チャンシルさんには福が多いね

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（2019年韓国）
「他人の不幸は蜜の味」「隣の芝生は枯れちまえ」を信条にしている私が、
『福が多いね』などという作品を見たいわけがない。
小林正観だの斎藤一人だの、「ありがとう感謝しますと1万回」ゆったらドリームジャンボが当たるかっちゅのよ。
しかもチャンシルさんは地味なオバサン（40歳）で着ている服も黒いジャンバーだ。
華がない。絶対見るもんか。

しかし、「借家に幽霊が出る」の一言で気になってしまった。
チャンシルさんはマイナー志向でウツウツとして人生絶望しているところ、
強力な地縛霊が現れ、金縛り状態にさせたまま「お前の人生などまだマシだ・・」
と説教垂れる話ではないか・・？

と、期待したのだが全然そうじゃなかった。
幽霊は自称レスリー・チャンで、しかしまったくレスリー・チャンに似ていないのだ！
（言ったもん勝ち。）
幽霊です、と言われればそうですか幽霊なのね、として見てやるのがエンタメ上の付き合いというものだ。が、まったく絵的に差がなく、少しは映像をボンヤリさせるとか空中に浮かせるとか工夫のひとつも欲しいところだ。
しかも、物質通過しない。ドアを開けて入ってくる幽霊。（さすがに腹立つ。人間じゃん。）

チャンシルさんも40年も生きてきたのに、何を焦ったのだろうか、路上で男性に抱きつく。
（私とずっと一緒にいてほしい）
男「アナタの事は姉ちゃんだとしか思ってません」

チャンシルチャンシルどこに福があるぅ♪　イエなし、金なし、男なしぃ〜

なーんだ、「福」なんかないお話だったわ。

冒頭、「映画の価値は、興行収入や評判で決まるわけではない・・・」そういう映画を作って来たであろう、プロデューサー、チャンシルが主人公。女性でアラフォーで独身。「ジプシーのとき」に感動して業界に入った。仕事によってすべて満たされているつもりだった。が、ずっと一緒に仕事をしていた監督が急死したことで、そういう人生がプッツリと途切れてしまう。自分のキャリアを認めて、雇ってくれる人がいない。ひょっとして私負け組？夜、ひとりぼっちの部屋に帰ると、寂しさとむなしさがこみ上げる。以前の仕事仲間は遊びに来てくれる。両親は心配して手紙をくれる。下宿先の大家さんもいろいろ世話を焼いてくれる。そういうある日、自分にしか見えない幽霊があらわれ、素敵なアドバイスをさずける（これがなかなか含蓄深く、ためになる）・・・

チャンシルさんが小津安二郎をこよなくリスペクトしている
ということがわかる件で、いきなり親近感を抱いた(笑)

それにしても何も起こらない映画だ。
映画プロデューサーをしていたチャンシルさんが
映画監督の突然の死により、職を失い田舎の貸家に越してくる。
職無し、男なし、お金なしの40歳の彼女は
生きるエネルギーを奪われたように活力を失っているが
真面目なチャンシルさんは、プライドを捨てて女優の家政婦までする。
そこで出会ったフランス語の教師に恋をしたりもするが
貸家に現れる自称レスリー・チャンの幽霊や
つっけんどんだけど本当は心優しい大家さんに励まされて人生を再生していく。
実はこの大家さんも幽霊？なんて思ったけど、そうではなかった(笑)

自称レスリー・チャンの幽霊を演じる俳優さん。
レスリー・チャンには全然似ていないが
どこかで見た顔と思ったら
『愛の不時着』の耳野郎のマンボクさんではないか！
マンボクさんと分かった瞬間に、この幽霊に愛着を感じた。
ランニングとパンツ姿は頂けないが。。。(笑)

　なかなかに暗いというか重いというかシリアスな内容なのね。
　ちょっと鬱々しちゃう。

　ある意味では、なにも起こらない映画。

もっとコメディで明るいのかと思ったら意外とシリアスで色々と考えさせられました。
主人公のチャンシルさんの気持ちがすごい伝わってきて良かったです。