ハッシュパピー　バスタブ島の少女

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29歳の新人監督・ベン・ザイトリンが低予算で製作し、サンダンス映画祭、カンヌ映画祭など多くの映画賞で話題を呼び、アカデミー賞では主要４部門にノミネートされた注目作。
世界の果てにあるバスタブ島で暮らす6歳の少女ハッシュパピーが体験した深い哀しみとその後に起こる奇跡を描き出しています。ホンジュラスで暮らす少女クヮヴェンジャネ・ウォレスが主人公を演じ史上最年少のオスカー候補が話題になりましたね。

彼らが住むのは河川敷近くにある孤立したコミュニティ、通称「バスタブ」に住む６歳の少女ハッシュパピー。彼女は荒くれ者の父親や野生動物と共に、自由に暮らしていました。そんなある日、バスタブを１００年に一度の嵐が襲います。さらに父が重い病気であることが判明し、ヒロインの目を通して、父を守り、環境を守り故郷を保護する大切さを説きます。
島での生活や物語の中に、神話的な演出があり興味深いです。イノシシみたいな巨大な架空動物が出てくるファンタジー映画ですが、ただのファンタジーを期待したら肩透かしを食らってしまいました。ドキュメンタリー風に撮ることで、現実と空想が入り混じった世界との融合が上手く撮られているように感じました。

残された僅かな時間、父が娘に伝えたいことは？
ところが彼は娘に優しい言葉を掛けてやれず、いつも怒鳴ってばかりです。そして島でのサバイバル術をハッシュパピーに教えるファンキーな父親役がとてもいいです。
最悪の環境にありながら、どこか突き抜けた明るさ、力強さがみなぎるハッシュパピー。
島に訪れた災難や母の不在、父の重病などの困難に負けまいと必死に生きる少女に、心打たれました。

今年のアカデミー賞の作品賞と主演女優賞にノミネートされていましたが、変り種ってことで入れたのかな？
私はあんまり好きじゃなかったです。

海に浮かんだ小さな島通称バスタブに、父と暮らす少女ハッシュパピー。
バスタブは嵐がやってくればたちまち水没してしまいそうな島。
何度か氷河が崩壊するシーンを挿入しているのは、温暖化による影響を示唆していると思われ、
てっきり南太平洋かとどこかの島だろうと思っていましたが、アメリカの南部デルタ地帯が舞台とのこと。
長いコンクリートの堤防の向こう側にはたくさんの工場が並んでいて、
ハッシュパピーが住む島は現代文明とほんの隣あわせのところにありながら、それとは全く無縁の暮らしを送っていることがわかってきます。

大嵐を前に、バスタブの住民の多くが避難を決めますが、ハッシュパピーの父親を含む少数の住人は頑固に島に留まります。
ところが、ハッシュパピーの父親が不治の病に冒されていることがわかり・・・。

冒頭からカメラはブレブレ。
その上、ハッシュパピーたちの暮らしがあまりにも不衛生なのにひいてしまいました。
アイスボックスから取り出した鶏をあぶっただけのものや、海で採ったえびや蟹を、手づかみで食べるような食事だし。

なによりも父親の信条が理解しがたいです。
なぜここまでバスタブに住むことに拘るのか。
長く住んだ場所への愛着を捨てられないという気持ちはわからなくもありませんが、
爆弾を仕掛けるという破壊行為に出たり、もしかしてこれは環境破壊に抗議する一種の新興宗教みたいなものなのかもしれません。
「女とは同じ家には暮らせない」といって、娘に別棟で住まわせるって一体どうしてなんでしょう。

子供が「今の暮らしが好き」というのは当たり前です。だってそこしか知らないんだから。
それなのに、親の主義や好みを押し付けるのは間違っていないかな。 子供はどこに住んでも適応できるのに。
さらに、死期がせまっても、ただ「強く生きろ」というだけでは、子供はどうしていいのかわからないんじゃないかな。

伝説の巨獣と主人公が対峙するファンタジックな部分も、あまり好きになれませんでした。

大人にお勧めしますのリアルファンタジー。僕はけっこう惹きこまれました。
パープルローズさんのおっしゃるように、意外にもカメラ手持ちのブレブレで、あまりにも汚い環境だし……のは確かですけど。
環境についてはリアルなものというよりは、少女目線のファンタジックな世界の描き方という感じがしましたね。どんどん水かさが上がってくるのに逃げないでみんなでカニ食って大騒ぎするとか、ほとんどジュヴナイルの世界でしょ。
これちょっとカメラを落ち着かせて、ＣＧな意匠を分かりやすくくっつけたら、ハリウッド・ファンタジーの定型に変貌すると思うんです。
でもそこをあえて（か予算の関係か）、手持ちカメラブレブレでリアルに撮っているところが本作の特徴ですね。
そうすることによって、小さな子が今まで安住していた世界、ガス大爆発でもまあハッピーな子供の世界から抜け出ざるを得なくて、仲間と冒険の旅に出て、お母さんにだっこしてもらって、お父さんとさよなら……これは成長譚であり、通過儀礼の物語なんですね。その象徴が、遠くから少女を目指してやってくる謎の巨大イノブタなんですな。
少女の成長、世界との出会いをこんなふうにリアルに結びつけたファンタジーは、たぶん初めてでしょう。75点。

ルイジアナ州の湿地帯にある架空のコミュニティ“バスタブ”に生きる少女ハッシュパピーを主人公にしたファンタジー映画。いや、確かにファンタジーはファンタジーなんだけど、美しい寓話を想像すると多分面喰らうと思う。
例えば、（タイトルの雰囲気がちょっと似た）『クジラの島の少女』がナウシカなどに連なる正統派のヒロイックファンタジーであるとしたら、本作の方はもののけ姫の系譜だろう。作品を動かすのは「物語」ではなく、メタファーだけで構築された世界観そのものといった感じ。

正直、口当たりは優しくない。少女が主人公ではあるのだけど、その成長物語というよりは、もっと原始的な説話っぽいというか、荒々しく生命の本質のようなものが語られている。
最も象徴的なのは、カニをフォークで食べようとした彼女を、父親が「むさぼれ！」と怒鳴りつけるシーンだろうか。この父親は終始、効率やマナーといった以前の、「まずは生きる」強さを娘に伝えようとしている。これ以上ないほど不潔で野卑な男ではあるのだが、全篇通して彼なりの愛情が感じられて、僕は不快に思わなかった。
結果的にその烈しい教育が、子供にとって、いや人間にとって最も困難な「死を受容する」強さをハッシュパピーに与えることになる。

改めて書くが、本作は現代のおおよそ実在する土地を舞台にはしているものの、本質的にはインディアンやアボリジニなどに伝わる伝説、あるいは日本で言えば国産み（神産み）神話などに構造が近い。
そんなことを思って監督のことを調べてみたら、なんと両親が民俗学者なのだとか！僕の目利きも満更じゃないなと、ちょっと自画自賛した次第。

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過酷な生活環境に置かれた少女がたくましく生き抜くってプロットで、
「ローズ・イン・タイドランド」（05）が頭をかすめ、
獣と少女の取り合わせは宮崎駿が思い出されたりしたのだけど。

なんだろか、こういう物語には作り手の思い込みが感じられて、あまり好きではない。
“少女”という存在に対する過剰な期待というか神聖化というか。
どんなに汚れた世界でも彼女によって「浄化」される、みたいな。
ジブリで言えばナウシカなんか完全に救世主にさせられちゃってたし、
いや、そーじゃなくて女の子は守ってあげてよ、子どもは暖かくて清潔で安全な場所にいさせてよ、
とオバサンなんかハラハラってかイライラしちゃうわけで。

こーゆー世界観って一種のマザコンなのかなぁ？とも思う。（すいません、勝手言ってます）
たぶん息子相手ならもうちっとパパもシャッキリしそうな気がして。
手本にならにゃって無意識のプレッシャーがありそうだけど、
相手が娘だと甘えられちゃうんじゃないかなって。
「なんだかんだ言っても女はたくましいのさ」って殿方は思っとるのと違いますかね。
まぁ、それを言ったら女の側にも「男だったらアタシを守ってよ」という
身勝手な思いがあるのだけども。

さきほどマザコンという言葉を使ったけど、これは決して否定的な意味じゃなくて、
基本的にマザコンの男性は優しいでしょう。
悲しみも苦しみも全て包み込む“母性”に対する畏敬と賞賛の念が根底にあるんだと思う。

バスタブ島から強制退去させられた主人公らが収容される施設は、人として「あるべき姿」
に管理・矯正される“父性的”な場所で、私なんかは清潔でいーじゃん！って思うけど（笑）、
島民たちは我慢ならんのだね。
で、逃げ出したハッシュパピーと子どもたちが海上で辿りつく盛り場は、女たちが優しく
迎え入れてくれてなんだか怪しげなんだけど（苦笑）、清濁併せ呑むって雰囲気の、
まさに“母性的”パラダイス。
そして最後にハッシュパピーは臨終の床のパパに食べ物を与える。
まるで母親のように。

なんだかねー、このパパはお気楽すぎる気がするのだねー。
自分はずっと好き勝手やってきて、「俺の仕事はお前を死なさないことだ」なんて、
そ、そのラインは親として低過ぎやしませんかね？（笑）

あの巨大な獣は「過酷な人生」の比喩のように思えたのだけど、パパは彼らと対峙しないもんね。
ハッシュパピーは結局のところ、彼らを「手懐けた」ってことなんじゃないかと思います。
いたいけな少女に看取りまでさせて、ちょっと負わせすぎだよなーと、
あんまりイイ気持ちはしないのでした。