非常宣言

※このユーザーレビューは作品の内容に関する記述が含まれています。

レビューを表示する

（2022年制作・韓国）ハン・ジェリム監督
『新感染』の飛行機バージョンかと思ったが大部違っていた。
バイオテロにあった旅客機が、着陸許可を求めても、サンフランシスコ、成田、インチョン空港と拒否される話である。
ハラハラする緊迫感が続き、面白く観られたのではあるが、YOU　TUBEの画面に文字が覆って流れてゆくように、
私の頭の中では「エゴイズムエゴイズムエゴイズム・・」と単語が流れては引っかかっていた。
ゾンビなら、気持ち悪いわーで済むが、明日は我が身かという現実感にあふれている。

元祖イケメンのイム・シワンが、自分の体を切りつけて、細菌カプセルを埋め込み、飛行機内のトイレで取り出し、拡散するというサイコ的な演技。
メイクも変装もせず、顔や目の使い方だけでサイコを演じるという難役をこなした。（素晴らしい）

飛行機が離陸する前から、もうこの人が犯人だとわかるという事は、物語的にどうよと思わないでもない。
しかしこの人も、すぐさま死んでしまうのである。犯人探しの要素を省いて、あくまで飛行機内のパニックや恐怖感を描きたかったのだろうか。

機内には、乗客として（のちに操縦士として）イ・ビョンホン、副操縦士にキム・ナムギルがいる。（イケメン大会である）。
地上には、ベテラン刑事のソン・ガンホ。（韓国のレジェント大会か）

さて、最初のウイルス感染者はトイレに入ったオヤジで、ものの数分後に目から血が噴き出し口からは内臓みたいなのを吐き出し憤死！
げぇぇ！ パニック劇場幕開けだ〜っ・・
きれいなアテンダントのお姉さんが、体をガクガク痙攣させ口から泡を吹いて変死・・
さあ、韓国映画だ、どんどんゆくぞ！と思ったら、なぜかその後は水疱瘡みたいな湿疹が出るだけでややトーンダウン。
しかし、乗客の死ぬ死ぬ恐怖が凄まじく、自分だけ助かりたい圧の強いオッサンが勝手に
いろいろ采配するのが見苦しい。そうこうしているうちに操縦士が感染して死に、飛行機は乱高下するが、
このシーンがひとつの見所だろう。天井にバンバン人が打ち付けられ、人間乾燥機みたいにゴロンゴロン回転する人々・・こえぇ〜。

KI501便は副操縦士が操縦し、サンフランシスコに着陸しようとする。国土交通大臣のスッキ（チョン・ドヨン）が対応に乗り出し要請するが、
未知のウイルスへの脅威からアメリカはこれを拒否。
ならばと了解もとらぬまま成田空港へ進路をとるK1501機。当然、日本は責任をとれないからと却下。
それでも突き進む機に航空自衛隊が威嚇射撃を始める。
（私はここが一番ドキドキしました。拒否したらなんのかのと言うんじゃないか、受け入れたら受け入れたで日本のせいにするんじゃないかとか）
そして燃料が足りないから成田に寄ろうとしたくせに、なんとか韓国にゆく燃料はあったようです。だけども今度は、韓国の世論が真っ二つに割れて行き場がなくなってしまうのでありました。
ここで明るい材料を自分の体で証明するのがソン・ガンホだが、ちょっと無理がある展開だと思いました。（何にせよ急いだ実験は信憑性がない）
バイオテロの恐ろしさを十分感じさせた作品。最初から最後まで緊張感が途切れない映画だった。

141分？長すぎない？タイトルも割りと地味目だしなぁ
とか思いながらも
ビョン様目当てに見にいきました。

想像していたよりずっとずっと面白かったです。
スピード感、緊迫感、その場にいるかのような臨場感と音の使い方、
そして手に汗握るスリリングな展開には
エンタメ映画として申し分なく楽しめました。

いろいろてんこ盛りなのに、うまいこと整理されていて
極上のパニック映画に仕上がっています。
全くダレることなくスピーディーに進む展開には
最初から最後まで楽しめて
心配ご無用、141分はあっという間に過ぎます。

イ・ビョンホンとソン・ガンホの2大スターの共演も見応えありです。
そしてイム・シワンくんの怪しいサイコな犯人役は
怪演過ぎて実に上手でした。

成田空港が飛行機を受け入れない、とは残念な気がしましたが
あの状況では、どこも受け入れたくない、受け入れるわけにはいかない
というのが実情でしょう。
その中で、ソン・ガンホの命を懸けた決断には
もうドキドキしかありませんでした。

とてもオススメです。

監督・脚本：ハン・ジェリム（2022年・韓国・141分）
原題：EMERGENCY DECLARATION

韓国仁川（インチャン）国際空港。
空港カウンターで若い男が、受付の女性に横柄な口調で質問をして困らせている。行先も決めていないようで、「一番、混んでいる便はどれか」「これには、何人の客が搭乗するのか」と聞いている。
「そういう情報は、お伝え出来ないのです。」と、にこやかに対応する彼女に、男は「その笑い方をやめろ！」と捨て台詞を残し、その後、トイレで自分の脇の下をナイフでえぐり何かを埋め込んだ。
この男の名はリュ・ジンソク（イム・シワン）といい、これから彼が搭乗するハワイ行きKI501便の乗客たちを恐怖に陥れることになる。

KI501便が離陸して間もなく、一人の男性乗客が体調不良を訴えた。彼は咳をし腕には水泡が出来ていたが、やがて死亡してしまう。
他にも咳をする乗客が現れ、感染が広がっていく速度が速い。
しかし、このKI501便の恐怖は、バイオテロだけに留まらなかった。あろうことか、パイロットまでが感染して死亡してしまうのだ。この時、副操縦士は客室のパニックの対応のために操縦席を離れており、飛行機は操縦者を失っていた。
飛行機は急降下。シートベルト着用のサインが消えていた客室内は、乗客が天井に叩きつけられたり、荷物が落ちてきたり。この瞬間、乗客たちは感染よりも墜落の恐怖に慄いていた。
さて、冒頭から登場していたのに、飛行機が怖いと震えていたパク・ジェヒョク（イ・ビョンホン）がやっとその役割を果たす時が来た。慌てて操縦室に戻った副操縦士に協力し墜落の危機を免れたのだ。
彼は、訳ありの過去を持つ元・パイロットだった。
序でにク・イノ刑事（ソン・ガンホ）の説明をしておくと、この飛行機に妻が乗っているため、私情を交えた無茶な行動を終盤で取ることになる。

「一難去ってまた一難」どころか「一難起きて、さらに一難、もう一難」という展開で、韓流らしさ満載のパニック映画になっていた。
と言うのは、テロの犯人であるリュ・ジンソクは、その動機も目的も明らかにしないまま、自身も感染して死亡。
地上では、ジンソクが勤務していたブリコム社からワクチンを手に入れ、着陸後ただちにワクチンを打つ段取りだった。しかし、どこの空港も着陸を拒否。燃料不足のため、成田空港に緊急着陸の許可を求めるも拒否されてしまう。おまけに空自がやって来て、威嚇攻撃を始めるのだ。
韓国に引き返す決断をするも、韓国の人々が空港に集まり、着陸反対派、賛成派が入り混じって滑走路を塞ぐのだった。

危機に直面した時のパニックだけではなく、助かりたいという乗客らの気持ちや、機内での人々の葛藤もあった。それらの思いは当然だけれど、他者を排除してでも“自分だけは…”というエゴも描かれ、自分があの場にいたなら、あの乗客たちと同じように決断できただろうかと考えた。
一方では、疑問も感じた。飛行機が危機に直面して非常宣言をしたにも関わらず、国からも国民からも拒否されて行き場を失う。着陸できなければ飛行機はどうなるのか？やがて燃料も尽きてしまえば墜落するしかないのに、一体どうすればよいのか？どこに落ちればよいというのか？
ふと、2019年の新型コロナウィルス発生時のことを思い出してしまった。クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号の乗客に感染者が出て、横浜港で足止めされて下船の許可は下りなかった。
映画の中でも現実でも人間のエゴは変わらず、ましてやヒーローなどそうそう現れたりはしない。
話を元に戻して…
本作のラストでは、乗客たちはちゃんと助かるのでご安心を。
バイオテロの恐怖や、あわや墜落の危機、人々がパニックに陥っていく状況のリアルさが見どころだと思う。また、ある一人の男性乗客が「エゴの権化」と化して暴言を吐く姿は反面教師としたい。中でも私が一番恐怖を感じたのは、テロの犯人の気味の悪さとサイコな言動だった。絶対に遭遇したくない人物だった。

航空機内に未知のウイルスが持ち込まれ、乗員乗客が感染してしまう。
一刻も早い治療が必要だが、ウイルスへの懸念が半端ないため着陸を拒否され…というお話。
えぇぇぇぇっ？となる展開がないこともないが、なんだかんだで視聴時間141分を興味深く観られた。

ウイルスを持ち込んだのは、博士号を持つ乗客リュ・ジンソク（イム・シワン）である。
優しげな顔立ちだが、その精神はかなり壊れていた。
空港のトイレで、彼は自らの腋下を切り裂き、ウイルスが入った容器をねじ込む。どうかしてるわー…
何食わぬ顔で保安検査をやり過ごした彼は、ウイルスの機内持ち込みに成功してしまう。
さらにジンソクったら、今度は機内のトイレで容器を取り出すの…
トイレはウイルスを出し入れする場所ではないのよ！
それもこれも「乗員乗客に死んで欲しい」という一念なのだから恐れ入る。

制作費が潤沢なのだろうか、機内の様子がリアルで良い感じ。
感染した客室乗務員が、機長の食事を準備するシーンが禍々しく撮れていた。怖い！
ジンソクについて捜査する警察官、緊急着陸に尽力する政治家や官僚など、地上のシーンが程よく挿入されるので閉塞感を感じない。好き…
乗員乗客、地上で尽力する人々の人間模様も程よく描かれていた。

時々、えぇぇぇっ？な展開がある。
航空機に妻が乗っているという事情も関係しているのだろうが、捜査に当たる警察官（ソン・ガンホ）の行動に衝撃。
ウイルスを恐れる地上の人々の行動には引いた…
日本政府、特に自衛隊の行動にも驚いた。
ゴジラなど怪獣関係以外で、あのような行動をとれるとは思えないのだが…

　飛行機内でのバイオテロ。
　飛行機墜落危機。
　空港受け入れ拒否。

　地上での捜査と空でのパニック
　さらには航空自衛隊による威嚇射撃での着陸拒否。


　なかなか内容盛りだくさん。


　内容も犯人捜しは完全に排除してパニックに集中させたのもいい。

　感動の終盤は必見。
　見事なエンディング。

　最高のフライトです。