風来坊探偵　赤い谷の惨劇

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　風来坊探偵が山岳地帯の牧場の利権をめぐって悪人と争う話。

　60分ほどの中編で、おそらく予算とかも少ないながらもジャンル映画、プログラムピクチャーとしての無国籍アクションとして楽しい1本でした。
　冒頭からセスナ墜落があり、そこから行方不明者を探す親族がいて、どうやら悪い会社がいてそこが犯罪もいとわない連中で彼らと揉めていて、そこに主人公の風来坊探偵が現れて、犯罪者集団と対立を深めていく。

　ただ中編のため、一応主人公が探偵らしく推理をして事件を真相を明らかにしていきますが、セスナ墜落のための元スチュワーデスさんがパラシュートを使ってダイブとかかなりリスキーな犯罪だし。クライマックスで主人公が相手のボスに推理をするところとかも急展開過ぎて驚くとかよりも戸惑う解決でした。そこからの銃撃戦は迫力あってよかったです。

　主人公のライバルとして出てくるスペードの鉄なるキャラクターもあまり魅力的ではなく、ただの日和見な男にしか見えないのが残念でした。やたら鳥やウサギは殺すくせになかなか人間が殺せないキャラクターで全く主人公のライバルとして全く怖くも特に何もない人物でした。

　とはいえ、雄大な自然の中でのアクションとかはスペクタクルで見ものの映画でした。

(　ネタばれあり　)

６２分と短く、別のメイン作品の併映作品であったろうと推測されますが、新人の初監督、初主演作品としては浅間山ロケと特撮とか意外に予算が使われているようで、この新人監督、新人スターコンビを売り出していこうという会社の意欲、当人たちの熱気は感じます。
実際この若い彼らはこの年作品を量産していきます。

ニュー東映製作作品を観たのは初めてかな　?
ニュー東映は第二東映を母体に倒産した新東宝を吸収した、作品量産体制のための会社であり、そのためか本作も俗悪と言われようとエログロとかバイオレンスとか問わず、娯楽に徹した社風を感じます。
デビュー作品はその作家の原型というけれど、深作欣二はアーティストというよりカツドウ屋であり、ケレン味の作品を作るプログラム・ピクチャーの職人という感を強くします。

風来坊探偵という設定は西部劇風でもあり、現代に置き換えた股旅ものとも言える、無国籍風ですが、もっと言ってしまえば、本作の少し前にヒットした日活の小林旭の渡り鳥シリーズを思わせる。
実際、本作で千葉真一と拳銃コンビとして売り出された曾根晴美の役名はスペードの鉄で、宍戸錠のエースのジョーそのままいただいてるという感じ。
ただ失礼で申し訳ないけど、宍戸錠とはキャラの立ち方、役者の格がまったく違い、拳銃コンビのイキガリ方と男の友情はクサくってあか抜けない。
風来坊探偵シリーズは２作で打ち切られ、企画はテコ入れされてファンキー・ハット・シリーズと変わります。

新人コンビ　まだまだ今ひとつの巻。

千葉真一を初めて観たのはＴＶ映画「新・七色仮面」（１９６０年）主演の蘭光太郎探偵。七色仮面のスーツアクターも千葉本人が兼務したそうです。今観ると流石に若い。その後が「アラーの使者」「鉄道公安３６号」と記憶しています。
千葉真一は映画では深作欣二の初監督「風来坊探偵・赤い谷の惨劇」（１９６１年）に初主演。危険なシーンも吹替え無しで出来るとスタッフに言ったので“さすが日体大だけに凄い”と評されたそうです。