そういえば、晩年の井上光晴を描いたドキュメンタリーの傑作「全身小説家」(1994年、原一男監督)も再見してみたい。
DVDが2000年に発売されているが、これも中古市場で高額。ぜひ、TSUTAYAさんでレンタルしてほしい。
このレビューは気に入りましたか?
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ユーザーレビュー
被爆者部落と同和部落の対立
投稿日
2021/09/24
レビュアー
趣味は洋画
地の群れ(1970年、日本アート・シアター・ギルド配給、モノクロ、127分)
‘あんたは、この海塔新田が世間で何と言われとるか知っとるとね。知らんことはなかろう。あたし達が部落なら、あんた達は血の止まらん部落たいね。あたし達の部落の血はどこも変わらんけど、あんた達の血は中身から腐って、これから何代も何代も続いていくとよ。ピカドン部落のもんといわれて嫁にも行けん、嫁にもとれん、しまいには、しまいには・・・’
本編のなかで名女優、北林谷榮の言うセリフです。
被爆者部落と同和部落の対立を中心に描いたこの「地の群れ」という映画は、社会派の熊井啓監督作品。
重く暗い時代が背景になっていますが、戦後76年が経過し、豊かで便利になった(?)と云われている今の時代にこそ観るべき、貴重なフィルムではないかと思うのです。
長崎県佐世保市で小さな診療所を開業している宇南医師(鈴木瑞穂)は、船上生活者の家弓安子の診療に出かけた。‘症状が原爆病に似ている’ と、安子の母親の光子(奈良岡朋子)に告げるが、‘自分は原爆投下時には佐賀に疎開していたので関係ない’ と頑なにそれを認めようとしない。おそらく「海塔新田」と呼ばれる被爆者ばかりが集まった村の住民と間違われて、差別を受けるのを恐れたのだ。宇南の患者に津山金代(原泉)という老婆がいたが、孫の信夫(寺田誠)は、被差別部落の福地徳子(紀比呂子)を暴行した容疑で逮捕される。だが信夫のアリバイが成立し釈放される。信夫は旧知の徳子に会って厳しく詰問するが、逆に ‘左手と耳にケロイドがある男が、信夫の住む海塔新田にいないか?’ と問われた。信夫には真犯人と思われる心当たりがあった。一方、宇南医師は妻(松本典子)と口論が絶えなかったが、宇南自身も被差別部落出身者で、炭鉱で働いていた少年時代から暗い過去を背負って生きていた...。
舞台は長崎県佐世保市。
造船の街であり、米軍基地の街でもありますが、かつては炭鉱の町として栄えました。
被爆者、朝鮮人労働者、被差別部落、海軍基地、海底炭鉱、様々な社会構造が絡まり、ストーリーは複雑な展開をみせます。現在と過去の描写が行き来するので、最初は戸惑いましたが、中盤あたりからどんどん引き込まれました。
長崎に原爆が落とされたときの様子も、登場人物のセリフのなかで生々しく語られます。
8月9日の月夜は、ぞっとするほどの黄色さ、そして蒼さだったといいます。
被爆によって亡くなった人、全身に火傷を負った人、言葉に表せない歴史の写真映像が出てきます。
覚悟がいります。
主人公の医師を演じた鈴木瑞穂が好演です。
まだ若い紀比呂子は20歳くらいだと思いますが、凛としています。目線に鋭さも感じます。
北林谷榮、奈良岡朋子、佐野浅夫といったベテラン俳優に加え、終盤になってやっと登場する宇野重吉も、皆それぞれ存在感があって、安定していますね。
大手の配給会社からは敬遠された作品のようですが、邦画の歴史のなかで決して忘れ去られてはいけない作品であることは疑いの余地もありません。
重いテーマを重いままに。
投稿日
2015/07/30
レビュアー
MIGHTY MOE AND JOE
素晴らしい。
重いテーマを、これでもかとばかりにギュウギュウ詰めにして、
好奇心から見世物として「消費」されることも恐れず、
重いままに描いています。
被爆地・長崎の軍港の街・佐世保を舞台に、
被爆者、被差別部落民、在日朝鮮人が織りなす「差別」を巡るドラマ。
実際の事情は知りませんが、これは公開当時も以後も、
関係団体や当事者から「われわれの現実を正しく描いていない」というような
批判をかなり浴びたんじゃないでしょうか。
差別を前景とするなら、後景にあるのは
朝鮮戦争、レッドパージ、安保という戦後日本がたどった逆コース。
元共産党員である医師の過去に山村工作隊が影を落としているところには
大島渚「白昼の通り魔」を思い出しました。
その医師はじめ、登場人物の皆が何かしら差別の当事者であるか、
過去に苦しめられているのが良い。
客観的で安全な立場に立てる「正義の味方」など一人もいないのです。
語弊を承知で言えば、現代にも通じる「弱肉弱食」のような世界が展開されます。
差別であれ暴力であれ、被害者が加害者や体制を告発し闘争するのではなく、
まるで美徳であるかのように黙ってそれに耐え、その代わりに
絶えず自分たちより社会的・精神的に下位の者を必要とする構図。
これは極めて「日本的」なものなのでしょうか。
そんな中、暴行された被差別部落の少女が、大人たちのしがらみを振り切って
直談判しに行くところから、物語は加速していきます(少女の凛とした美しさ)。
そして、少女のために「仲間を売った」被爆者部落の少年が
逃走し迷い込んだ世界の描写が秀逸。
そこは、それまでの「地の群れ」たちが生きる世界とは正反対の、
もはや戦争とも差別とも全く切り離された、
どこまでも「無関心で清潔な幸福」に満たされた空間でした。
この映画で提示されている様々な問題そのものや、提示の仕方の妥当性について、
不勉強な僕には深くコメントすることはできません。
ただ、現在の「社会派」映画や、それに対するお決まりの褒め言葉に共通する
「深刻なテーマを『告発』するのではなく、ユーモアをまじえて、さらりと描いた」などというスタイル
(それらは「さらりと描いて」いるのではなく、単に「描き込み方が足りない」だけであり、
観客も趣味が良いのではなく、単に無知なだけである)とは正反対の
「重いテーマを真正面から愚直なまでに重く」描いた姿勢には、
再評価の余地が大いにあると思います。
重い重い重い映画。こういう作品もたまには見たほうが良い。
投稿日
2015/07/03
レビュアー
ちゅく
「地の群れ」(1970年、白黒、127分)。
熊井啓監督(1930〜2007)は、大作「黒部の太陽」(1968)を撮ったあと、1969年に日活を退社。
その直後、製作・監督したのがこの作品。
何と、40歳のときの作品だ!
以前から着々と準備はされていたのであろう。製作費の一部に日活の退職金を充てたという。
日活の監督でなければ、日活の小屋(映画館)で、映画が配給されないということである。
せっかく映画を作っても、小屋にかからねば、作品は多くの観客に見せられず、製作費も回収できない。
この映画の配給はATG、つまり日本アート・シアター・ギルド。
原作は、井上光晴(1926〜1992)が、1963年に発表した同名小説。彼はこの映画の脚本にも参加している。
VHSが1987年に発売され、レンタルもされていたようだが出合う機会がなく、中古品は異常な高額。
自分にとっては一種「幻」の映画だった。
2014年に各地で上映会が行われていたので、DVDの発売を期待していたが、2015年7月2日の発売と同時に、
レンタルも開始になったのは本当にありがたいことだ。
今日届き、早速見てみた。
俳優は、鈴木瑞穂、寺田誠、奈良岡朋子、松本典子、佐野浅夫、小杉勇、北林谷栄、大滝秀治(声)、宇野重吉……と、劇団民藝の人々が主体になっている。
「五社協定」に苦しんだ「黒部の太陽も、劇団民藝の全面的な協力があった。この映画では、手弁当のノーギャラだったかもしれない。
前進座からは、瀬川菊之丞、坂東調右衛門……多数出演。。
原泉(1905〜1989)。旧・新協劇団、この映画当時はフリー。(詩人・中野重治の奥さん)
映画系ではなく、劇団系の実力俳優たちが、この映画を支えたのだ。
紀比呂子(きの・ひろこ)さんは、僕らの世代には、国際線スチュワーデス(今はCAという)を主人公にしたTVドラマ
「アテンションプリーズ」(1970〜1971)がまず浮かぶ。
彼女がほぼ同時期に、このような映画に、このような役で出ていたことを、全く知らなかったし、驚く。
隠れキリシタンの伝統があり、米軍基地と軍港、炭鉱のある長崎県佐世保市が舞台。中心にあるのは、宗教、原爆、新たな戦争、さまざまな差別の構造だ。
社会派映画というレッテルが浮いてしまうほど、重いテーマを重いストーリー、重い画調で描いている。
重いといったが、集団劇で、実に会話が多い映画である。無駄な会話は一言もない。
冒頭、「地の群れ」というタイトルが出て、鶏が一羽、多くの鼠が同じ檻に閉じ込められている。
映画は基本的に娯楽だと思っているが、最近の映画は、見た翌日には忘れてしまうほど軽いものが多い。
気分転換、時間つぶしに見る映画も決して悪くない。映画の魅力の半分はそこにあるのだから。
が、娯楽とは対極にある重い時間に耐える経験も、たまには必要だ。
日常が過酷なのに、なぜ映画でまで、つらい現実に立ち会わねばならぬのか……。
この映画は、過酷な現実を、たった2時間余りに凝縮している。
そこに身を浸すと、昇華はないが、闇の底を覗き見ることができるだろう。
音楽は、松村禎三(1929〜2007)。重い映画を、刻んでいる。
この作品以降の熊井作品の音楽は、すべてではないが、ほとんどこの作曲家でなかろうか。
西洋の近代音楽と、アジアの伝統音楽を研究し、独自の作風を開いた。
遠藤周作原作の「深い河」(1995)も再見したい。
そういえば、晩年の井上光晴を描いたドキュメンタリーの傑作「全身小説家」(1994年、原一男監督)も再見してみたい。
DVDが2000年に発売されているが、これも中古市場で高額。ぜひ、TSUTAYAさんでレンタルしてほしい。
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