闇の列車、光の旅

中南米から米国を目指す若い男女の逃避行を描くロード・ムービーです。
貧困に喘ぎ暴力に汚された中南米に住む人々。就くべき職もなく、教育も受けられないせいか、スラム街の子供たちはやがてギャング団に組み込まれます。彼らは組織の掟に縛られ、殺人すら厭わない人間になるのでしょう。そんな彼らにだって夢があったはずです。そして少年が人でなくなる瞬間に遭遇します。この瞬間はびっくりするのと同時にやるせなさを感じました。

ギャング集団のチンピラから、少女サイラを守るヒーローへと変貌するカスペル。宙を眺めているような彼の表情が何故か気になりました。家族を持たない彼は組織に属することで生き長らえ、けれど、組織の男になりきれないその人間こそが、闇に射す一筋の光なのかもしれません。
中南米から米国への不法侵入を試みる旅を描く途中に、彼らでビジネスする人、生きるためにギャング集団に入らざるを得ない若者など、中南米の複雑な社会状況が見えて来ます。
私たちには過酷な旅を覚悟してアメリカを目指す不法移民の切実さや、幼い子供までを取り込んでしまうギャングの世界は、決して身近に感じられる話ではありません。それでも切実に迫って来るのは、列車の屋根によじ登ってアメリカを目指す不法移民たちという彼らに目を背けずにはいられないというドラマがあるからだと思います。
ラストのサイラの必死の叫びは私たちの耳に悲痛にこだまします。
容赦ない結末の中に、かすかな光が見えるのは、真っ直ぐに前を向くサイラの瞳にかすかな希望があったからかもしれません。

これが中南米の貧しい人たちの現実なのか？
自国を捨ててでもアメリカを目指す人たち。
自分の国では生きられない人たち。
彼らは貨物列車の屋根に乗り、雨風に打たれながらもアメリカ国境を目指す。
ホンジュラスとアメリカの間には、グアテマラがあり、メキシコがある。
それは途方もなく長い列車の旅だ。
警備隊に見つかる危険、ギャングたちに襲われる危険、あらゆる危険が彼らに付きまとう。
それでもアメリカを目指す彼ら。
国境を超える事の出来る人たちは半分もいないという。

アメリカに希望があるのだろうか？
不法移民として捕まり強制送還される可能性もあるだろう。
差別されて不当な扱いを受けることもあるだろう。
女性は否応なしに体を売る仕事をせねば生きていけない可能性もあるだろう。
果たしてそこに希望があるのだろうか？
それでも彼らは北を目指さねば生きてはいけない現実がここにある。

『シティ・オブ・ザ・ゴッド』でも描かれていたメキシコギャングの実態。
そのほとんどが１０代〜２０代の若者で形成され、厳しい掟と制裁があり、ギャング同士の抗争もある。
そして否応なしにギャングになっていくあどけない顔のまだ幼い少年がとても痛々しい。

自分を救ってくれたカスペルに想いを寄せるようになるサイラ。
一人残されたサイラの命綱は呪文のように唱えさせられていた一つの電話番号。
ラストに見せた彼女のかすかなほほ笑みにようやく救われた思いだ。

だが・・彼女の行く末に希望があるのだろうか・・・・あるのだと私は信じたい。

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サンダンス映画祭監督賞、撮影監督賞を受賞し、ガエル・ガルシア・ベルナルとディエゴ・ル
ナが製作総指揮に入ってるということで、かなり前から観に行くことを決めてたケイリー・ジョ
ージ・フクナガ監督作品『闇の列車、光の旅』をシネリーブルに観に行ってきました♪

うーん（・〜・）・・・評価が難しい・・・想像以上に娯楽映画になってしまってるー・・・でも娯楽
映画であることが悪いとも言えれへんし（・〜・）ウーム・・・でも好きとは言い難いなー

□■□■□

【完全にネタバレてします！ラストにも触れてます！観てない人は読まないでください！】

やっぱりなんといっても主人公の少女の行動（感情）にリアリティはあるのか？つー部分が
この映画の評価の別れどころやろねー・・・

多分細かい設定があるんやろうというのは安易に想像できるんやけど、この映画で見せて
る描き方で十分なんやろか？

あまりにも行動が突飛に感じられへんやろか？

多分描かれてない設定は、サイラはウィリーと同じような気持ちにあるということなんやろけ
ど、それをこの状態で伝わりきれてるんやろか？

生きることへの意味（実感）を見出せない。

未来に何の希望も見えない。

自分の人生は、もうどうなっても良い。

そういう2人に共通する気持ちが根底にあって、そしてガスペルはある人物の殺害を犯し、サ
イラはウィリーに恋をする・・・

サイラの恋は、ガスペルの殺人と同じ気持ち（自分の無意味な命を、有意義なこと＝他人の
為に捧げたいという気持ち）を始まりとしてるので、単なる恋では無いハズなんやけど、どー
もそこが伝わって来ないんよねー（´・ω・`）

単なる"恋は盲目"に観えてしまってるような気がする（（φ（・д・。）←実はウィリーの死んだ
彼女の描きこみの浅さもこのイメージを強くしてる（同じく主人公も"女の子"と"若さ"のみの
行動やろうという推測を助長する）

ラスト近くで川で大騒ぎをするシーンなんて、恋ならばあの行動にはならないと思うんすよね
〜・・・恋ならばただただ泣くことしか出来ないんやないやろか？彼女は自分の命はどうでも
良いと思っていたという描きこみが足りなかったんやないやろか？

その部分がキチンと伝わるように描かれてれば、あの列車を降りる行動も、川での行動も、
ラストの涙も、全てが繋がって感動できるとは思うんやけど・・・

ガスペルについて細部に渡って描いて於いて、サイラが彼の人生に自分を重ねたことから、
観客にサイラの気持ち（過去）がガスペルと同じようなものだと理解させる（納得させる）と
いう方法論は、まぁわからなくはないんすけど、この描き方で伝わりきれてるとは到底思え
ないんすよね〜・・・

（」°□°）」<伝わってる！？　　　　　　　　　　イマイチわかりまへんなー>L（‐□‐L）

これやと、行動や感情のリアリティが"女の子"と"青春"やからという安直な理由（≒恋）に起
因するように感じてしまうんで、単なる娯楽映画のようになってしまう（単に盛り上げるためだ
けの演出に感じてしまう）

まぁ、テンポも良いし、娯楽映画っぽく面白くなってるんで、それが良い方に出たとも言えるん
やけどねー（（（（（（（ノ・д・）ノ偶然のサンブッツ

□■□■□

かなり真面目に書いたんすけど、これで伝わってるんやろか！？

かなり厳しく書いたんすけど、ある意味では観やすいとも言えるので、オススメするのに十分
な出来にはあると思います♪

中米の現実がどのようなものかを見れるだけでも、十分価値があるんやないかな（°∀°）b

個人的満足度　６９点！　オススメ度　７０点！

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ギャングのカスペルがいい男ですね
恋人をボスに殺されて涙を呑むが、襲撃のどさくさにまぎれてボスを殺してしまい北米へと逃亡する移民たちに紛れて逃亡する
移民たちの中の一人の同世代の少女に好かれて二人は移民の群れを離れて単独逃亡します

この少女がなぜかカスペルに惹かれるんですが、カッコいいし、元ギャングの粗暴さがありながら心根は優しいときては惚れるのもわかります

カスペルの弟は兄を殺さなければギャングにいられなくなるどころか殺されるかも知れずギャングたちと共に兄を追う

カスペルの弟が生きるためにしたこと
移民の少女は北米へたどり着いたとしても苦労があるでしょう
そしてカスペルはなるようにしかならなかった

登場人物たちがみんな若いので渋みはないですが、主役たちは悲しげで哀愁があってよかったです
とくにカスペルは恋人を殺された悲しみを背負い、弟にさえ追われ死ぬ運命を悟っているので哀愁がありながらカッコよかったです
美談でないところがリアルで好きです

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　僕はとても面白いと思いました。ホンジュラスからグアテマラ、メキシコを経由してアメリカを目指す。主として列車によるロードムービーです。列車の屋根の上に乗っていく危険な旅の細部が――乗り方や眠り方、売店や途中での休息など――ひじょうにリアルに描かれていて興味深いです。この旅を捉えたカメラもひじょうにいいし、貧しそうだけれどもどこか安定し閉ざされたギャングの若者の生態も実に生々しく面白い。
　面白いのは、豊かな国を目指してどうしてもアメリカに行く――と思っているのは、主人公の女の子サイラの父や叔父で、サイラ自身や同行することになるギャングのカスペルはそうではないことです。サイラはアメリカにいるという「あったこともない家族」に興味はあまりないし、カスペルは追われる身。だから、中南米の貧困という問題はひじょうに強力な背景ではあるけれど、作品のメインではないんですね。
　ひょんなことから「逃亡するカップル」というハリウッド的ギャング映画のパターンに入った二人ですが、カスペルはいろいろ事情があるけれど、組織を裏切った以上、死を覚悟しているんですね。逃亡はするけれども、生きる場所を失ったことで絶望している。アメリカは彼にとっての希望の国にはなりません。彼は組織を裏切った瞬間から、まさに死んでいるのです。その意味で、彼はノワール的な主人公とも言えます。
　一方、サイラは社会性がないので、目の前の感情に大きく動かされます。この点、ＫＡＳＰＡＲさんが違和感を持たれたみたいですが、僕は自然に思いました。恋とも保護者を求めているとも思えますが、ここではまだ未分化な少女らしい感情が発露していると思います。父や叔父は社会性を持っていますが、彼女にはない。むしろ世俗にある親族よりも、浮世離れして純粋に見えるカスペルに惹かれていくのは（実はカスペルは絶望しているので純粋に見えるだけですが）、おそらくキリスト教圏に育った彼女には自然なことのように思いました。
　貧困や暴力のために故郷を追われ、遠く苦難な旅を続けなければならない現実。そこへの問題意識はあると思いますが、主人公ふたりの意識はずれている。それゆえ、単なる社会問題を扱った告発映画という陥穽を免れ、本作は上質な青春ドラマに仕上がっていると思います。旅を完遂し、いくつかの死を経験した少女の瞳には、力強い光が宿したように思えました。７０点。