人間の値打ち

ひき逃げ事件をめぐって交錯する2組の家族の運命をミステリータッチで描いたドラマ。
クリスマスイヴ前夜、ミラノ郊外でひき逃げ事件が発生。その半年前、不動産屋を営む男ディーノは、娘セレーナの恋人の父親である投資家ジョバンニと知り合い、自分も儲けを得ようと、無謀な投資に手を染め、借金をしてジョバンニのファンドに投資します。
大富豪ベルナスキ家のカルラ夫人は虚飾に満ちた日常に虚しさを感じ文化事業に精を出しています。やがて彼らの運命は激変し、事件の意外な真相が明らかになっていきます。

ある事件を不動産業者ディーノ，その娘カルラ，投資家の妻セレーナの心模様が描れ、それぞれの視点から描いた展開、構成が巧みで見事でした。
愛はお金で買えるのか？　人の命はいくらなのか？　異なった価値観の中で生きる人々の人間の本音と建前と、“人間の値打ち”という深遠なテーマを追求した監督の手腕が光ります。
それぞれの思惑や打算的なところに人間の本質を感じました。
タイトルは生命保険金額の算出に絡んだ言葉です。

「いくらあれば人間は幸せになれるのでしょう」と副題がついているが、たわけた
質問である。
サスペンスとは言っても特にナゾはない。
「第一章・ディーノ」ディーノとはセレーナ（新星マティルデ・ジョリ）の父である。
一攫千金を夢見て投資する。気色悪い初老のオヤジのくせに、妻を妊娠させ、妻がお腹
が痛いと言っても「気のせいだ」というゲスである。前妻（セレーナの実母）は男を
作って逃げたのでセレーナは愛に警戒心がある。
「2章・カルラ」富豪の妻でありながら豪勢なところも華美なところもない不安気な女
。ひき逃げのあった日、ある意味、醜悪な一夜の関係があった。相手は芸術家気取りの
ゲスなサルである。
「3章セレーナ」であるが、心身ともに醜悪な大人たちの中で唯一美しいのがセレーナの
瞳と、薄明かりのなかの裸体ショットである。
多くの説明はないが、若き日のひたむきな熱情と愛は伝わってくる。
前半、面白いんだか面白くないんだか少し地味な画面を我慢して、セレーナの章までぜひ。

「人間の値打ち」などと大層なタイトルをつけなくとも、あっさり観ればそれはそれで
観た感はあるかも。

イタリアのアカデミー賞を受賞したというこの映画、2013年作品が
昨年やっと公開されたんですね。

ひとつのひき逃げ死亡事故の犯人をめぐるサスペンスと、
絡み合う人間模様と思惑。

大金持ちの投資家一家。鼻持ちならない当主。
虚しい妻とバカ息子。

それに息子のセフレのセレーナ。
セレーナのコネを強引に投資家にねじ込んで、
全財産を投資するセレーナの父親ディーノ。

「金」「金」「金」のこの世界の醜さを、嫌というほどリアルに活写しています。オエーッとなるほどです。
なんたって娘の気持ちなんかより、「お金が1番」という、
父親ディーノの、転んでもただ起きないたくましさに、
人間、本気出せば凄いんだ・・・と、でも、醜悪。
ディーノの後妻は唯一まともな人間でしたが、
娘のセレーナの金持ち息子を振って、夢中になる相手・・・
全然、まともじゃないですよ。
それにしても、ひき逃げ死亡事故の被害者を悼む視線は、
微塵もなかったですね。(小道具か！？)
金持ち一家に鉄槌を下したかったです、マジで！！

題名から、ややこしい宗教がらみの価値観をどんなふうに描くのかと思ってみたが、単なる「慰謝料」のことだった。
映画としては、矛盾や破綻も無くそれなりに最後まで興味を繋いでくれていたので悪くは無いが、カルラと取引をしたディーノ（セレーナの父）の事について最後に何も触れられていなかったのがやや不満で消化不良。