Ｄａｕｇｈｔｅｒｓ

　邦画なのにタイトルは英語ということからも予想がつくように、いい意味でも悪い意味でも生活感の稀薄な、とってもファッショナブルでオシャレな映画。高校時代の親友同士で、東京の中目黒のお洒落なアパートでルームシェアをしている27歳の綾乃と小春。それぞれイベント企画やイベントデザインという今風の会社に勤め、気ままで充実した楽しい生活を送っている。ところが、綾乃が予期せぬ妊娠をしたことから起こってくる生活の変化や軋轢が、４月から翌３月の１年間にわたって、表面をなぞるように深入りせず、サラッと描かれている。

　４月に妊娠が分かってから綾乃は、大して悩んだ様子もなく、相手の男性を追求するでもなく、ひとりで産んで育てると、いともあっさり決めてしまう。しかも、検診のたびに小春に同行を頼み、まるで保護者のように小春は産婦人科に付き添って、綾乃と一緒に胎児のエコー画像を見て、医師の話を聞く。妊娠に関する最近の医学知識が話題になるので、これから妊娠という若い人には参考になるかもしれない。けれど、いくら仲のいい親友とはいえ、ここまでルームメイトの妊娠・出産に付き合えるものだろうか。

　綾乃は悪びれずもせず、それを当然のように受け止めて、掃除等についても小春に細かく注文をつける。これだけ助けてもらっておきながら、小春が職場の後輩を一晩泊めようとすると、やめてほしいと苦情を言う。いざ赤ちゃんが生まれたら、ふたりの関係は一体どうなってしまうことだろうと思っていると、一番大変な出産前後の３か月については、描いていない。入院や退院、４時間おきの授乳や赤ちゃんがすぐ熱を出すこと、睡眠不足必至の夜泣き、育児と仕事をいかに両立するかなど、一緒に生活していれば、とうてい関係ないでは済まされない、あれやこれやは見事にスルー。

　シングルマザーを応援する映画だとしても、生後４か月ぐらいになった赤ちゃんと親友ふたりが車で楽しそうにお出かけするシーンだけなんて、出産や育児がオシャレで楽しいことばかりのように見えてしまう。老婆心過ぎるのかもしれないけれど、子どもの命や人生に関わることを、まるでファッションのように扱うべきじゃないと思う。小春は親友としてずっと一緒に綾乃の育児を手伝っていくつもりなのだろうか。

　綾乃が10年（！）ぶりに地方の父方の実家を訪れる場面があって、大らかで温かく優しい祖母と理解ありそうな父親がいて、いざとなれば、頼りになってもらえそうなので、少しは安心できる。また、小春が旅行に行く沖縄で、息子を育てながら民宿と食堂を経営する女性の生き方には共感できるし、隣人は他人ではないというその地域の温かい助け合いの精神にさり気なく触れられていて、東京との対比になっている。