以前はDISCASにも無かった、かせきさいだぁ≡（≡は、３じゃなくて、ピューって走ってる記号）ワタシ的にはＪラップは、スチャダラとかせきさいだぁ≡で、打ち止めになってしまった。リリック、いや歌詞を恥ずかしくなく聴いていられるのが、おおむねここらへんまでだったもので。
もちろん今やＪラップも、かなりの工夫・進化を遂げて、相当巧みになっているのだろう。そのへんはまるで無知なので、的外れ・時代遅れはご容赦。

佐野元春の『VISITORS』（84）を聴いた時、たとえいつか日本語ラップが定着する日が来ても、手法はこういうやり方で（韻を踏む部分を英語で）ヤルしかないんだろうと思った。それが今や、日本語でのライム（韻踏み）は当然になってるのだから、隔世の感がある。日本の文法は、英語と違って末尾の変化が少ないので（末尾が“です”とか、“だ”とか、“する”なので）末尾での韻踏みには、無理が生じる。なんだかダジャレっぽくなってしまうのだ。

だが、かせきさいだぁ≡ こと加藤丈文は、そんな細かいことは気にしなかった。ラップなら歌いたいこと、言いたいことが自由きままに歌える。ライムは気にせず、フロウ勝負に彼は出た。結果は…商業的に成功したとは言えずとも、私みたいな者の耳だけにしっかり残った。

昭和風俗から好き放題に素材を拾い集めてきては、楽しげに唄うかせきさいだぁ≡。点と線、750ライダー、はっぴぃえんど、海と毒薬、梶井基次郎、松本隆、ほいほい、なんでもござれ。ごった煮。「文化系ラッパー」の面目躍如だ。「夜ともなれば二人は　誘蛾灯に誘い寄せられる虫達の如く　祭りに向かう人並みの中　ウスバカゲロウさキミは」「キミの笑い顔からこぼれた歯は　よく見ると糸引く唾液に　エロチックなんて言葉思い出す　こんな夜です」こんなリリック、今のラッパーには口ずさめまい。

1stの『かせきさいだぁ』は名盤なのだが、残念ながらDISCASにあるのは、この2nd。しかもカメ。このレビューも、日の目を見ることは無いと、確信して書いた。

曲目が無いので、一応。

1. INTRO
2. SKYnuts　　
3. 悲しみの観察日記　　
4. 宇宙の法則　　
5. 風化の頃
6. トロピカルサイダー20000マイル　　
7. CIDER MOON
8. ポップアート　
9. ウインド・ブレイカー
10. 急げハリー!!
11. OUTRO