ザ・ロード

『ザ・ロード』その題名の通り、父と子が微かな希望に賭け、
南へと旅するロード・ムービーです。

全編に漂う終末感。この上なく暗く色彩感の薄い世界。
銀残し（ブリーチバイパス）的な処理で現在の時は描かれ、
それと対比する形で父が見る夢、つまり過去の妻との思い出が
アンバーな柔らかい光で描かれまています。
この夢の変化と父が息子に語る夢にまつわる話しにも
是非注目して頂きたいと思います。

先ほど希望と書きましたが、希望などほとんど無いのかも知れません。
この父と子の旅を支えているのは、希望と呼ぶにはあまりにも儚く、
むしろ死への過渡期のような状態。
死への旅立つ準備、心構えを行うのが日常となっています。
では何故彼らは旅を続けるのか、その日が来るまで生き続けるのか。
彼らを支えているのは、人間としての尊厳に他なりません。

「火を運ぶ」父はその尊厳を「心の中に火を持っている」という言葉で
息子に伝えようとします。

「現代で人は皆、心の中に火を運んでいるのだろうか？」
ふとそんな疑問が浮かびました。我々は間違いなく南へ向かっているのか？
淡々と描かれる作品なので、常に「この場面私ならどう対処するだろう」と
自分の心とも向きあう作品でもありました。

娯楽性には乏しい作品ですし、明確な答えの出る作品でもありません。
少年の決断を含め『ザ・ロード』はさらに長く続くその後のロードへの
序章に過ぎないのです。

「ノーカントリー」の原作者、コーマック・マッカーシーのピューリッツア受賞小説を映画化したロード・ムービーです。
果てしなく荒廃しきった終末の世界。生き残った父（ヴィゴ・モーテンセン）と子（K・マクフィー）。二人の行く道はただただ暗く、恐ろしく、絶望のみあるだけです。自然も死に絶え、人が人を食べ、何とか今日を生き延びても、明日が見えません。
そんな中でたった二人、息子に生きる術を教え、目の前の今日を生き、南に向かって一歩ずつ前進し続ける、ただそれだけの姿を綴った静かな映画です。
父はこんな世界に生きる意味を息子に見出します。それは希望と呼べるものでしょうか？
先に希望があると無理にでも自身を納得させる姿は、そう思わないと先に進めないのかもしれません。何だか哀しみに満ちていてちょっと辛いです。

荒廃しきった世界しか知らない息子と明日の希望を息子に託す父親との会話には、襲撃の恐怖と、まだ温もりがあった頃の昔話しかありません。その中で、父親は息子に「善き人になれ」としきりに諭します。人肉を食べて蛮行だけがはびこる世界や、人心を信じられない現状の中で、父は息子に何をしてやれるのでしょう？
一人の老人（デュバル）と出会った父子。息子は父の反対を押し切り、老人に食糧を分け与えます。やさしく接しようとする息子に、父の良心が確実に受け継がれていたことにホツとする一幕です。

生き残ることを最優先し、時には残酷な決断を下す。そんなタフな父に息子は困惑することもありますが、父は愛する息子を必死に守りぬきます。息子への深い思いに思わずぐっと来ました。

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全てがリセットされた世界、いや人間に一動物に返りやり直せと問うた様な作品
誰もが一度は想像したことあるであろう世紀末が粛々と展開される
歩き続けるというのは行動のみにあらずと聞こえてきそうやった。

「火」というキーワードのみで突き進む父子、そして本能のままに生きる人々
文明すら崩壊したであろう世界では後者がアドバンテージを得られるのは必至
だが父子は「火」に拘る、分かり易いのが食人なんやろうけど
一動物と化した人間に共食いが悪だと果たして言えるだろうか
まさに弱肉強食が自然の摂理というなら咎めることはできない
それでも父子は「火」に拘る、父親は嫁への懺悔であり
息子は母親に会うための切符の如く。

観終わって最初に思ったのは悲しさより希望を感じれたこと
ラストだけを言ってるんやなく、文明的な善悪を感じんかったから
終始善を掲げながらも悩む父親の姿が共感できる
決して綺麗事で作り上げてないのが最大の特徴かな。

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文明が崩壊し荒れ果てた世界。
木々の緑はなく、枯れ果てた枝を残すのみ。奪略された残骸が残るだけの家々。
灰色の大地を父と息子はひたすら歩く。南に向かって。

文明がなぜ崩壊したのか、その理由は明かされない。時々響く地鳴りにおびえる息子。

世界観は「ザ・ウォーカー」と酷似していますが、違うのは主人公の父（ヴィゴ・モーテンセン）がごくごく普通の男だということ。超人的な力も、華麗な剣の技も持たない男。あるのはただ、愛する息子を守り抜くという強い決意だけ。

男が持つ武器は一丁の拳銃だけ。そのなかにこめられた弾はたった２発。
男は、いざというときは自殺するよう、その方法を息子に言い聞かせる。
人肉を食べるという非道が当たり前になっている世界で、息子に危機がせまれば、すぐにでも殺せるよう息子のこめかみに銃を当てる、男の気持ちの悲壮さ。

「僕たちは悪い者じゃないよね。いい人間だよね。」
「もちろんさ。なぜなら俺たちは『火』を運んでいるのだから。」

心の中の「火」。よふかしさんがそれは「人間としてのギリギリのプライド、誇り、矜持、モラル」だとおっしゃっていますが、私は「希望」なのかなと思いました。けれど「希望」を携えて、ひたすら南を目指しても、果たしてそれが報われるときが来るのでしょうか。

男は短く浅い眠りの中で夢を見る。そして、その夢の中で妻（シャーリーズ・セロン）がなぜいなくなってしまったのかが、次第に明らかになってゆく。

「悪夢を見るのはまだ戦う力があるからだよ。
いい夢を見るようになったらおしまいだ。」

そう息子に言う男だが、次第に終わりは近づく。
男の咳は徐々にひどくなり、足にもひどい怪我をしてしまう。それと同時に、男の夢はだんだんと美しくなってゆく。幸せだった頃の男と妻の夢。

父と息子、ふたりの細やかな情愛には胸が締めつけられました。
終末という特殊な設定ではあるけれど、どんなときも息子を愛し、何があっても守り抜こうとする父親の愛という普遍的なテーマがあると思います。
一方で、簡単に絶望して諦めてしまった妻の弱さがちょっと気になりました。でも、私が彼女だったら、やっぱり諦めてたかも。

エンドクレジットで、子供を含む複数の人間が戯れるようなかすかな会話が聞えてきます。字幕が出ないので一生懸命聞いてたのに、席をたつ人の物音がうるさくてよく聞えなかったのが腹立たしかったです。
息子が運んだ「心の中の火」は報いられたと解釈していいのでしょうか？

この映画に登場する人物には名前がないのですが、唯一の例外がふたりが旅の途中で出会う老人。そしてその老人の名前が、「ザ・ウォーカー」の主人公と同じ「イーライ」です。聖書の預言者の名前に由来してるらしく、このあたりもふたつの作品が酷似していることを感じさせらますが、私はこちらの方が断然好きです。

店長さんがなかなか良かったよと言っていたコーマック・マッカーシー原作の『ザ・ロード』を観ました♪
（・〜・）ふむふむ・・・どう生きるか？ものか〜・・・重いねー・・・まぁいい映画です♪

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過去と未来に握手する使命（過去と未来を繋げる使命）を持って人間は生まれる。
だから自分達は、過去から受け継いだ人間らしさ（尊厳）を必ず未来へと繋げなければならない。
そうやって人類は何万年も心の火を繋いできたんだ。
だから私達は人間らしく生きられる。
過去の人々の支えに依って私達の命は此処に在る。

OLD MAN(老人）は、MAN（男）に繋ぎ、MAN（男）は、BOY（息子）に繋ぐ。
BOYは・・・
BOYの先に繋ぐ者は居ないかも知れない。
BOYが人類の最後の火かも知れない。

BOYにはわからない。
自分が最後の一人かどうかはわからない。
しかしBOYがわかっている。
人類の道が無くなるその日まで、心の火を消してはならないことを
最後に消えるその火は、人類が受け継いできた美しい火でなければならないことを・・・

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映画の中で説明はされてないけれども、OLD MAN　との会話などから想像すると、
地球の最後であり人類の最後の話かな？

人類に未来が無い状況で、人はどのように生きるべきなのか？ということか・・・
なかなか凄い設定を持ってきたなー・・・

個人的満足度　７０点！　オススメ度　７０点！