長沙里９．１５

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　朝鮮戦争のときの陽動作戦の任務に就いた学徒兵たちの戦いの話。

　まだまだ訓練もままならない幼い少年たちが無謀といえる作戦の任務を与えられるという。そして上官がその命令に背くと一時的にでも死刑になってしまうという上層部の冷酷っぷりが酷い映画でした。

　冒頭の夜中の上陸作戦から人民軍をトンネルで待ち伏せて奇襲する作戦やクライマックスの撤退などどの戦闘シーンもさすがの迫力でダイナミックな戦闘が見られて大満足でした。

　主人公はもともと北朝鮮側にいて南側に家族とやってきたけど、みんな死んじゃって、しかも北朝鮮軍側にいとこと再会して…。というキャラクターと大家族に生まれたため疎まれて愛されなかったというキャラクターが対立しながらしだいに和解していくという構図が描かれていきます。

　ただ冒頭の戦闘シーンからすごい迫力ですが、それだけで30分近く戦っていて、あまり人物の掘り下げがされていないまま進んで行くストーリーでした。主人公以外の少年兵たちも女性が紛れていて…という設定のキャラクターも少し出てくるだけでしたし、ミーガン・フォックスさん演じる従軍記者も明らかにゲスト扱いのためだけのキャラクターで面白みに欠けるシーンが続きました。

　少年兵や彼らを率いて親目線となる軍人さんたちとかも1人また1人とやられていってもそこまで盛り上がることはなかったです。それに韓国映画特有の感動的で大仰な音楽が流れて泣き叫びながら退場していくのとかも食傷気味でした。

　とはいえ、仁川上陸作戦は有名ですが、その裏で戦っていた兵隊さんたちを知ることができただけでも満足の1本でした。

1948年分断国家として独立を果たした北朝鮮と韓国、1953年に金日正率いる北朝鮮軍が38度線を越えて韓国に侵攻、いわゆる朝鮮戦争の勃発である。
これは両国間の民族戦争というだけではなく、韓国の後ろ盾となった西側自由主義陣営と北朝鮮を援助する中国等の社会主義陣営の戦いでもあった。
なんか現在に起きているロシアのウクライナ侵攻とそれを援ける西側諸国との対立構図とも似ている。
本作は劣勢になった韓国軍がマッカーサー将軍の立案した仁川上陸作戦を成功させるため陽動部隊として長沙里への上陸を命じられて派遣された722人の学徒を中心とする部隊を「知られざる陽動作戦の真実」として史実に基づいて映画化された作品。
満足な実戦訓練もなく、充分な武器や食料も持たずに送り出された若者たち、いわゆる作戦のための「捨て駒」だった。
戦争ほど愚かな行為はないというのは万人の共通した思いではあろうが、それでも戦争は起こってしまう。
そうして若者たちが散って行くことになるのだがそこには「祖国を守るために」という辛い大義しかないのだろうか。
本作は若者たちのそれぞれのドラマを紹介しながら、民族戦争故に親友とも戦わなければならない哀しさ、作戦のために多くの命を「捨て駒」にする軍上層部の非情さを描いている。

韓国の戦争映画には秀逸なものもあるが、本作は凡作。映像も迫力に欠けるし、人間ドラマも薄っぺらい。無理やり感動に持って行こうとするところも凡作に拍車をかける。