大都会　ＰＡＲＴＩＩ

やはり渡哲也、松田優作、石原裕次郎の一番ステキな時を見ることが出来る素晴らしい作品だと思う。
一つ一つの作品の脚本もしっかりしていて、まるでそれぞれ映画の作品のように思わせる。
松田優作が渡哲也や石原裕次郎を心底信頼して尊敬しているというのがよくわかるし、テレビドラマでこういう3ショットが見られるなんて、昭和のテレビドラマを愛する者にとってはたまらなく幸せを感じる。
渡哲也もこのパート2では、かつて演じていた無頼シリーズ、仁義の墓場などで見せたヤクザのような雰囲気を漂わせていて、本当に厳しい渋い怖い表情が多い中、丘みつ子や松田優作を前にした時のはにかんだ冗談めいた表情が、あの当時の渡哲也の一番素顔に近い表情というのか、それがちらっとたまに見られるのもファンとしてはとても嬉しい。
撮影当時渡哲也35歳、石原裕次郎42歳、松田優作27歳と本当にみんな若く一番いい時代だったのかなと思う。
リアルタイムで見て、また40年近く経って自分の好きな時に好きなだけまたこの大都会パート2
に浸れるのが夢のようで、こんな今の時代に感謝です！
個人的に大都会パート2が一番好きです！
悪役で何回か登場する八名信夫、田中浩、小林稔侍など、どのメンバーも本当にいい味を出している。
小林稔侍に関しては、今はもうすっかりおとぼけの三枚目を演じているが、小林稔侍の悪の顔の恐ろしさ、不気味さ、この悪者の迫真の演技の右に出る者はいないと思う。本当に何を考えてるんだろう？犯罪者ってこういう精神状態なんだろうなというのを、目の動き、頬の動き、髪の毛の生え際の動き一つでも演じている小林稔侍の悪の徹し方には頭が下がる。
犯人役のあの鋭さの小林稔侍が今の優しいおじさん役より大好きだ。
平成では絶対にもう大都会パート2のような作品は生まれないだろうな。
何度見ても新たな発見があり、面白くて飽きない。テーマ曲も素晴らしく大好きだ。

なつかしの名作刑事ドラマと紹介されるわりに、意外と人気がないのかな。
近くのツタヤさんでは半年も経たぬうちに在庫ではなくなったし、DISCASさんでも在庫３年以上レビューなし、レンタル利用も少ない。
今さほど人気がない理由も、後述するようにたしかにわかるところもありますが、御存じない若い世代の方のために申しますが、のちの「　西部警察　」「　探偵物語　」[　あぶない刑事　]などの人気アクションドラマの原型といえる作品。
なつかしいけれど、当時も今も、特に熱心でコアなファンだったわけではない僕が、ワルクチ半分紹介レビューを試みますことを、ご容赦ください。

( ネタばれあり)
大都会シリーズ前作の「　大都会　闘いの日々　」(1976年)は本格的に石原プロが日本テレビと提携してつくった社運をかけたテレビドラマでしたし、NHKの大河ドラマ「　勝海舟　」(1974年)の主演を健康問題から降板した渡哲也の復帰第一作、脚本をNHKスタッフとの対立からケンカして降板した倉本聰のふたりにとってはリベンジ・マッチにあたりました。
しかし、暴力団担当刑事の地味な社会派色が強くてアクションが少なく、報復で妹がヤクザに犯された過去がある設定など、重く暗いシリアスな内容のため視聴率が振るいませんでした。

PART�Uは倉本聰が降板、社会派からアクション作品に路線変更し、登場人物は重なるものの、石原裕次郎が新聞記者から医者になるなど設定も変更、「大都会　」シリーズと看板だけは残ったが、まったく別ものになりました。( ちなみに『　ゴッドファーザーPART�U　』の日本公開は１９７５年、山口百恵の「　プレイバックPART�U　」が本作の翌年１９７８年で、以降「　第２部　」を「　PART�U　」と名付けることが流行し定着しました。　)

この「テコ入れ　」はシーズンを通して続き、キャストもたとえば課長役は小池朝雄から小山田宗徳さらに滝田裕介と替わるし、刑事の粟津號も途中で神田正輝、刈谷俊介に変更。
飲み屋の女将の佐藤オリエも、妹の仁科明子も途中からフェイドアウト( 松方弘樹との不倫の末の結婚で、女優引退したため　)
脚本も自由劇場の斎藤憐が参加するなどいろんな作家が書いていて、コンセプトもキャラもバラバラで一貫性がありません。　　その現場の試行錯誤ぶり、玉石混交の混乱ぶりが欠点でもあり、おもしろさでもあります。

シリーズの一方のカラーは要領の悪い古いタイプの男の世界。
今観ると、漢字にすると「誠」となるような渡哲也の黒岩刑事のキャラの直情ぶり、若頭的男ぶりは古き日本男児。
ヤクザ側も「アニキ」「ダンナ」だし、刑事側と双方、古き体育会系的な先輩・後輩縦割りの男社会。
男女機会均等法以前で職場でも女性は女子で、給仕か雑用担当で、犯罪者の女も、拳銃を構えても「　動かないで　」と男尊女卑の社会。
みんなタバコはプカプカ吸うし、ゲソ痕も刑事が自分で採る前近代ぶり。
警察の取り調べも別件逮捕や、締め上げは当たり前でコンプライアンスが気になってしまう。
パソコンもケータイもなく、昭和はもはや時代劇と感じます。

一方のカラーはバイオレンスと都会的なクールな軽さ、コミックなエンターテインメントさ。
松田優作にとっても、暴行事件の謹慎が開けてのテレビドラマ復帰作でした。
暴力的なはみ出し刑事であり、同時にお調子者のコミカルなズッコケ男であるこのキャラは、のちの「　探偵物語　」の工藤俊作につながります。

当時も、今回も印象的なエピソードは第６巻収録・第２２話「　最後の戦場　」
戦後３０年以上経っても平和な世の中になじめず、闘いの場を求めて犯罪に走る旧・帝国軍人の男。( 根上淳　)それを追うたたき上げの古参刑事( 高品格　)
男はインパール作戦の生き残り、刑事は北支にと、兵役経験者がまだ現役だった最後の時期であり、小野田寛郎氏のルパング島からの帰還が１９７４年でしたから、当時はまだリアリティのある設定だったんですね。

根上淳さんは、自身の戦争体験から兵隊の役は避けてきたそうですが、今回引き受けた、この過去の亡霊のような役はインパクトがありました。

老いたオオカミと老いた猟犬の対決はハードボイルドですね。

脚本は本シリーズからスタッフ・ライターになった柏原寛司。　監督は村川透。
のちに松田優作と数々のアクションの名作や「　あぶない刑事　」を作る彼らの原点を感じました。

渡哲也の黒岩警部はサングラスをかけて大門となり、城西署の刑事たちは軍団となって、劇画アクション風にキャラのより濃いキャラ「西部警察」となっていきます。