パラダイス：愛

予想を超えたショックを受けました。

この監督がいかに非凡で天才かがよくわかる作品。
すっかり策略にはめられたといった感じです。

最初は普通に見ていられますが、だんだんと苦しくなります。

はじめのほうのヒロインは普通に可愛いオバチャマ。
徐々に誘惑にハマっていっちゃいますが、
途中までは理解はできます。
どんどん可哀想になり、
いつのまにか人間崩壊して可哀想なんて言ってられない。
現地の人たちも嫌だし、主人公たちも嫌。

苦しくて苦しくてたまらなくなりました。
それがこの映画の狙いだったと思います。

すごい作品でしたが、
現実的に、女性がリゾート地で地元の男性たちを金銭と引き換えに弄ぶことなんてあるのか疑問に思いました。
適当な単語でネットで検索しても、
男性が海外で女の子を買うというのはいくらでも出てきますが、
この作品のような情報は全く出てきませんでした。
あ、あった、と思ったら、まさにこの映画のPRでした。

ウルリヒ・ザイドル監督、強烈。
こんな世界があるなんて、思いもしなかった。

よく日本でも中年のくたびれたサラリーマンが金にものを言わせて東南アジア方面へ
買春ツアーに行くって話は聞くけど、その白人の女性版があるなんて。
ちょっとしたショック。
本当にあるのかなぁ。よく知らないけど、まあ、絶対ないとも言えない。

主人公はザイドル監督作品ではおなじみのマリア・ホーフスタッター。
５、６０歳くらいのだるっだるの贅肉をたっぷりまとった巨体。
真面目に仕事に明け暮れ、至って普通のおばさんに見える。
休暇をもらったのだろう、小さなスーツケースを転がせてバカンスへ出る。

そのバカンス先はケニアのリゾート地。
海にそのまま行けるコテージ。
うわあ、優雅だなあと思ったのもつかの間、巨体を水着に押し込み
バーへと向かう。

プライベートビーチにはリクライニングベッドが並び、主人公と同じおばあさんに片足が
入ったくらいのおばさん、巨漢がビチビチの水着姿で寝そべったり自由に楽しんでる。

もうコントだ。
ザイドル監督の作品はどれも毒々しいのだけど、度が過ぎていて
気持ち悪いとか怖いとかを通り越して笑いになっちゃう。
たまーに、笑えないくらいのエグさやえげつなさも挟みつつ、
嘘やろ！
なシーンが並べられる。

プライベートビーチの境界にはロープが張られ、そのロープの向こうには
現地の貧しい黒人の若者がお土産あるよとずらりと並ぶ。
かなりしつこいのだけど、わたしが経験したインドよりはまし。

この辺りの持つ者、持たざる者の対比、白人と黒人、ヨーロッパと元植民地のアフリカの
対比のコントラストが強くて考えさせられる。

そんな観客のことは気にせず、ザイドル監督はこれでもか、これでもかとばかりに
強烈な画を放り込んでくる。
老人の性、というのか。
今の日本人１０代、２０代の草食ちゃんたちが見ると腰を抜かすんじゃないか。

大阪のおばちゃんが一番強烈だと思ってたけど、この映画を見ると、世界には
更に上がいるようだ。

毎回想像つかないエピソードが飛び出し、強烈な映像を見せてくれて目が離せない。
ホドロフスキーとはまた違った面白さ。
エログロ感は同じくらいなんだけど、テイストが違うっていうのかな。

もっとザイドル監督作品見たい。

っていうか、ここに登場するあの主人公ってほんと馬鹿だな。
そんなわけないだろってツッコミどころ満載。
自分が見えてないって怖い。