僕の大切な人と、そのクソガキ

息子を持つ母親の心情としては
マザコンOK、マザコン大歓迎！ってところなんだけど
クソガキと呼ぶのもおかしい程大きくなって（息子２１歳）、おまけに大きな図体して、
母親がシャワー浴びているところに平気で入っていくその神経はちょいと異様。
夜中に３歳児の如く、雄たけびを上げてママを呼ぶ。
そしてママは朝まで添い寝してあげる。
まあ、仲良しを通り越して、常軌を逸している親子関係ですな。

そんな息子だから、母親に恋人が出来たことは当然許せないわけで、
あれやこれやと邪魔をしようとするわけですが、
そのやり口がまた陰湿で、笑えないのです。
ジョン・C・ライリー主演なので、てっきりコメディなのかと思っていましたが
コメディ要素はあまりなく、意外にもシリアスドラマでした。

あと、理解出来ないのは離婚した夫婦が未だに親友同士みたいに仲がいいっていうのも。
再婚相手との結婚式に元夫を招待するなんて、アメリカでは普通のことなのかしら？
マリサ・トメイは目の間から鼻にかけてのラインが相変わらずすごくセクシーで、声も素敵。

母親にとって息子とはいつまでも可愛いものなのではありますが、
ここまでお互いに自立出来ない関係にはなりたくないものです。

いくら俺でもこんなマザコン男になりたくない！

主演のジョン・Ｃ・ライリーはコメディ俳優ではなく、味のある俳優なんだということは分かっていたんですが、このタイトルと、またあらすじを見たら、どう考えてもコメディだと思ってしまうのが人情。しかし、まぁ、少しその要素はあるものの、基本はドラマですね。ちょっと嫌なガキの話だし、実生活であれば、多分、うまいこといかへんやろなぁ、と思う代物ですが、まぁ、物語だしね・・・

でも、「俺たちステップ・ブラザーズ」でまさしく、この逆の立場のバカ兄弟を演じていたジョン・Ｃ・ライリーの姿を思い出すと、なんだか「ん？んん？？」と思ってしまうのはしょうがないのかな。ちょっとあれが、下らぬ面白さがありすぎて、イメージが自分の中で出来てしまったからなぁ・・・

まぁ、なんでしょ、今の世の家族の有り方ってどういうもんなんだろうか、って思ったりする作品です。ちょっと理解しがたい部分もあるけど（元妻に恋愛相談までし、さらには結婚式まで参加する旦那）それもまた、世の先を行っているアメリカだからかな。

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ウ〜ム。レビュー書きにくい映画だなぁ。邦題は完全に「ラブコメ」の体裁だし、作品そのものも一見「軽め」のコメディを装ってるんだけど、とにかく全然笑えないし観終わった後に妙に「異物感」が残るのは何故だろう？
妻に逃げられて7年もの間「引き篭もり」状態だった中年男ジョン（ジョン・Ｃ・ライリー）がパーティーで凄いイイ女モリー（マリサ・トメイ。製作時46歳のハズだけど、このヒト年取るほどキレイになるなぁ）に遭って恋に落ちる。しかしモリーには精神障害気味でマザコンの息子サイラス（ジョナ・ヒル）がいて母親を奪われたくないサイラスはいろんな手を使って二人の恋を邪魔する…。これだけ聞くとサイラスを演じるジョナ・ヒルがどんな俳優か知らない人なら十分楽しそうなラブコメを想像するでしょうねぇ。しかしサイラスは「設定」でも21歳、演じたジョナの実年齢はこの映画製作時（2010年）は26歳で、「巨漢」と呼んでいい立派な体格の持ち主です。その上、精神障害「気味」ということになっているけれど言動、行動には全く「子供らしさ」も「障害者らしさ」も見受けられず、それどころか純真無垢とは程遠い狡知に長けた下品な笑みが随所に顔を出す、完全に「オトナ」の男なんです。「クソガキ」じゃなくて「クソ男」。一方、惚れた女の「息子」と恋の鞘当てを演じる「中年男」ジョンのほうは、引き篭もって不潔な部屋でマス掻いて、自分を捨てた元妻に7年経っても何かと甘えっ放し、というこれぞ現代版「マザコン男（「マザー」は出てきませんが）」の典型です。こんなサイテー男2人の間で「揺れ動く」女を「イイ女」とはとても言えない（例えマリサが演じていても）。つまりこの映画、「息子」と「男」の二つの「愛」の「板挟み」になる「イイ女」、という構図は最初から意図されていないんですね。
それでは一体作者はこの作品で何を「意図」したんだろう？穿った見方かもしれませんが、作者は「母子相姦」を「隠れた」テーマにした「つもり」なんだと思います。無論、この「母子」が「行為」に及ぶ場面は出てこないし、それを想定すべき「兆候」も描かれないけど、モリーとサイラスが「親子の情」を超えた「男女」関係であることをかなり「意図的」に演出しているのは明らかです。ウィキによれば西欧キリスト教社会は日本などに比べ特に母子相姦をタブー視する傾向が強いそうですから、この程度の表現でもかなりギリギリのところまで踏み込んでるつもりなんでしょう。だいたい「マザコン」という言葉自体が「和製英語」で日本ではかなり気軽に使われていますが、欧米ではあのフロイト先生が命名した「エディプス・コンプレックス（息子の母親への性欲が父親への憎悪と去勢不安をもたらす、という心理現象）」、またはずばり「incest（近親姦。ご丁寧に「情緒的（「行為」を伴わない）近親姦」という分類もある）」という言葉で表現されるくらい「特異な」「病的」心理傾向という認識がされていたようですし、「父と娘」の「犯罪」としての近親姦を告発する映画は多いのに「母と息子」というのはほとんど見掛けないですからねぇ（私が知らないだけ？）。
で、かなり「おっかなびっくり」で「コメディ」のオブラートで包んだってことなんでしょうけど、「マザコン」なんて珍しくも無い日本人にすればその「おっかなびっくり」感が妙に「異物感」を催すってことなんじゃないかな、と思ってみたりするんですけど（笑）。

　これってＤＶＤスルーですよね。この微妙さが私は大好きです（最上級に誉めてます）。

　えっと、配給会社さんもどの線で売ろうかって悩んだんじゃなかろうかと。コメディ色の強い邦題ですが、ドキュメンタリー・タッチの手持ちカメラは登場人物の内面に肉迫して、むしろ若干シリアスな空気を醸し出しています。主人公のあられもない登場の仕方から孤独な男の悲哀があぶり出されている。ジョン・Ｃ・ライリー演じるジョンは、奥さんに逃げられて早７年の幸薄い中年男だが、とあるパーティでの出会いで人生が変わるんですね。このシークエンスが実に巧い。最初に狙った美人には全く相手にされず、次にあんまりパッとしない女性の所に行って本音トークをかます。こういうのって女としては相手の魂胆見えちゃう訳です。「この程度の女だったら俺でも」って思われてるなと。寂しい者同士でくっつこうって言うのねと。バカにされてるのが分かるので女性もスッと身をかわす。こういうナチュラルな脚本＆演出に「いいぞ、いいぞ」とテンションアゲアゲになってきたところで、マリサ・トメイの登場です。この人もまたナチュラルで良いのですねぇ。リアルな生活感がある日常ゴージャスな美人（笑）。ジョンが、大好きな曲（ヒューマン・リーグの「Don’t You Want Me」です。懐かしい）を泥酔の勢いで熱唱し出すと客はみんなドン引きで、どんどん孤独にハマっていくのだけど、ここでモリー（Ｍ・トメイ）が歌い出して彼を救う。こういう優しさと勇気を素直に表現できるのってホントにいい女だなぁと思う。そんな訳で恋に落ちる２人。ところがこの恋には障害が・・・ってことで、２人の仲を引き裂こうとするモリーの息子がジョナ・ヒル。「スーパーバッド／童貞ウォーズ」（07）でマイケル・セラとつるんでたあの子ですな。イントロダクションでは「マザコン男」のひと言で片づけられてるけど、もうちょっと肉付けがあって、引きこもりのニートなんです。ちょっと、この題材ってアメリカ映画であんまり観ない気がしますが、どうでしょ。で、この母子の描写がけっこうリアルで、やや病的にも見える母子密着ぶりとか、息子の生活ぶりといい趣味活動といい、あるあるあるあるって感じ。実にいいトコ突いてるんですよねぇ。

　プロット的にはジョンと息子の攻防戦っていうヒューマン・コメディですが、描かれているドラマや作品の色合いは意外なほど真面目で、正直、途中まではどういう風に観れば良いか悩んだ。人物もエピソードも変なデフォルメがほどこされていないので、物語としては平板で動きも少ない。クソガキに恋路を邪魔されたジョンが、やたら狼狽して元妻の生活をかき乱すあたりだけコミカルだが、ちょっとワザとらしくて私としてはこういう小ワザの方が気になった。人物を面白おかしく動かそうとしなくても、リアルな内面を見せてくれれば十分に物語を楽しめる。

　あっけないラストも含めて全篇とにかく“さりげない”ので、人によっては物足りなさを感じるかもしれないが、私はこういう「世界の眺め方」を好ましく思います。とっても誠実さを感じる。ジョン・Ｃ・ライリーが好き！というちょっとコアな趣味の方にはもちろんオススメ。私は「ブギーナイツ」（97）の時から彼のファンなのでストライクっす。