オーストリアのフリージャズ・トランぺッター、
フランツ・コグルマンが
スティーブ・レイシーを迎えて制作した
「フラップス」を最近聴きましたが、
ポスト・フリー的演奏に
素っ頓狂な電子音が絡む面白い作品でした。
白痴的ですらある異物としての音が
シリアスな集団即興の場を相対化し洗い流していくさまは、
同じ電子音でも硬派なTMICより、
奇才Michel Waisviszが参加した
レイシーやICPテンテットらの作品を想起させるものでした。
もちろん、際物的な魅力だけじゃなく、
ヨーロッパ時代のレイシーの
インプロヴァイザーとしての凄味も特筆ものです。

そんなこともあり、同じくレイシー絡みの本作。
レイシーと高橋悠治さんの共演といえば、
小杉武久さんを加えた名盤
「ディスタント・ヴォイセス」がありますが、
本作は小杉さんに替わって富樫雅彦さんというメンツ。
もともと水牛レーベルから出ていただけあって、
ソロ、デュオ、トリオと
全曲に参加しているのは高橋さんだけです。

トリオにあって、レイシーの音は
若い頃のキリキリとした鋭い演奏に比べると
さすがに円やかになってはいます。
しかし、やはり線的なジャズとは異なる
高橋さんの点描的・現音的なピアノと、
空間性を生かしながらも、時に
激しく高揚する富樫さんのドラムスを見事に架橋し、
融合させているさまが素晴らしいと思いました。
現代音楽とジャズの中間に立ち触媒になれるというのは、
百戦錬磨のレイシーならではの才ですね。