カサノバ　〜最期の恋〜

「マリー・アントワネットに別れをつげて」（2012）と「あるメイドの秘かな欲望」（2015）が
わりと良かったので、ブノワ・ジャコー監督の名前に惹かれて鑑賞。

ラヴァースさんのご指摘どおり、プロダクション・デザインの素晴らしさに目を見張りますね。
豪奢な衣装やお屋敷の内装にウットリだし、屋外シーンの色彩も美しい。あのカフェ！

年老いたカサノバが、これまでの人生で忘れられない女性がいる・・・と語りはじめるところから
物語が始まる訳ですが、そう、これって本人の思い出話なのですよ。
なので、ここで描かれてることは、全て彼の「頭の中にある」オハナシ。
当時すでに老境にあった彼を翻弄（ほんろう）しまくったシャルピヨン嬢の、
あの支離滅裂なツンデレぶりは、もしかしたらカサノバの脳内で増幅されたものかもしれない。
（バルザックの『ランジェ公爵夫人』っぽくもある）

そんな妄想めいた、どこか現実味のない男女の恋の駆け引きが、延々と繰り広げられるのが
いとおかし・・・であります。
こういうのってもう、人物がどうこうじゃなくて、爺さんVS女子のパワーゲームを、
豪華絢爛な絵巻物で見せられる感じが面白いのだな。
そういう表層にこそ、この映画の魅力が宿っているように思います。
爺ィがメロメロになって弱っていく様は、ちょっと可哀相なんだけど。(^^;

「あるメイド〜」で非情な下男ジョゼフを演じてたヴァンサン・ランドンが
ちょっと痛い目に合ってるのが、個人的には留飲さがってムフフでございました。
ワンコを殺した罰じゃー！（江戸の敵を長崎で討つ）

　プレイボーイという存在に興味も関心もないのですが、ずいぶん以前に観たアメリカ映画「カサノバ」（2005）が案外楽しかった記憶があるので、届かない他の新作代わりに観ることに。

　18世紀のロンドンを舞台に（けれどフランス語）、初老のカサノバが、若くコケティッシュな女性に、いいように翻弄される話。そして、最後には、我慢の限界がきて、お気に入りの玩具が手に入らない子どものように怒りを爆発させるまでの、ふたりの関係や心の動きが、実にゆっくりと丁寧に描かれている。

　貴族階級が背景になっているので、衣装や調度類は優雅で素敵なのだけれど、何というか品がない。あるのは抑圧された欲望だけ。好色なのはカサノバだけではないし、愛欲に毒された社会だ。要するに、好みの映画ではなかったということ。

　カサノバは、彼女を思い出し、過ぎ去って初めて愛だと気づくこともあると言うのだが、彼女を手に入れていたのなら、きっとたちまち忘れ去ってしまったことだろう。彼女にだってそれが痛いほど分かっていたのだ。

　「男は情欲を満足させる迄は、女よりも烈しい愛を相手に捧げる」（夏目漱石『行人』）

年末になって ベロッキオの「シチリアーノ」の後にブノワの
「カサノバ」まで見れて幸せ也 僕の中でベロッキオとジャコは
ペアになってて 若い頃から見ていて みんなお爺さんになったにゃ

主演のヴァンサンランドンはドワイヨンの「ロダン」を見た位か
今作で初めて彼は良いなあと思う 目とスマートTVに響く声が良し
何処でもドアでやっちゃうエロ爺いなのだが 女性から見るとイケ
てるんじゃないの？ この老年の爺達が僕と一体化する
ブノワジャコモカサノバラヴァース ははは めっちゃ想いがわかる

ちょっと「バリーリンドン」な暗さの中の日本ではあり得ない
素晴らしい舞台装置での物語は どこか曖昧でスローに語られる
しかしダルデンヌ兄弟協力なので 人が動き出すとキャメラ一体化
の動的な表現となるのがアクセント 現代的でキャッチー

お話が何か曖昧と言うのは ラルジャン お金絡みの話なのに 人は
動くし金に言及するのに お金は転がらないのだ 人が困っているの
にカサノバは無言で受け流して 支払いや精算の事が出て来ない
1200ギニーで主役の娼婦を請け負うとのジャコモの申し出は後半
に漸く出るのだが それも母親に断られてしまう このサスペンス
ではない宙吊り状態が 物語を停滞させてしまう様に見えてしまう
訳なのだが ノンセックスの禁断のルールがラストラブアフェアの
ジリジリ感にうまく整合している訳なのだ

成瀬映画の様にファンファタールは 後半画面から消え去ってしまう
ああ おいらくの恋は哀しくて無様 老慘の恋物語は醜く ようく
わかるよ しかし映画としては何とも美しく鈍く輝いているだろう
僕の今年のベストテンは 一位が「TENNET」そして堂々二位を
この「カサノバ」にします どちらもテネット(信条)が秘かに
テーマとなっているのです

手に入らなかったから執着するのかなとも思ったし、失ってから大きさに気付くのかなとも思いました。
それにしてもカサノバ結構な年齢であんな若い人にいくら美しくてもちょっと引いてしまいました。
シャルピヨン嬢は本気だったのかどうだったんだろうと考えました。
恋はタイミングもあるからすれ違ってしまったのかなと思うけど寸止めされると辛いかなとも思いました。18世紀のロンドンの貴族の人って節操ないというか仕事してるのかなとも思いました。
衣装や建物はきれいで見とれてしまいました。シャルピヨン嬢役の女優さんきれいだし美しい裸体だなと思いました。